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DDR5 SDRAMメモリの進化の全て:高速化・低電圧化・信頼性向上を解説

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本記事では、最新のDDR5 SDRAMメモリがどのように進化し、DDR4 SDRAMメモリと比較してどのような改良が加えられたかを詳しく解説します。とくに、メモリの高速化、低電圧化、信頼性向上について詳しく見ていきます。

メモリの種類と特徴

メモリはRAM(Random Access Memory)とも呼ばれ、コンピュータが一時的にデータを保管するための重要なパーツです。コンピュータに搭載されるメモリは、大きく以下の3種類に分類されます。

  1. Unbuffered DIMM (UDIMM)

    一般的なデスクトップPCで使用されるメモリです。

  2. ECC Unbuffered DIMM (ECC UDIMM)

    低価格帯のサーバーやワークステーションでよく利用されるメモリです。

  3. ECC Registered DIMM (RDIMM)

    中~高価格帯のサーバーやワークステーションで使用されるメモリです。

これらのうち、ECC UnbufferedやECC Registeredメモリを使用するには、対応するCPUやチップセットが必要です。

メモリの重要な機能

  • レジスタバッファ

    レジスタバッファが備えられているメモリは、メモリクロックがレジスタバッファに格納され、タイミングが同期されます。これにより、メモリクロックと信号のタイミングが一致し、安定したアクセスが可能になります。

  • ECC(エラー訂正機能)

    ECC機能が備えられているメモリは、データに誤りが発生した場合でも自動的に訂正が可能です。これにより、メモリの信頼性が大幅に向上します。

レジスタバッファとECCは独立した機能ですが、レジスタバッファのみが搭載されたメモリはほとんど存在せず、レジスタバッファが搭載されているメモリはほぼ必ずECCも搭載しています。

memory

DDR5 SDRAMの進化と主な特徴

DDR(Double Data Rate)SDRAMは、コンピュータのメモリ規格で、それまで主流であったSDRAMの次世代型のSDRAMとして2000年に発表された規格です。

現在、DDR2 SDRAMからDDR5 SDRAMまでが導入されており、DDR5 SDRAMは2021年頃から普及し始めた比較的新しいメモリ規格です。

DDR5 SDRAMは前世代のDDR4 SDRAMと比較していくつかの重要な改良点があります。以下にその主なポイントをまとめました。

  • メモリークロックの向上と転送速度の向上

    DDR5 SDRAMはメモリークロックが引き上げられ、これによりデータ転送速度が大幅に向上しました。

  • 帯域幅の拡張

    帯域幅が拡張され、データの転送効率が飛躍的に向上しています。

  • Intel XMP 3.0とAMD EXPOへの対応

    DDR5は、IntelのXMP 3.0およびAMDのEXPOに対応しており、オーバークロック設定がより柔軟かつ簡単に行えます。

  • プロファイルの格納数

    メーカー提供のプロファイルを含めて、最大3つまでのプロファイルが格納可能です。

  • 低電圧での動作

    DDR5 SDRAMの動作電圧は1.1Vからスタートし、DDR4 SDRAMの1.2Vと比較して低く抑えられています。

  • 電力供給の変更

    DDR4 SDRAMまでは、電源から供給される5Vをマザーボードで1.2Vに降圧し、メモリーに供給していました。しかし、DDR5 SDRAMでは、電源から直接メモリーに5Vが供給され、PMIC(電源管理IC)を介して必要な1.1Vに降圧する方式に変更されています。この新しい仕組みにより、各メモリーモジュールに最適な電圧が直接供給されるようになりました。

  • On-Die ECCの実装

    DDR5 SDRAMは、デバイス内部でエラー訂正を行うOn-Die ECCを搭載しています。これにより、メモリの信頼性が向上し、データの整合性が確保されます。このOn-Die ECCは、従来のECCメモリとは異なる技術です。

  • ECS(Error Check and Scrub)

    ECSは、内部データを定期的に読み取り、エラーを検出した際に自動的に訂正して正しい値で書き戻す機能です。これにより、データの整合性がさらに強化されています。

  • その他の信頼性向上機能

    RFM(リフレッシュ・マネージメント)やLoop Back Modeなどの機能が追加され、総合的なデータ保護が強化されています。

DDR5 SDRAM vs DDR4 SDRAM:進化したDDR5 SDRAM

DDR5 SDRAMの進化により、以下の3点でDDR4 SDRAMよりも優れています。

  • メモリークロックと帯域幅 DDR5 SDRAMのクロック速度と帯域幅はDDR4 SDRAMよりも大幅に向上しています。
  • 電圧の低下 DDR5 SDRAMは低電圧で動作し、省電力化が進んでいます。
  • 信頼性機能 DDR5 SDRAMにはOn-Die ECCやECSなどの新しい信頼性向上機能が搭載されています。

DDR5 SDRAMは、クロック速度と転送速度の向上、低電圧での動作、新しい信頼性向上機能など、多くの面でDDR4 SDRAMに比べて大幅に進化しています。これにより、DDR5 SDRAMはより高速で信頼性の高いメモリとなり、コンピュータの性能を向上させます。

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