ここ数年、AI(人工知能)がブームになっています。グーグルが開発した「AlphaGo」が韓国のトッププロ棋士に勝利した「ニュース」を衝撃的に受け止めた方も多いと思います。AlphaGoは碁の対局に、「ディープラーニング(深層学習)」を用いたことで有名です。碁のように身近な応用例があるとはいえ、ご自身のビジネスとはまだ遠い世界だと感じている方も多いのではないでしょうか?しかし、既に多くのビジネス現場で、ディープラーニングを応用した技術が使われ始めています。
第3次AIブームを支える技術/手法のひとつ 「ディープラーニング」とは?
現在のAIブームは第3次になります。過去のAIブームとの大きな違いは、ディープラーニングという、コンピューター上に人の神経回路を似せてつくったアルゴリズム(技法・手法)を実現したことにあります。このことにより、コンピューターが「特徴量」という特徴を数値化した値を、自力で検出できるようになりました。
たとえば、猫と犬を見分けることは人にとっては簡単なことですが、コンピューターには簡単なことではありませんでした。コンピューターに猫や犬を認識させるためには、人が猫や犬の特徴量を考えて、ひとつひとつ入力して教えるという大変な作業を必要としていたのです。ところがディープラーニングによってコンピューターが自ら学習して特徴量を検出できるようになり、猫と犬を容易に見分けられるようになりました(図1)。
つまり、AI搭載のコンピューターに、ある程度のデータと学習時間を与えることで、瞬時に認識や判別をさせることができるようになったのです。
勘と経験で行ってきた職人技
人間の試行錯誤をAIが代替
ディープラーニングによる学習を経たAIは、既に様々な分野で応用されはじめています。
画像認識の例では、工場での品質検査が挙げられます。品質検査でよく使われているラインセンサーカメラは解像度が高く、製造物に異物・キズ・欠陥などがないかを容易に検出することができます。しかし、どこからが欠陥品かという閾値(しきいち)は試行錯誤しながら人の手で設定する必要がありました。このような閾値設定に関してもディープラーニングによって、AIに判断させることが可能になってきています。
また創薬の分野では、多くの化合物を多様な方法でスクリーニングする必要があったため、1つの薬品の開発に15年以上かかるのが普通でした。これもディープラーニングを経たAIを活用することで開発期間を短縮することが可能になってきています。
これらの事例は、今まで人間が勘と経験で行ってきた試行錯誤を、AIが学習して数値化したことにより短時間に行えるようになったものと言えます。
「AI開発に必要な学習環境」と「量産品に必要な学習済みAI」
AIの応用例として現在最も注目を集めているのが、自動車の自動運転の分野です。コンピューターに学習させるためには、CPU、GPU(Graphics Processing Unit)、膨大なデータベース、および開発環境やフレームワーク(実行環境)が必要になります。これらの環境はサーバー1台程度の装置に収まる場合もありますが、いくつものサーバーを接続させてクラスタリングさせる場合もあります。このような巨大な環境を自動車に搭載することはできません。
しかし一度学習済みのAIにまとめられれば、このような巨大な環境は必要ありません。極端にいえばICとしてチップ化することが可能になります。自動車に搭載するのは、チップ化されたAIを搭載したコンピューターだけで済みます。
これは人間にたとえると分かりやすいかもしれません。人間が自動車免許を取得する場合には、教習所に通い、教則本やビデオで交通ルールや安全運転の概念を学び、実際に自動車に乗って教官から運転そのものを学びます。つまり教習所・教則本・ビデオ・教官という「環境」が必要となります。これが学習環境に相当します。
しかし一度運転免許を取得してしまえば、必要なのは自分という人間と免許証だけになります。これが学習済みAIに相当します。
はじめての製品選びからハンズオン、構築まで
IoT(Internet of Things)の進展に伴い、製造業では、何らかの処理に特化した学習済みAIの開発が大きな収益源になっていくと予想されます。
そこで当社では、今後AIを活用してビジネス展開を考えている企業様に対して、ディープラーニング用途向けたハードウェアのご提供からOS、コンパイラ、ライブラリまでの環境構築、動作検証まで、ワンストップでのサービスを行っております。
サービスの一例として、当社があるメーカー様向けに開催したハンズオン(体験学習型)セミナーをご紹介します。
このセミナーでは、ディープラーニング用途向けワークステーションのエントリモデルであるHPC2000-SL104TC-DLに、Caffe(*)の操作手順をレクチャーしながら、画像分類用アプリケーションの開発を行いました。
学習用のデータ作成・学習状況のモニタリング・学習効果の検証などにはDIGITS(**)を、操作方法のレクチャーを兼ねながら利用しました。
結果として、実行環境はエントリモデルであったにも関わらず、従来のPCサーバーでは8時間かかっていた学習時間が40秒にまで短縮されました。
当社ではCaffeだけでなく、Torch7、tensorflow、chainer、mxnetなど主要なディープラーニングフレームワークの環境構築、機能検証、性能比較を継続して実施しております。また前述のエントリモデルからNVIDIA DGX-1のようなスーパーコンピュータクラスの機器まで幅広いラインナップの製品を扱っており、貴社のニーズに合わせた最適なサイジングも行えます。
R&D向けの学習環境の構築から学習済みAIを搭載したコンピューターの量産まで、ぜひHPCシステムズにご相談ください。
*:C++で記述された代表的なディープラーニング用開発フレームワーク
**:NVIDIAが開発した、ディープラーニングGPUトレーニング・システム
当社は、ディープラーニング向けモデルをラインアップしておりますので、ぜひ、ご覧ください。
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