理化学研究所と進めさせていただいている「富岳」のクラウド的利用共同研究プロジェクトの中で、弊社でセットアップ実績のあるアプリケーションの「富岳」でのビルドに取り組んできました。
性能も電力対性能も世界一の「富岳」を使ってみたい、でもA64FX(aarch64)でいつも使っているアプリケーションが問題無く動くのかわからない、という不安もおありなのではと思いますので、生の事実を共有いたします。
量子化学 – Gaussian16
弊社では2020年7月からGaussian社と一緒に報告・検証を進めてきました。紆余曲折ありましたが、今年2月中旬に入手したGaussian社公式バイナリを用いて、「富岳」で正常に動作することを確認できています(Lindaは使えません)。
反応経路探索 – GRRM
こちらのIRニュースに発表されています通り、弊社では、北海道大学大学院理学研究院化学部門理論化学研究室と、GRRM・AFIRのA64FXへの実装、および「富岳」での大規模な化学反応経路自動探索に関して共同研究をさせて頂いています。GRRMと、量子化学計算エンジンとして上記Gaussian16を用いて、「富岳」上で反応経路自動探索を問題無く実施できており、安定して効率良く探索計算を行えるようにさらなる最適化を進めています。
分子動力学 – Amber20 + AmberTools20
Miniconda部分以外は(-DDOWNLOAD_MINICONDA=FALSE -DBUILD_PYTHON=FALSEを付与)ビルドでき、数値テストもpassして正常動作しています。Amber20に組み込まれるMiniconda部分は、Armの32ビットの回路がA64FXに存在しないため、動かせません。
分子動力学 – GROMACS 2021
数値テスト(regressiontests)をpassし、正常動作しています。今年3月にFFTWのGitHubのソースに入った修正のおかげで、FFTWのSVE対応が単精度で正しい値を返すようになり、PME含め正常動作できるようになりました。
物性物理 – Quantum ESPRESSO 6.4.1
数値テストをpassし、正常動作しています。
「富岳」のメリットを皆様に
この他にも、FMO計算の ABINIT-MP など、いくつかの科学技術計算アプリケーションの「富岳」での検証を弊社で進めています。
「富岳」は手元の計算機で実行しづらい大規模の計算ジョブを実施出来る魅力に加え、電力対性能もピカイチなので地球に優しいHPCを実施できる素晴らしさがあります。弊社も共同研究の中で実験的にサイエンスクラウドの資源として「富岳」を皆様に利用可能とすることで、一人でも多くの方にこれらのメリットを享受いただけるようにしてまいります。