CISキーワードを指定すると,一電子励起CI(CI-Singles)[108].を用いて励起状態を計算します。Exploring Chemistry with Electronic Structure Methods[308] 《訳注:日本語版『電子構造論による化学の探究』》の9章にこの方法の詳細と使用法があります。
CIS(D)キーワードを指定すると,CIS(D)法[426,427]を用いて計算を行います。またCISジョブの後にCIS(D)ジョブを続けることで,さらに状態を増やして励起エネルギーを計算することもできます(例を参照)。
CI-SinglesジョブにはDensityキーワードも関係します。オプションなしでこのキーワードを指定した場合,デフォルトのHartree-Fock電子密度を用いるのではなく,現行の方法(CIS)での電子密度を用いて電子密度解析を行います。
一重項励起状態のみを求めます。このオプションが有効なのは閉殻系の計算のみであり,デフォルトでもあります。
三重項励起状態のみを求めます。このオプションは閉殻系の計算でのみ有効です。
半分三重項,半分一重項状態を求めます。このオプションは閉殻系の計算でのみ有効です。
「検討する状態(state of interest)」を指定します。その状態に対する電子密度で計算されます。デフォルトは1番目の励起状態(N=1)です。
解をM状態求めます(デフォルトは3です)。50-50が指定された場合,NStatesは求める各状態の数にします(つまり,デフォルトでは3個の一重項状態と3個の三重項状態を求めます)。
チェックポイントファイルから収束した状態を読みこみ,さらにN 状態を追加して解を求めます。このオプションはReadも指定したことになります。NStatesはこのオプションと同時に指定することはできません。
各状態間の遷移密度を計算します。
全ての内殻固定オプションがCISやCIS(D)で利用できます。
CI-Singles方程式の解を,AO積分を用いて求めます。ただし,用いるAO積分は必要に応じて再計算されます。CIS=Directは,デフォルトのアルゴリズム(MO)で必要な約4O2N2 ワードのディスク容量が確保できない場合か,あるいは比較的大きな計算(基底関数が200以上)の場合のみに用いるべきです。
CI-Singles方程式の解を,変換された2電子積分を用いて求めます。これはGaussian 03でのデフォルトアルゴリズムです。積分変換はMaxDiskキーワードの設定を継承するので,その設定により必要なディスク容量を抑えることが可能です。
CI-Singles方程式の解を,AO積分を用いて求めますが,積分変換は行いません。これは,小さな分子で非常に限られたディスクとメモリしかない場合を除いては,最適な選択肢ではありません。
収束判定条件をエネルギーに対しては 10-N,波動関数に対しては10-(N+2)とします。デフォルトは,シングルポイント(一点)計算ではN=4,グラジェント(勾配)計算ではN=6です。
CI-Singles 状態に対する初期推測をチェックポイントファイルから読み込みます。ただし,SCFの場合とは異なり,ある基底関数系での初期推測軌道は異なる基底系には使えないことに注意してください。
チェックポイントファイルからCI-Singles反復を再スタートします。 SCF=Restartも指定したことになります。
read-writeファイルからCI-Singles反復を再スタートします。非標準ルートを用いて,続けてCI-Singles計算を行う場合に便利です。
平衡または非平衡PCM溶媒和を取り扱います。NonEqSolvがデフォルトです。
推測にカノニカル1電子励起を用います。IVOGuessにすると,改良された仮想軌道を用います(デフォルトです)。
変換された積分をメモリ上に形成して,CI-Singles行列のin-core完全対角化を行います。これは主にデバッグ用のオプションです。
Davidsonの方法で対角化する部分行列を次元N.に制限します。これは主にデバッグ用のオプションです。
CISに対してはエネルギー,解析的グラジェント(勾配),解析的振動数。CIS(D)に対してはエネルギー。
CIS出力 CI-Singlesのインプットには特に特殊な点や落とし穴はないでしょう。シングルポイント(一点)CI-Singles計算のアウトプットは,基底状態CIまたはQCI計算のものとよく似ています。SCFの後に,積分変換を行い,基底状態MP2エネルギーを評価します。CI問題の反復方程式に関する情報はその次にきます。最初の反復では初期推測を余分に行い,必要な数の励起状態が対称性によらずに見つけられるかを確認します。以降の反復では,新しいベクトルが1つ各反復における各状態の解に追加されます。
反復ごとに各状態での励起エネルギーと波動関数の変化は出力されます(ただし#P 出力にした場合)。
Iteration 3 Dimension 27
Root 1 not converged, maximum delta is 0.002428737687607
Root 2 not converged, maximum delta is 0.013107675296678
Root 3 not converged, maximum delta is 0.030654755631835
Excitation Energies [eV] at current iteration:
Root 1 : 3.700631883679401 Change is -0.001084398684008
Root 2 : 7.841115226789293 Change is -0.011232152003400
Root 3 : 8.769540624626156 Change is -0.047396173133051
反復処理は2つの方法でうまく終了させます。無視できるほど小さな期待値ベクトルだけを生成するか,更新された波動関数での変化を無視します。
CIが収束した場合,次のような見出しの後にその結果が表示されます。
*****************************************************************
Excited States From <AA,BB:AA,BB> singles matrix:
*****************************************************************
その後基底状態と各励起状態間の遷移双極子モーメントが表形式で出力されます。その次に各状態の結果が,スピンおよび空間対称性,励起エネルギー,振動子強度,そしてCI展開での最大係数(他の係数も必要な場合にはIOp(9/40=N)を用いてください。これにより 10-N以上のものが全て出力されます)が出力されます。
Excitation energies and oscillator strengths:
対称性 励起エネルギー 振動子強度
Excited State 1: Singlet-A" 3.7006 eV 335.03 nm f=0.0008
8 -> 9 0.69112 各励起に対するCI展開係数
軌道8から軌道9への励起
This state for opt. and/or second-order corr. この状態が「検討する状態(state of interest)」
Total Energy, E(Cis) = -113.696894498 CISエネルギーが便宜上ここでも表示されます
規格化 閉殻系での計算では,展開係数の2乗の和は全部で1/2に規格化されています(ベータ係数を考慮しないため)。開殻系の計算では規格化の和は1です。
状態を追加して求める 次のようなルートにすると,CIS結果をチェックポイントファイルから読み込み,2番目の状態以上の6個の状態について解を求めます。
# CIS(D)=(Read,Root=2,NStates=6)
同じ手法は CIS(D) を用いて連続ジョブを行う場合にも可能です。
平日9:30~17:30 (土曜日、日曜日、祝祭日、年末年始、夏期休暇は、休日とさせていただきます。)