Amberは米カリフォルニア大学のP. A. Kollmanらのグループにより開発された、生体分子の分子動力学(MD)計算のための力場群であり、またこれらの力場をシミュレーションするためのMDプログラム群です。現在は、米ラトガース大学のD. A. Caseらによるグループにより維持・管理されています。プログラム群は、入力準備プログラム・シミュレーションプログラム・結果解析プログラムに大別されます。
https://ambermd.org/AmberPatches.php
Amber24 Updates (April, 2024)
update.1: Fix some cases where HREMD could hang with pmemd (parallel CPU version)
update.2: Adds compilation target pmemd.decomp which supports Thermodynamic Integration Atomic Decomposition
update.3: Fixes softcore potentials in pmemd.cuda when gti_add_sc=25
Amber22 Updates (April, 2022)
update.1: Fix two (rare) problems, with 12-6-4 potentials and duplicate TI
update.2: Fix to the default values of soft-core potential parameters scalpha and scbeta.
update.3: Fix the tishake2vite test outputs, so that the test cases now pass.
update.4: Fix a memory leak, speed up NMR calculations in pmemd.cuda.
update.5: Updates scaling in the xray module of pmemd.cuda.
溶媒理論3D-RISMとハミルトニアンレプリカ交換法が実装されたことで、計算の精密さが増し、かつより大規模な系での計算が可能となりました。また、構造立脚型の創薬に用いられています。細胞内の環境を再現し、結合自由エネルギーを定量的に求めることができます。GAUSSIANとの連携も可能です。
随時更新されている NVIDIA HPC Application Performance のページを参照ください。
NVIDIA_Life and Material Sciences Application Performance Guide
Amberは生体分子系のシミュレーションを行うための複数のプログラムからなるソフトウェアパッケージです。用途で大別して入力準備プログラム、シミュレーションプログラム、結果解析プログラムから構成されています。それぞれの用途でも複数のプログラムが用意されています。それぞれの概要は以下の通りです。
LEaP :
Amberのための新しい系を作ったり、既存の系を修正したりするための基本プログラムです。
LEaPは以前のバージョンのprep, link, edit, parmの機能を統合したものです。
ANTECHAMBER :
Antechamberファミリーソフトウェアパッケージのメインプログラムです。分子フォーマット変換、原子タイプ指定、電荷生成を自動的に行うため、標準的な核酸やタンパク質を多く含んだ系ならば、LEaPのインプットファイルを準備するのに役立ちます。
ANDER :
エネルギー最小化と分子動力学法を行うための基本となるプログラムです。
エネルギー最小化ではエネルギー勾配の平均値が十分低くなるまで、エネルギーが下がる向きに繰り返し原子を動かすことによって構造を緩和します。
分子動力学法ではNewton運動方程式を積分することによって系の配置を生成します。
分子動力学法はエネルギー最小化より多くの配置空間をサンプルします。小さなエネルギー障壁を構造が超えることを可能にします。
配置は後々の解析のために、シミュレーション中に一定間隔で保存されます。熱力学積分を行って基本的な自由エネルギー計算をします。
より精巧な配置空間探索とモデリングの分子動力学法研究もSANDERモジュールを使って実行することができます。
これはいろいろな束縛条件を基本的な力場に加えることを可能にします。特にNMR構造詳細化に関与するタイプの計算のために設計されました。
PMEMD :
並列化効率と速度に関して最適化を図ったバージョンのsanderです。
プログラムの名称は”Particle Mesh Ewald Molecular Dynamics”に基づいており、この種のシミュレーションに限定されています。
入出力ファイルはsanderのものからほんの少しだけしか変更がありません。
NMODE:
準Newton Raphsonによる二次微分を利用したエネルギー最小化と振動解析のプログラムです。
NMODEは、系の多数の熱化学特性とノーマルモードを計算することができます。
他の機能として「 Langevin モード」(連続溶媒への粘性結合を含めたノーマルモード)を計算することが可能であり、エネルギー最小構造と同様に遷移状態を見つけるテクニックを備えます。
PTRAJ :
MDシミュレーションによって(あるいは種々の他のソースから)生成された軌跡(trajectory)や座標を解析したり処理したりする汎用のユーティリティプログラムです。
・重ね合わせ
・座標の抽出
・結合長、結合角、二面角の計算
・原子の座標変位
・相関関数
・水素結合解析
等をの実行します。
同じ実行ファイルが名称をrdparmとして実行されるとき、prmtopファイルを検査したり修正したりすることが出来ます。
MM-PBSA :
連続溶媒モデルを利用した分子動力学シミュレーションからのスナップショットのエネルギー解析を自動化するスクリプトです。
新たにAmberを利用されようとするお客様にAmberプログラム利用の流れを説明します(概略の説明ですので個々のプログラムの利用に当たっては個別プログラムのドキュメントを参照してください)。
どういった手順からAmberのシミュレーションを始めるべきかを理解することが第一の問題です。
まず最初にどのシミュレーションプログラム(sander, pmemd, nmode)を利用するかを理解する必要があります。
利用するプログラムが定まりましたら、次に全てのシミュレーションプログラムで必要とする情報を用意します。
全てのシミュレーションプログラムで必要とする情報は以下の通りです。
X線結晶解析、NMR分光法、モデルビルデングによってProtein Databank (PDB)で作成します。
これらのモデリングタスクの多くに対して、プログラムLEaPは実行プラットホームを供給します。
場合によっては他のプログラムを考慮しなければならないこともあります。
これらの情報はamber8/dat/leap/prepディレクトリにあるデータベースから得ることが出来ます。
Amber8のマニュアルのChapter 2に詳細な記述があります。
そこには標準アミノ酸、N末端やC末端の荷電アミノ酸、DNA、RNA、通常の糖、等のトポロジーを含んでいます。
データベースはこれらの単量体ユニットのデフォルト内部座標を含んでいます、しかし通常、座標情報はPDBファイルから得られます。
(標準データベースで見いだされない)他の分子のためのトポロジー情報は、通常antechamberを使って利用者が作成し、利用者作成の「残基ファイル」に保存します。
いくつかの標準的な力場パラメータはamber8/dat/leap/parmディレクトリに納められています。やはりAmber8のマニュアルのChapter 2に詳細な記述があります。
これらのファイルはタンパク質や核酸についてそのまま利用することもありますし、利用者が標準の力場に対して修正を行ったものを用意して利用することもあります。
これらはmdinと名前を付けたsander, pmemd, nmodeの各プログラムの入力ファイルで指定します。
以上の情報は通常、LEaP、antechamberの入力ファイル作成プログラムを利用して準備します。
準備できましたらシミュレーションプログラム(sander, pmemd, nmode)を実行します。
実行が完了した結果、途中の経過等を解析プログラム(PTRAJ, MM-PBSA)で解析します。
これまでの流れは次の図のようにまとめられます。
Amber8マニュアルより引用
HPCシステムズは、Amberを研究の基礎として安心してご活用いただけるように、豊富な機能を盛り込んでコンパイルし、Amber規定の動作テストと速度検証を行って問題ないことを確認した上で、その報告書も同梱して納品しております。
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平日9:30~17:30 (土曜日、日曜日、祝祭日、年末年始、夏期休暇は、休日とさせていただきます。)