c8603ユーティリティは,Gaussian 86 〜Gaussian 98 のチェックポイントファイルをGaussian 03形式のものに変換します。このユーティリティはチェックポイントファイル名を引数にとり,同じ場所で変換します。つまり,変換されたファイルは元のファイルと同じ名前になります。例えば,以下のコマンドを入力すると,Gaussianスクラッチディレクトリにあるチェックポイントファイルtaxol.chk をGaussian 03 形式のものに変換します:
$ c8603 $GAUSS_SCRDIR/taxol.chk
chkchkユーティリティは,チェックポイントファイル中のルートおよびタイトルセクションを表示し,またチェックポイントファイル内に存在する各種情報も示してくれます。このユーティリティは,その使用目的を忘れてしまったり,ファイル名では内容が分からないようなチェックポイントファイルの内容を判断するのに便利です。これはチェックポイントファイルの名前を引数にとります。以下は使用例です:
$ chkchk important Checkpoint file important.chk: Title: Optimization and frequencies for pentaprismane Route: #T BECKE3LYP/6-31+G(D,P) OPT FREQ POP=FULL Atomic coordinates present. SCF restart data present. This file appears to be from the middle of a restartable job. Internal force constants may be present.
-pオプションを使うと,分子座標,Genフォーマットでの基底関数系, Guess=Cards用の形式での分子軌道といった追加出力もチェックポイントファイルから得ることが可能です。
Gaussianにはフォーマット型チェックポイントファイルのデータからcubeを生成する(Cubeキーワードに相当),スタンドアローン(単体で動作する)のユーティリティがあります。このユーティリティはcubegenという名前で,次のような構文をとります:
cubegen memory kind fchkfile cubefile npts format
パラメータは全てオプションです。 必要に応じてfchkfileの入力が求められます。デフォルトのコマンドは次の通りです:
cubegen 0 density=scf response-to-prompt test.cube 0 h
各パラメータは(大文字と小文字は区別しません)次のような意味を持ちます:
memory
確保する動的メモリ量(ワード単位)。この値を0にすると,マシンごとのデフォルト値を使います。
kind
生成するcubeのタイプを指定するキーワード:
MO=n: n番目の分子軌道。軌道番号の代わりに,Homo, Lumo, All, OccA (全アルファ占有軌道), OccB(全ベータ占有軌道), Valence (全価電子軌道), Virtuals (全仮想軌道) といったキーワードを指定することもできます。
Density=type: 指定したタイプの全電子密度
Spin=type: 指定したタイプのスピン密度(αとβ電子密度の差)
Alpha=type: 指定したタイプのアルファスピン密度
Beta=type: 指定したタイプのベータスピン密度
Potential=type: 指定したタイプの電子密度を用いた静電ポテンシャル
typeキーワードには使用する単一電子密度(Densityキーワードで有効なもの:SCF, MP2, CI, QCI等,ただしCurrentはサポートされていません)を1つだけ選んで指定します。
Gradient: 電子密度とグラジェントを計算します。
Laplacian: 電子密度のラプラシアン(∇2ρ)を計算します
NormGradient: 各点で電子密度グラジェントのノルムを計算します。
CurrentDensity=I: 磁場存在下(GIAO)での電子密度の大きさ,ここで I は適用する磁場の方向(X, Y, Z)です。
ShieldingDensity=IJN: 磁気遮蔽密度。I は適用する磁場の方向(X, Y, Z),J は誘導場の方向(X, Y, Z),N は遮蔽密度(GIAO)を計算する核の番号です。
fchkfile
フォーマット型チェックポイントファイルの名前。指定されなかった場合にはファイル名の入力を求められます。
cubefile
出力cubeファイル名。 指定されなかった場合はtest.cubeがデフォルトです(すわわち,チェックポイントファイル名を指定してユーティリティを実行しないと,デフォルトcubeファイル名を変えることができません)。
npts
cubeでのサイドごとの点の個数。 この値を0にすると,デフォルトになり,803個の点をプログラムによって自動的に生成された長方グリッド上に均等に分布させます(必ずしもcubeではありません)。nptsを正の値にすると,同様に「サイド」ごとの点の数になります。例えば,100と指定すると,1,000,000 (1003)点のグリッドになります。
この値を-2, -3 and -4にすると,キーワードCoarse, Medium,Fineに対応し,それぞれ3点/Bohr, 6点/Bohr,12点/Bohrの値になります。nptsを-5以下の負の値にすると,グリッド内の点間をnpts*10-3Åとします。
この値を -1にすると,インプットストリームからcube指定を読み込みます。そのフォーマットは次の通りです。
IFlag, X0, Y0, Z0 出力ユニット番号と初期ポイント
N1, X1, Y1, Z1
X方向の点の数とステップ幅
N2, X2, Y2, Z2
Y方向の点の数とステップ幅
N3, X3, Y3, Z3
Z方向の点の数とステップ幅
IFlag は出力ユニット番号です。IFlag を0未満にすると,フォーマット型ファイルが生成されます。そうでなければ非フォーマット型ファイルが生成されます。
N1<0にすれば,入力cubeの座標はボーア単位(原子単位)で,そうでなければオングストローム単位で指定したことになります。どちらでも,|N1| はX方向の点の個数として使われます。N2 とN3はそれぞれYおよびZ方向の点の数を指定です。この3つの軸は指定された値のまま用いられることに注意してください。つまり,これらが直交していなければ,生成されるグリッドは必ずしも長方になりません。
この値を -5 にすると,標準入力から任意の点リストを読み込みます。もしこのインプットを手動で入力する場合,最後にend-of-file(Unixでは ^D )を入力する必要があります。
format
フォーマット型出力ファイルの形式: hはヘッダを含めることを(デフォルト),n はヘッダを含めないことを意味します。このパラメータは非フォーマット型cubeファイルを生成する場合には無視されます。
cubmanプログラムはGaussianによって生成された電子密度や静電ポテンシャルの値の入ったcubeを操作します。このプログラムでは実行する操作をユーザーが指示し,その後必要なファイル名を指定します。実行可能な操作と,それに対応するサブコマンドは以下の通りです:
add 新しいcubeを生成するために2つのcubeを加えます
copy cubeをコピーします。可能なら,フォーマット形式から非フォーマット形式(またはその逆)に変換します。
diff 2つのcube間の差のプロパティを,新しいcubeを作成せずに計算します。
prop あるcubeのプロパティを計算します。
subtract 2つのcubeの差をとって新しいcubeを生成します。
scale cubeを定数倍して,新しいcubeを生成します。
サブコマンドは,短縮する(コマンド名を最短で表記する)こともできます。
以下は, cubmanの実行例(注釈つき)です。なお,ユーザーが入力している部分は太字(Bold)で,また出力は一部省略してあります。
$ cubman Action [Add, Copy, Difference, Properties, SUbtract, SCale]? p Input file? b.cube Is it formatted [no,yes,old]? y Opened special file b.cube. Input file titles: First excited state of propellane ジョブのタイトル行 CI Total Density cubeファイルの内容 SumAP= 13.39263 SumAN= .00000 SumA= 13.39263 cube内容の統計 CAMax= 3.35320 XYZ= .18898 -1.32280 .000004 CAMin= .00000 XYZ= -9999.00000 -9999.00000 -9999.00000 DipAE= -.8245357658 .7624198057 .1127178115 DipAN= -.0000060000 -.0000060000 .0000000000 DipA= -.8245417658 .7624138057 .1127178115 $ cubman Action [Add, Copy, Difference, Properties, SUbtract, SCale]? su First input? b.cube Is it formatted [no,yes,old]? y Opened special file b.cube. Second input? a.cube Is it formatted [no,yes,old]? y Opened special file a.cube. Output file? c.cube 新規cubeファイル名 Should it be formatted [no,yes,old]? y Opened special file c.cube. Input file titles: First excited state of propellane 1番目のcubeファイルのタイトル CI Total Density 1番目のcubeファイルの内容 Input file titles: Propellane HF/6-31G* 2番目のcubeファイルのタイトル SCF Total Density 2番目のcubeファイルの内容 Output file titles: 新しいファイルに使われる合成されたタイトル First excited state of propellane || Propellane HF/6-31G* CI Total Density - SCF Total Density 計算した差分 SumAP= 13.39263 SumAN= .00000 SumA= 13.39263 1番目のcubeの統計 CAMax= 3.35320 XYZ= .18898 -1.32280 .000004 CAMin= .00000 XYZ= -9999.00000 -9999.00000 -9999.00000 SumBP= 13.38168 SumBN= .00000 SumB= 13.38168 2番目のcubeの統計 CBMax= 3.39683 CBMin= .00000 SumOP= .63453 SumON=-.62358 SumO= .01094 出力cubeの統計 COMax= .49089 COMin=-.39885 DipAE= -.8245357658 .7624198057 .1127178115 DipAN= -.0000060000 -.0000060000 .0000000000 DipA= -.8245417658 .7624138057 .1127178115 DipBE= -.8306292172 .5490287046 .1243830393 DipBN= -.0000060000 -.0000060000 .0000000000 DipB= -.8306352172 .5490227046 .1243830393 DipOE= .0060934514 .2133911011 -.0116652278 DipON= -.0000060000 -.0000060000 .0000000000 DipO= .0060874514 .2133851011 -.0116652278
この出力では,入力cubeはAおよびB, 出力cubeはOで表されます。その他の文字では,Nは(内容により)「負の値(negative value)」または「核(nuclear)」を表し,Pは「正の値(positive value)」を,Eは「電気的(electronic)」,Cは「電荷(charge)」,Dip は「双極子(dipole)」,Sumは「合計(sum)」,Maxは「最大(maximun)」, Minは「最小(minimum)」を表します。したがって,SumANは1番目の入力cubeに対する合計を負の値に対して取ったことを示し,DipON は出力cubeに対する双極子モーメントの核寄与を示します。同様に,CBMaxは2番目のcubeに対する最大の電荷を,SumOは出力cubeでの値の合計(正,負の値両方)を示します。
formchkはGaussianチェックポイントファイルのデータを,各種可視化ソフト向けにフォーマット型データに変換します。
formchkは次のような構文を取ります:
formchk [-c] [-2] chkpt-file formatted-file
chkpt-fileは変換するバイナリチェックポイントファイル名,formatted-file は結果出力のファイル名です。例えば,次のようなコマンドを入力すると,チェックポイントファイル propell.chkから,フォーマット型チェックポイントファイルpropell.fchk を生成します:
$ formchk propell.chk propell.fchk
フォーマット型チェックポイントファイルの拡張子は慣習として,Unixシステムや拡張子の長さが制限のない計算機では.fchk,PCのような3文字拡張子しか使えないシステムでは.fckです。
また,フォーマット型チェックポイントファイルは異なる計算機システム間でデータを移行するのにも用いられます。移行元の計算機でformchkを用い,移行先の計算機でunfchkを用いてバイナリチェックポイントファイルに戻します。-2 オプションを指定すると,論理配列と分子力学パラメータデータも含めます。これらは異なるタイプの計算機間でファイルを移動する際には常に含まれていないとなりません。
formchk –c にすると,フォーマット型チェックポイントファイル中での分子力学原子タイプを整数でなく文字列で出力します。
freqchkユーティリティは,チェックポイントファイルから振動数と熱化学データを取り出すために用います。またその際,温度,圧力,スケール因子を変えたり,同位体に置き換えて検討することもできます。
freqchkでは必要な情報は全て入力を求められます。以下に,注釈つきでこのモードでの利用例を示します(ユーザーが入力している部分は太字(bold)にしてあります)。
$ freqchk Checkpoint file? solvent.chk Write Hyperchem files? n Temperature (K)? [0=>298.15] 0 デフォルトを用いる場合でも必ずゼロを入力します。リターンだけでは動作しません。 Pressure (Atm)? [0=>1 atm] 0 Scale factor for frequencies during thermochemistry? [0=>1/1.12] 0 Do you want the principal isotope masses? [Y]: デフォルトを用いる場合にはリターンだけでも可です。 各原子に対する同位体が表示されます Full mass-weighted force constant matrix: Low frequencies --- -948.3077 .0008 .0020 .0026 ... 通常のGaussian振動数表示が続きます... 1 2 ?A ?A Frequencies -- 1885.3939 3853.5773 Red. masses -- 1.0920 1.0366 Frc consts -- 2.2871 9.0697 IR Inten -- 17.3416 21.5997 Raman Activ -- 7.8442 67.0384 Depolar -- .7428 .2248 Atom AN X Y Z X Y Z 基準振動 1 8 .06 .00 .04 .04 .00 .02 2 1 -.70 .00 .03 .01 .00 -.71 ... ------------------- - Thermochemistry - ------------------- Temperature 298.150 Kelvin. Pressure 1.00000 Atm. Thermochemistry will use frequencies scaled by .8929. ... Zero-point vibrational energy 53494.5 (Joules/Mol) 12.78550 (Kcal/Mol) VIBRATIONAL TEMPERATURES: 2422.01 4950.36 5495.38 (KELVIN) ゼロ点・熱補正: Zero-point correction= .020375 (Hartree/Particle) Thermal corr to Energy= .023210 Thermal corr to Enthalpy= .024154 Thermal corr to Gibbs Free Energy= .045589 E=熱エネルギー;CV=定積熱容量;S=エントロピー E CV S KCAL/MOL CAL/MOL-KELVIN CAL/MOL-KELVIN TOTAL 14.564 6.001 45.114 ELECTRONIC .000 .000 .000 TRANSLATIONAL .889 2.981 34.609 ROTATIONAL .889 2.981 10.500 VIBRATIONAL 12.787 .039 .005 分配関数 Q LOG10(Q) LN(Q) TOTAL BOT .561443D-01 -1.250695 -2.880127 TOTAL V=0 .132155D+09 8.121085 18.699192 VIB (BOT) .424961D-09 -9.371650 -21.579023 VIB (V=0) .100030D+01 .000129 .000297 ELECTRONIC .100000D+01 .000000 .000000 TRANSLATIONAL .300436D+07 6.477751 14.915574 ROTATIONAL .439749D+02 1.643204 3.783618 $ freqchk solvent.chk チェックポイントファイル名をコマンドラインで指定 Write Hyperchem files? n Temperature (K)? [0=>298.15] 300 温度変更 Pressure (Atm)? [0=>1 atm] 1.5 圧力変更 Scale factor for freqs during thermochem? [0=>1/1.12] 1 スケールなし Do you want to use the principal isotope masses? [Y]: n For each atom, give the integer mass number. In each case, the default is the principal isotope. Atom number 1, atomic number 8: [16] デフォルトでよい場合はリターン Atom number 2, atomic number 1: [1] 2 同位体の質量を整数で指定 ...
上記の値が反映された振動数の出力が続きます。 スケーリングを指定した場合には,熱化学データにのみスケールは反映され,振動数自身はスケールされないことに注意してください。
また, 全てのfreqchkインプットをコマンドラインで指定することもできます。次の例は,上述の例のうち後者と同じ操作に対応するコマンドです:
$ freqchk solvent.chk N 300 1.5 1 N
最後のパラメータがNの場合,同位体の入力が求められます。
freqmemユーティリティでは振動数計算に関するパラメータを与えると,1回の処理で全ステップを計算してしまう最も効率的な方法で必要なメモリ量を見積もることができます。パラメータは全て,コマンドラインで次のように指定する必要があります:
freqmem natoms nbasis r|u c|d functions
ここでこれらの引数は:
natoms
分子内の原子数
nbasis
用いた基底関数系での系の基底関数の数
r|u
RHF(閉殻)かUHF(開殻)を指定する1文字コード
c|d
従来式かダイレクトアルゴリズムのどちらを用いて計算するのかを指定する1文字コード
functions
用いた基底関数系における基底関数のタイプを指定する文字列: sp, spd, spdfなど
例えば次の例では, タキソール(taxol; 113原子)のRHF/STO-3G振動数計算に必要なメモリ量を見積もります:
$ freqmem 113 361 r d sp RHF direct frequencies with sp functions: One pass requires 44.80 megawords.
この例では,1回の処理で振動数計算を行うのには約360MBのメモリが必要であることが出力されています。
freqmemで示されたメモリ量が確保できない場合,振動数計算は複数回の処理を用いて実行されます。%Mem Link 0 コマンドを用いて,利用可能なメモリ量を指定します。このパラメータをfreqmemで必要だと示されたメモリ量の半分か1/3にするのが,たいていの場合で良いでしょう。
Gaussianでの計算に用いられた基底関数の数は,出力ファイルの始めのほうに表示されます。調べたい場合にはインプットファイルで,%KJob=301 Link 0コマンドを入れておけば,プログラムはLink 301に達したら(計算を始めてすぐです)すぐに終了します。指定した基底関数系における計算する分子での基底関数の数は,ログファイルから次のようなコマンドを使えば取り出すことができます:
$ grep "basis func" name.log
361 basis functions 1083 primitive gaussians
gauoptユーティリティでは,Gaussianを繰り返して実行することにより最適化を行います。この方法では,入力ストリームの任意のパラメータ(一般的あるいはmassaged基底関数も含む)を最適化できます。Gaussianを実行するサブプロセスを繰り返して作成することで最適化処理をします。通常gauoptは,例えば基底関数のようなパラメータを最適化するのに,Gaussianには標準となる最適化手法が実装されていないといった場合に用いられます。このユーティリティを用いるには,コマンドgauoptを実行し,標準入力からgauopt用のインプットを与えます。
gauopt用のインプットはテンプレートファイルで構成され,そのテンプレートファイル中のあるフィールドを値を最適化したい変数に換えます。テンプレートファイルは,そのときの変数の値でエネルギーを評価するために,その変数に対応する実際のGaussianインプットファイルを作るためにも用いられます。そのときのエネルギーは,各ステップで自動的にGaussianシングルポイント(1点)計算を実行して計算されます,テンプレートファイルの1行目のフォーマットは次のようになります:
NVar, MaxIt, SaveFlag, Conv, ConvV
フォーマットは 2I3, L2, D9.2です。このフィールドでは次のような値を指定します:
NVar
変数の数
MaxIt
実行最適化サイクルの最大数
T|F
中間Gaussian出力ファイルを保存するのかどうかを指定する論理フラグ。この中間ファイルは fork.com,fork.log, fork.rwfといった名前がつけられます。これらのファイルはデフォルトで削除されますが,テンプレートインプットをデバッグするためにはこのフラグを有効にしてファイルを保存しておいたほうが便利です。
Conv
変数のRMS変化の収束条件。このパラメータを0.0にすると,かなり厳しいデフォルト値を用います。
ConvV
エネルギーの収束条件。 このパラメータを0.0にすると,デフォルトで1 mHatreeとします。
テンプレートファイルの2行目では,次のような記法を用いて値のペアを1つ以上指定します:
Value C|V n個繰り返し (間にはスペースが入りません)
ここで, Valueは変数の値,2つ目の値は一文字フラグで,その変数を固定するならC,最適化するならVとします。この行のフォーマットは値ごとにF14.9, A1です。
テンプレートファイルの残りの部分はGaussianインプットに関する部分です。入力ファイル中の各フィールド(前に定義した変数が差し込まれます)では <n x.y> (n番目の変数をフォーマットFx.yを用いた点に挿入)または<-n x.y> (-1倍した変数nをそこに挿入)のどちらかを指定します。
テンプレートファイルの指定方法を明確にするために,例を示します。以下のgauoptテンプレートファイルでは,水分子に対する最小基底のSTO-2G展開に関するスケーリングファクターの最適化を行います。
3 3 T 0.0 0.0 7.66V 2.25V 1.24V # RHF/Gen Test Water RHF/STO-2G basis with optimized scale factors 0,1 O H,1,r H,1,r,2,a r 0.96 a 104.5 1 0 sto 1s 2 <1 12.10> sto 2sp 2 <2 12.10> **** 2 0 sto 1s 2 <3 12.10> **** 3 0 sto 1s 2 <3 12.10> ****
同じgauopt変数を使うことによって,2つの水素のスケールファクターを等しくしています。当然ですが,このことは,どの水素原子にも同じ基底を使うようにしても可能です。
ghelpはGaussianの階層的になっているヘルプ機能です。ghelpとだけタイプすると,一般情報とヘルプトピック一覧が表示されます。 ghelp topicsとすると,トピック一覧だけが表示されます。
Gaussianキーワードとキーワードに関する情報が得たい場合には次のように入力します:
ghelp route keyword [option]
overlay n (IOp(n/m))の内部オプションm に関する情報はUnixシステム上であれば次のようなコマンドで得ることができます:
$ ghelp "route ovn iop(m)"
Gaussianユーティリティに関する情報は,最初のトピック指定でユーティリティ名を入力するか,単にトピックutilitiesから選んでいけば得ることができます。
mmはスタンドアローン(単独動作)型の分子力学(MM)プログラムです。このプログラムは標準入力からGaussianのインプットファイルを読み込み,標準出力に(可能であれば最適化した)構造での新しいインプットファイルを出力します。用いる力場には -Dreiding, -UFF, -Amber, -Paramオプション(下記参照)から選択する必要があります。実行するタイプのジョブは,-Force, -Freq, -Opt, -Microコマンドラインオプションで選択します。デフォルトはエネルギー計算です。-Microにすると,(分子のMM部分を先に最適化するために)リアル系に属する原子のみ最適化します。
newzmatユーティリティは主に分子指定について様々な標準フォーマット間でコンバートするために作られています。また,その他にも多くの機能があり,例えばGaussianチェックポイントファイルから分子指定だけを取り出したりすることもできます。以下ではnewzmatの機能全貌について説明します:
newzmatは一般的に次の構文をとります:
newzmat option(s) input-file output-file
ここで option(s) は(1個以上の)オプションで,行う操作を指定します。 input-file はコンバートする(あるいは取り出そうとする)構造が入っているファイルであり,output-fileは新しい分子指定(またはGaussianインプット)が出力されるファイルです。それぞれのファイル名の部分をハイフンにすることで,標準入力・標準出力を指定することもできます。
アウトプットファイル名が省略された場合,アウトプットファイルのベース名はインプットファイルと同じものに,拡張子はそのファイルタイプで慣習的に使われているものになります。一般的には,ファイル指定の際拡張子は省略しておいて,自動的に拡張子変換が行われるようにしておきます。デフォルトの拡張子は以下の表の通りです。
拡張子 | 説明 | オプション形式 |
---|---|---|
.bgf | Biograf 中間データファイル | bgf |
.cac | CaChe 分子ファイル | cache |
.chk | Gaussian 03 チェックポイントファイル | chk |
.com | Gaussian インプットファイル(Z-matrix形式) | zmat |
.com | Gaussian インプットファイル(カーティシャン座標形式) | cart |
.con | QUIPUシステムデータファイル | con |
.dat | Model/XModel/MM2データファイル | model |
.dat | MacroModelデータファイル(フォーマット式・非フォーマット式) | mmodel, ummodel |
.ent | Brookhavenデータファイル(PDBと同じ) | ent |
.com | 結晶構造用分率座標(Fractional coords)(厳密に 3 trans. ops.が必要) | fract |
.inp | MOPACインプットファイル | mopac |
.pdb | Protein Data Bank 形式(Brookhavenと同じ) | pdb |
.ppp | ある種のPPPプログラム(出力のみ) | ppp |
.xyz | Unadornedカーティシャン座標 | xyz |
.zin | 古いバージョンのZINDO | zindo |
インプットまたはアウトプットの分子指定形式を指定するには,それぞれオプション -i または-o を用います。これらのオプションのすぐ後に,指定する分子指定フォーマットを,表中の対応するオプション形式で示します(間にスペースはいれません)。例えば,-ipdbとすると,インプットの分子指定にはPDB形式を指定したことになり,さらに拡張子が指定されなかった場合には拡張子.pdbがインプットファイル名に補完されます。同様に,-oxyzとすると,アウトプットにカーティシャン座標形式を用いることになり,アウトプットファイルのデフォルトの拡張子は.xyzになります。インプットおよびアウトプットオプションのデフォルトは,それぞれ-izmat, -ozmatです。ここで,-izmat と-icartは同じことであることに注意してください。このどちらかが指定されても,Gaussianインプットファイルとして読まれ,その分子指定形式はZ-matrix, カーティシャン,およびそれらの混合(内部およびカーティシャン)座標のどれでもかまいません。
newzmatで,インプットを指定する際に以下のオプションが指定できます:
–step N
Gaussian 03チェックポイントファイル中N番目のステップの構造最適化データの構造を用います(-ichkインプットオプションを用いているときのみ)。
このオプションはredundant内部座標(デフォルトの座標系)による最適化では利用できません。その代わりにルートセクションでGeom=(Check,Step=N)として,続けてジョブを計算することにより,チェックポイントファイルから構造を取り出します。
–ubohr
インプットファイル中の距離の単位がBohrになります(デフォルトはオングストローム)。
–urad
インプットファイル中の角度の単位がラジアンになります(デフォルトは度)。
アウトプットを指定する際に以下のオプションが指定できます:
–mof1
MacroModel形式1を用います(-ommodel指定時のみ有効)。
–mof2
MacroModel形式2を用います(-ommodel指定時のデフォルト)。
–optprompt
最適化を行うパラメータに関する入力が求められます。これは,構造最適化を行おうとしている場合で,しかも-ozmatを指定している(または他にオプションが指定されていない)場合に使われます。デフォルトでは,対称性で固定されるもの以外の全てパラメータが最適化されます。
–prompt
ルートセクションおよびタイトルセクション行と電荷・多重度に関する入力が求められます。これは,-ozmatを指定している(または他にオプションが指定されていない)場合に使われます。newzmatにより生成されるデフォルトのGaussianインプットファイルは,HF/6-31G(d) シングルポイント(1点)計算になります。
次のコマンドでは, PDBファイルwater.pdbから分子指定を読み込み,Gaussianインプットファイル(Z-matrix形式)h2o.comとして書き出されます。
$ newzmat -ipdb water h2o -ozmatはデフォルトなので,省略可能 Charge and multiplicity [0,1]? デフォルト値でよい場合にはそのままリターンを押す
PDBファイルからはZ-matrixの電荷および多重度が決められないので,別途入力が求められます。
次のコマンドでは, Gaussian 03 チェックポイントファイルG98-11234.chkから分子指定を読み込み,PDBファイルpropell.pdbに書き出します。
$ newzmat -ichk -opdb G98-11234 propell
次のコマンドでは,チェックポイントファイル newopt.chk から最適化における5番目のステップの構造を読み込み,MOPACファイル step5.inpに書き出します。
$ newzmat -ichk -omopac -step 5 newopt step5
次のコマンドでは,チェックポイントファイル mystery.chk 中の構造を読み込み,それを画面上にGaussianインプットファイル形式で表示します(コマンドがインタラクティブ(対話形式)で実行されることを仮定しています)。
$ newzmat -ichk mystery.chk –
次のコマンドでは, チェックポイントファイルquick.chk を書き出しますが,その際インプットにはユーザーがインタラクティブにGaussianインプットファイルをタイプして与えます。
$ newzmat -ochk - quick # anything 0 1 O H 1 1.0 H 1 1.0 2 120. 入力ファイルの終わりには空行 ^D
インプットファイルの終わりには空行が必要であることに注意してください。
次のコマンドでは,MOPACファイル newsalt.inpから分子指定を読み込み,対応するZ-martrix形式でGaussianインプットファイルnewsalt.comに書き出します。その際,この分子に対するルートセクション・タイトルセクション行と電荷・スピン多重度に関する入力が求められます。
$ newzmat -imopac -prompt newsalt Percent or Route card? # B3LYP/6-31G(d,p) Opt Route card? ルートセクションの終わりには空行 Titles? Optimization of caffeine at B3LYP/6-31G** Titles? タイトルセクションの終わりには空行 Charge and Multiplicity? 0,1
標準でサポートされていない可視化ソフトにデータをコンバートする場合には,まずPDBファイルを試してみてください。PDB形式は結合性情報が含まれており,広くサポートされているからです。ソフトウェアによっては,PDB形式の拡張子には .pdbでなく, .entを用いる必要があるかもしれません。.pdbを用いるときは –ient または –oent オプションを,.entを用いるときは-ipdb または-opdb オプションを選んでください。他によく使われる形式にはMopacファイル形式があります。
その他newzmatのオプションには,結合性情報の生成や,標準的な構造パラメータの利用,分子対称性の利用に関するものがあります。完全結合性テーブルを用いることにより,対称性が適用できるようなZ-martix構造を生成します。また,そのようなテーブルは分子力学(MM)プログラムのデータファイルを出力するために必要となります。インプット形式に完全結合性情報が含まれているようなもの(例えば,MacroModelデータファイル)を用いる場合,その結合性情報が使われます。
しかし, インプットがZ-matrixやMOPAC形式の場合,その内部座標による結合性情報しか利用できません。したがって,分子対称性が課されたZ-matrixを生成する場合,残りの結合性情報を生成する必要があります。カーティシャン座標で読み込まれた場合,当然ですが結合性情報は入っていません。よってデフォルトで,内部に保存されている原子半径を用いて結合性テーブルを作成します。さらに,インプット構造を生成するために用いたときには,分子力学プログラムでは適切な結合距離を生成することができず,ある程度対称的にはなっているが厳密に保たれていないような構造が生成されるときがあります。このようなケースに対処するには,オプションを指定してやる必要があります。
–allbonded
新しい結合性情報を生成する際,全ての原子が結合しているものとして扱います。
–bmodel
結合距離を決めるのに,標準モデルB結合長の組み込み値を用います。
–density N
密度行列番号Nに対する自然軌道を生成します。このオプションはCaCheファイルを生成する場合にのみ有用です。Nは,HFでは0,MP2では2,CIでは6,QCISDまたはCCDでは7とします。
–fudge
内部値を用いるときに,結合距離がいいかげんであっても妥当であるとします。 これはモデルインプットのときにははデフォルトであり,その他のときには使えません。
–gencon
内部半径を用いて結合性情報を生成します。
–getfile
全ての引数がファイル名を指定したこととなり,標準入力・出力は受け付けないようになります。
–lsymm
対称性を判断するのに緩い閾値を用います。このオプションは-symavも指定したことになります。
–mdensity M
–densityで指定した電子密度と一般化電子密度Mとの差分電子密度を生成し,それを自然軌道に変換します。
–nofudge
いいかげんな(fudge)結合距離を用いません。これはデフォルトであり,モデルインプットを除く全てのケースではこれしか選択できません。
–nogetfile
–getfileを無効にします。
–noround
Z-matrixパラメータの丸めを無効にします。
–nosymav
インプット座標の平均化を無効にします。
–nosymm
対称性を利用しなくなります。
–order
原子の順番を可能な限り入力順のままになるようにします。
–round
0.01 Å または1 度までZ-martixパラメータを丸めます。
–symav
近似対称操作を行って入力構造を平均化し,厳密な対称性になるようにします。
–symm
分子対称性をアサインします。
–tsymm
対称性を判断するのに厳しい閾値を用います。このオプションはデフォルトです。
–rebuildzmat
Z-marixを構築する際,読み込んだものを用いず,新たに構築します(Z-matrixかMOPACインプットではデフォルトになっているでしょう)。このオプションは-genconも同時に指定したことになります。また,このオプションは-redozと省略することもできます。
testrtユーティリティは,標準的なGaussianルートをインプットとして与えると,同等の非標準ルートを生成します。与えるルートは通常コマンドラインで(引用符で囲んで)指定します。
$ testrt "# rhf/sto-3g"
コマンドラインがない場合, testrtは検証するルートの入力を求めます。
指定されたルートが妥当であれば, testrtはそれに相当する非標準ルートを表示します。文法エラーがあった場合,エラーメッセージが表示されます。したがって,非標準ルートの意味がまったく分からないユーザーでも,testrtはルートセクションの構文が正しいかどうかを確認するために用いることが可能です。
以下では testrtの例をいくつか示します:
$ testrt "# qcisd(modredun)/6-31G* scf=driect" ----------------------------------- # qcisd(modredun)/6-31G* scf=driect ----------------------------------- QPERR ---- A SYNTAX ERROR WAS DETECTED IN THE INPUT LINE. # QCISD(MODREDUNDANT) ' ModRedundantはGaussianのオプションには存在しますが,QCISDでは使えません ...$ testrt "# mp4 stable" ... Failure in RteDef: Jtype=25, Iprc1=4, MaxDer=0, JP=1, JD=0. ... 安定性(Stability)計算はMP4法では利用できません
$ testrt Please type in the route spec., terminated with a blank line # Opt=QST2/6-31G* Test
1/5=1,18=20,27=202/1,3; 2/12=2,17=6,18=5/2; ...
最初の例で示したように,ルートセクション内の最初に見つかったエラーだけにフラグが立てられます。2番目の例は,無効なキーワードの組み合わせによるエラーメッセージです。最後の例は,うまくいった場合の出力です。
testrtではキーワードの使い方に関するエラーは検知できないことに注意してください。このユーティリティでチェックできるのは,ルートセクションの文法だけです。したがって,ルートセクション内にMP2キーワードを2回書いても,予想外の結果となるだけで(MP4ジョブが流れます),エラーは表示されません。
testrtの出力は,UNIXの標準出力のリダイレクションを用いてファイルに書き出すこともできます。
$ testrt “# rhf/sto-3g” >output-file
このユーティリティは, formchkに対応するものです。フォーマット型チェックポイントファイルをバイナリ型チェックポイントファイル(用いている計算機システムに適したフォーマット)に変換します。
$ unfchk Formatted Checkpoint file? water Read formatted file water.fchk Write checkpoint file water.chk
このユーティリティでは,指定したファイル名にWindowsシステム上では拡張子.fchが,そのほかの計算機システムでは拡張子.fchkがつけられます。
フォーマット型チェックポイントファイルは異なる計算機プラットホーム間でデータをやり取りために用いることができることにも注意してください。移行元の計算機でformchkを用い,移行先の計算機でunfchkを用いてバイナリ型チェックポイントファイルを作ります。
平日9:30~17:30 (土曜日、日曜日、祝祭日、年末年始、夏期休暇は、休日とさせていただきます。)