SAC-CI

Description

このキーワードを指定すると,中辻らによるSymmetry Adapted Cluster/Configuration Interaction (SAC-CI) 法[121,122,123,124,125,126,127,128,129,130,131,132,133,134,135]を用います。この方法の詳細については,次のウェブサイトにあるSAC-CIドキュメントを参考にしてください:www.sbchem.kyoto-u.ac.jp/nakatsuji-lab.

SAC-CIジョブでは励起状態計算のために参照状態を指定する必要があります。閉殻系に対しては,SAC-CIで用いられるデフォルトRHF波動関数が適切です。開殻基底状態に対しては,ROHF基底状態波動関数(SAC-CIに加えてルートセクションでROHFを入れます)か,もしくはAddElectronまたはSubElectronを用いた基底状態計算での閉殻状態のどちらかを用います。詳細については例を参照してください。

スピン状態オプション

Singlet=(suboptions)

計算を行う一重項状態を指定します。 カッコ内のサブオプションには,求める状態やその他計算パラメートを指定します。スピン状態選択オプションには他に,CationDoubletDoubletは同義),AnionDoublet, Triplet, Quartet, Quintet, Sextet, Septetがあります。スピン状態は1つ以上指定する必要があります。

スピン状態サブオプション

SpinState=(NState=(i1,i2,...))

計算する指定したタイプの状態数を,分子点群の既約表現ごとに指定します。分子の対称性により,8個まで指定できます(例えば,D2hであれば8, C2vであれば4,等)。略式NState=Nで指定すると,各既約表現に対して Nを指定したことになります。縮退に関しては,最も近い線形対称性(例えば,TdにはD2 )で取り扱います。

SpinState=(Density)

SpinStateスピン状態について,非緩和電子密度行列を計算し,Mulliken電子密度解析を行います。詳細については例を参照してください。

SpinState=(SpinDensity)

計算された全SAC-CISpinStateスピン状態について,スピン密度行列を計算します。FullActiveオプションも指定されたことになります。

SpinState=(NoTransitionDensity)

デフォルトでは,遷移電子密度と振動子強度は,SpinStateSingletのときはSAC基底状態とSAC-CI一重項励起状態間で,そのほかのスピン状態では最低SAC-CI状態とSAC-CI励起状態間で計算されます。NoTransitionDensityを指定すると,対応するスピン状態でこの計算を行わなくなります。

その他共通オプション

TargetState=(SpinState=s, Symmetry=m, Root=n)

構造最適化やグラジェント(勾配)計算で,または Densityキーワードで用いる対象状態を指定します。sはスピン多重度を示すキーワード(つまり,Singlet, Doublet等),mはその点群での既約表現番号,nは求めるスピン状態での解の番号(その前のエネルギー計算で決まります)です。

AddElectron

開殻参照SCF配置に1電子追加します。これは, CationDoublet, Doublet, Quartet, Sextetではデフォルトです。

SubElectron

開殻参照SCF配置から1電子取り去ります。これは,AnionDoubletではデフォルトです。

TransitionFrom=(SpinState=s, Symmetry=m, Root=n)

遷移密度行列 を計算する際の初期状態を指定します。sはスピン多重度を示すキーワード(つまり,Singlet, Doublet等),mはその点群での既約表現番号,nは求めるスピン状態での解の番号(上記TargetStateと同様)です。

AllProperties

hexadecapoleまでの多重極子モーメント,4番目のモーメントに対する全N番目のモーメント,全静電プロパティ,反磁気的項(遮蔽および磁化率)を計算します。このオプションはDensityサブオプションで指定した全スピン状態に適用されます。

NoProperty

分子プロパティを計算しません。

SelectCISOnly

CIS初期推測を求めた後,計算を終了させます。このオプションを用いることで,検討したい特定の状態(例えば,TargetStateで)の状態数を決められます。代替法の例を参照してください。

SACOnly

参照状態の計算のみを行い,励起状態は計算しません。

エキスパートユーザー向けオプション

スピン状態サブオプション

>SpinState=(MaxR=N)

Nにします。

SpinState=(NonVariational)

非対称行列でSAC-CI方程式を解きます。Variationalにすると,対角化対称行列で処理されます(デフォルトです)。このオプションは,計算の励起状態部分にのみ適用されます(基底状態計算は常に非変分的手法が用いられます)。

SpinState=(InCoreDiag)

in-coreアルゴリズムを強制的に用います。

SpinState=(Iterative=item)

反復アルゴリズムを強制的に用います。 Itemには初期推測タイプを指定します:CISならSInitial,CISDならSDInitial

手続きに関するオプション

FC

このキーワードを指定すると,内殻を相関計算から除外する内殻固定(frozen-core)オプションが有効になります。一般的には,活性空間のサイズはSAC-CI計算の精度に非常に影響を及ぼします。そのため,全軌道枠を用いることが推奨されます。構造最適化やグラジェント(勾配)計算では,Fullがデフォルトです。

LMO=type

指定したタイプの局在化MOを参照軌道として用います。タイプには,PM (Pipek-Mezey) やBoysが指定できます。

MacroIteration=N

最適化ステップ内でNマイクロ反復を用います。 Nのデフォルト値は0です。

InCoreSAC

SAC方程式の解法にin-coreアルゴリズムを用います。

MaxItDiag=N

対角化反復の最大数を指定します。

MaxItSAC=N

SAC方程式を解く際の最大反復数を指定します。

DConvDiag=M

対角化エネルギー収束判定基準を10-Mとします。

DConvSAC=M

SAC方程式を解く際のエネルギー収束判定基準を10-Mとします。

精度レベルに関するオプション

SD-R

1電子および2電子linked励起演算子を用いて計算を行います。これはデフォルトです。

General-R

7電子励起まで含めたlinked励起演算子を用いて計算を行います。

LevelOne

2電子励起演算子の選択閾値を最低必要なレベルにします。LevelThreeは最も精度があるレベルで,デフォルトです。LevelTwoはこの2つのレベルの中間の精度です。

WithoutDegeneracy

デフォルトでは,摂動選択は縮退が保たれるように行われます。このオプションを指定すると,このことを行わなくなり,計算コストを下げることができます。このオプションの利用は研究レベルでは推奨されません。

NoLinkedSelection

linked演算子に対する摂動選択閾値を無効にします(つまり,全演算子が含まれます)。

NoUnlinkedSelection

unlinked演算子に対する摂動選択閾値を無効にします(つまり,全演算子が含まれます)。

FullUnlinked

全タイプのunlinked項を含めます。強制的にin-coreアルゴリズムとなります。

全ての項を含めるためには,これら前述のオプション3つ全てが必要となりますが,かなりのパフォーマンスの欠如を招きます。

WithoutR2S2

R2S2 unlinked積分を無視します。このオプションは,精度と計算パフォーマンスのトレイドオフということになります。

EgOp

General-Rスキームで4電子励起やそれより高次のlinked演算子を,exponential generationアルゴリズムで生成します。これはシングルポイント(一点)エネルギー計算ではデフォルトです。最高次数励起レベルはMaxRオプションで指定します(最大で6まで)。摂動選択閾値は,LevelOne, LevelTwo,LevelThree オプションで指定します。

FullRGeneration

General-Rスキームで全ての高次linked演算子をMaxR=4まで生成し,摂動選択を実行します。これは,グラジェント(勾配)計算,構造最適化ではデフォルトです。

グループ和操作に関するオプション

次のオプションを用いると,ポテンシャルエネルギー面探索のようなマルチポイント(複数点)計算タイプで,全点間の一貫性を保証できます。Scan計算は3回実行されます:最初の点ではBeforeGSUMにより,その後の数点あるいは全点ではCalcGSUMにより,そして最後に全点でAfterGSUMにより計算されます。実際の結果は,最後の計算で求められます。この手法は一重項,三重項,イオン化,電子付加状態でのみ利用可能であり, General-Rオプションと共に指定することはできません。

BeforeGSUM

一連のlinked計算を初期化します。このオプションは最初の点での計算に用います。

CalcGSUM

指定した点でのデータを集め,閾値と演算子選択を決定します。これにより,全ての点で用いることのできる一貫性のあるセットが形成されます。

AfterGSUM

CalcGSUMオプションでの計算で収集したGSUMデータを用いて,各点でSAC-CI計算を行います。

メモリに関するオプション

次のオプションを用いると, リソース不足で失敗してしまうようなジョブで,プログラムデフォルト設定を変えることができます。

MaxR2Op=N

摂動選択後のR2演算子の最大数をNにします。デフォルトは100,000です。

MaxEgOp=N

General-R法の最大演算子数をNにします。デフォルトは5,000です。

Availability

解析的エネルギーと最適化。数値的振動数。

構造最適化はデフォルトで全軌道を使います。最適化で異なった内殻固定オプションを指定すると,数値的グラジェント計算を行うことになるので,パフォーマンスがそれに相当して落ちます。

Related Keywords

Examples

2つの最低一重項励起状態を求めるためには,次のようなルートセクションを用います:

# SAC-CI=(Full,Singlet=(NState=8))/6-31G(d) NoSymm ...

ここでは8つの一重項状態(対称性なし)を求めています。2つの最低励起状態がこの計算で見つかった状態内にあるでしょう。

この代わりに, 次のようなルートを用いることもできます:

# SAC-CI=(Full,Singlet=(NState=4))/6-31G(d) ...

この計算では,各既約表現に対してそれぞれ4つの最低一重項励起を求めます。

C2v対称性を持つ分子で,既約表現ごとに求める一重項励起状態数を指定するには,以下のようにします:

# SAC-CI=(Full, Singlet=(2,2,1,2))/6-31G(d) ...

コストのかからない初期計算で状態を探索 少ない計算コストで求める励起状態を見つけるために,予備的な低精度の計算を行います。例えば,以下のようなルートにすると,各対称性タイプで4つの一重項励起状態を求めます:

# SAC-CI=(Full,Singlet=(NState=4),LevelOne)/6-31G(d) ...

このジョブの後に,通常(LevelThree)の計算で検討したい状態を求めます。例えば以下のようにします:

# SAC-CI=(Full,Singlet=(1,0,1,0))/6-31G(d) ...

開殻系の計算  ビニルラジカル(vinyl radical;中性二重項ラジカル)の励起状態を予測するためには,以下のようなルートを指定します:

# ROHF/6-31G(d) SAC-CI=(Full,Doublet=(NState=3),Quartet=(NState=3)) ...

このように指定すると,基底状態に対してROHF波動関数を用い,3つの二重項励起状態と3つの四重項励起状態を各既約表現に対して計算します。同様のアプローチは,メチレン(methylene)の三重項基底状態に対しても可能です。

構造最適化  最適化する励起状態を指定するためには,TargetStateオプションを用います:

# Opt SAC-CI=(Singlet=(Nstate=4),  
  TargetState=(SpinState=Singlet,Symmetry=1,Root=2))/6-31G(d) ...

電子密度や分子プロパティの計算 予測した励起状態に対する非緩和電子密度や電子密度解析を計算するには,次のようなルートにします:

# SAC-CI=(Full,Singlet=(...,Density),Triplet=(...,Density))/6-31G(d) ...

三重項状態に対してのみ非緩和電子密度や電子密度解析を計算するためには, SingletオプションでのDensityサブオプションを抜かします。

緩和電子密度と電子密度を指定したある状態に対してのみ計算するためには,次のようなルートを用います:

# SAC-CI=(Full,Singlet=(NState=4),TargetState=(...)) Density=Current ...

このジョブでは,全グラジェント計算が必要となるので,元のよりも非常に多くの計算コストがかかることに注意してください。

SAC-CIの出力 SAC-CI計算を行うと,求めた各スピン状態について表形式で次のような出力がされます(この例は,一重項状態です):

 ---------------------------------------------------------------------
 Transition dipole moment of   singlet state from SAC ground state
 ---------------------------------------------------------------------
 Symmetry  Sol Excitation  Transition dipole moment (au)      Osc.
            energy (eV)   X           Y           Z      strength
 ---------------------------------------------------------------------
    A1   0    0.0      Excitations are from this state.
    A1   1    8.7019    0.0000      0.0000      0.4645      0.0460
    A1   2   18.9280    0.0000      0.0000     -0.4502      0.0940
    A1   3   18.0422    0.0000      0.0000     -0.8904      0.3505
    A1   4   18.5153    0.0000      0.0000      0.0077      0.0000
    A2   1    7.1159    0.0000      0.0000      0.0000      0.0000
    A2   2   18.2740    0.0000      0.0000      0.0000      0.0000
    B1   1    1.0334   -0.2989      0.0000      0.0000      0.0023
    B1   2   18.7395   -0.6670      0.0000      0.0000      0.2042
    B1   3   22.1915   -0.1500      0.0000      0.0000      0.0122
    B1   4   15.8155    0.8252      0.0000      0.0000      0.2639
    B2   1   11.0581    0.0000      0.7853      0.0000      0.1671
    B2   2   15.6587    0.0000      1.5055      0.0000      0.8696
    B2   3   24.6714    0.0000     -0.7764      0.0000      0.3644
    B2   4   23.5135    0.0000     -0.1099      0.0000      0.0070
 ---------------------------------------------------------------------

この出力中では,各励起状態は対称性ごとにまとめられるので,エネルギー順になっていないことに注意してください。

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