このキーワードを指定すると,溶媒存在下で計算を行います。モデルとしては以下のものが使用できます:
Gaussian 03ではconductor反応場のKlamt形式(COSMO) [567]を用いたPCM計算も実行でき, COSMO-RS溶媒和プログラム用の入力データも生成できます。詳細については,COSMORSキーワードを参照してください。COSMO-RSはCOSMOthermとしてCOSMOlogic GmbH, www.cosmologic.de.により配布されています。
PCM計算(SCRF=PCM, CPCM, IEFPCM)で詳細なキーワードとオプションを指定するためには,Readオプションも指定し,その追加入力セクション(空行で入力終わり)を用いて指定します。このセクションのキーワードは,一般的なGaussian入力形式と同じです。指定可能なキーワードは,例のようにサブセクションごとに列記します。
Onsagerモデル (SCRF=Dipole)の計算では,溶質半径(オングストローム単位)と溶媒の誘電率を,入力ストリームから読み込みます。その形式は,1行に2つのフリーフォーマット実数を並べたものです。適切な溶質半径は(別のジョブステップで)気相分子体積計算により求めます。詳細については,Volumeキーワードを参照してください。
IPCMモデルやSCI-PCM モデルでは,入力行は溶媒の誘電率と等密度値(オプション;デフォルトは0.0004)からなります。
計算で用いる溶媒を指定します。ただし,溶媒は種々のSCRF法による入力ストリームでも指定可能になっています。指定されなかった場合には,溶媒はデフォルトで水になります。Itemには,以下のリストの溶媒名を指定します。
ここでは,便宜上 ε 値も列記してありますが,これは溶媒を定義するために用いられる多くの内部パラメータのうちのひとつでしかないことに注意してください。したがって,単にε を変えても,新たな溶媒を適切に定義できるわけではありません。
量子力学計算において,IEF-PCMモデル[288,290,293](後述)を用いて反応場計算を行います。これはデフォルトです。このオプションはGaussian 98のものとは意味が変わったことに注意が必要です。また,表式および実装が変わった部分もあります。詳細については[302]にあります。
積分方程式表式化(integral equation formalism)モデル[288,293,294,295]を用いてPCM計算を実行します。Chipmanのモデル[568]は,この以前のモデル[569]に密接に関連しています。
IEF-PCMを異方性もしくはイオン性溶媒に用いる場合,PCM入力セクション項目には必ず,Readオプション(後述)を用いて,これら溶媒タイプ用の異方性もしくはイオン性モデルを選択します。
CPCM分極伝導体計算モデル[292,303]を用いてPCM計算を行います。
Onsagerモデル反応場計算を行います。
IPCMモデル反応場計算を行います。IsodensityはIPCMと同義です。
SCI-PCMモデル反応場計算を行います。これは,等密度面から自己無撞着的に決めたキャビティ(空洞)を用いてSCRF計算を行うものです。これはシングルポイント(一点)エネルギー計算および最適化計算ではデフォルトです。
Klamtのモデル用に提案された原子半径とその他パラメータを用いて伝導体PCM計算(CPCM)を行います。 COSMO-RS用のインプットデータとして書き出すテキストファイル名は入力ストリームから,構造,基底関数,その他データの後に読み込まれます。
(入力ストリームから読み込むのではなく)ルートセクションで溶媒半径を指定します。このオプションを指定する際には,SolventまたはDielectricも指定しなければなりません。
溶媒の誘電率を指定します。Solventと両方指定した場合には,このオプションが優先されます。
計算パラメータを指定したキーワードとオプションを,(上述のように)入力ストリームから別のセクションで読み込みます。
チェックポイントファイルから SCRF情報を取り出しますが,さらに入力ストリームから修正を読み込みます。
数値積分にVne basinを用います。
数値積分に密度basinを用います。非核attractorがある場合,ジョブは失敗する可能性があります。
強制的に電子密度の評価に密度行列を用います。
強制的に電子密度の評価にMOを用います。
自己無撞着的に面を解くのではなく,気相等電子面を用いてキャビティ(空洞)を決めます。これは主としてデバッグ用のオプションです。
PCMモデルは HF, DFT, MP2, MP3, MP4(SDQ), QCISD, CCD, CCSD, CASSCF, CIS, TD, CID, CISDエネルギー計算,およびHF, DFT, MP2, CIS, CASSCF グラジェント(勾配)計算で利用可能です。
PCM MP2計算に対する溶媒反応場は,SCFレベルで得られる溶質電子密度と平衡になっています。 ただし,ΔGsolvation=EPCM-MP2-EMP2 はPCM SCFVac オプションを用いて得ることはできません。気相および溶媒中で別に計算を行い,その結果を比較すれば得ることが可能です。
CIS PCM [298] および TD PCM [300]計算は,デフォルトでは非平衡計算として行われ,溶媒反応場とインプットで指定した電子状態(デフォルトでは基底状態)の電荷密度との間で分極処理されます。しかし,構造最適化では平衡CIS PCM計算がデフォルトになります。
デフォルトでは, CASSCF PCM [297] 計算は溶媒反応場‐溶質電子密度分極処理に関する平衡計算に対応します。2つの異なる電子状態(例えば,初期状態と垂直励起した第一励起状態)での非平衡溶質‐溶媒相互作用の計算は,NonEq=type PCMキーワードを用いて,2つの別のジョブステップとして計算を行うことで可能です(後述のPCMインプットセクションを参照してください)。
IPCMモデルは,HF, DFT, MP2, MP3, MP4(SDQ), QCISD, CCD, CCSD, CID, CISD エネルギー計算でのみ利用可能です。
.SCI-PCMは,HFおよびDFTエネルギー,最適化,数値的振動数計算で利用可能です。
OnsagerモデルはHF, DFT, MP2, MP3, MP4(SDQ), QCISD, CCD, CCSD, CID, CISDエネルギー計算と,HFおよびDFT最適化,数値的振動数計算で利用可能です。
Opt Freqキーワードの組み合わせは,SCRF=Onsager 計算では利用できません。
COSMORSオプションはシングルポイント(一点)計算でのみ利用可能です。一般的にこの計算はSCRF=PCM最適化構造を用いたシングルポイント(一点)溶媒和計算として行います。
SCRF=PCMやSCRF=IPCMジョブでは,ルートセクションにRestartキーワードを用いることでチェックポイントファイルから再スタートさせることができます。SCRF=SCIPCMがSCF反復中に失敗した場合には,SCF=Restartキーワードで再スタートさせなければなりません。
PCMエネルギー Onsagerモデル以外のSCRFモデルでのエネルギーは,出力ファイル中に通常形式で出力され,さらに計算に関する追加情報も出力されます。例えば,次の例はPCM計算による予測エネルギーを含む出力ファイルです:
SCF Done: E(RHF) = -100.029187240 A.U. after 5 cycles
Convg = 0.4249D-05 -V/T = 2.0033
S**2 = 0.0000
--------------------------------------------------------------------
Variational PCM results
=======================
<psi(f)| H |psi(f)> (a.u.) = -98.568013
<psi(f)|H+V(f)/2|psi(f)> (a.u.) = -98.573228
Total free energy in solution:
with all non electrostatic terms (a.u.) = -98.569083
--------------------------------------------------------------------
(Polarized solute)-Solvent (kcal/mol) = -3.27
--------------------------------------------------------------------
Cavitation energy (kcal/mol) = 5.34
Dispersion energy (kcal/mol) = -3.08
Repulsion energy (kcal/mol) = 0.34
Total non electrostatic (kcal/mol) = 2.60
--------------------------------------------------------------------
追加出力行はPCMオプションが指定された場合に表示されます。
溶液中の全エネルギーは,SCFエネルギーと全非静電エネルギー項(共に上の出力中で強調されています)の和です。PCMの結果は気相および溶液中の双極子モーメント(ここでは示してありません),予測SCRFエネルギーと ΔGsolvationの様々な成分にも含まれます。
全反復SCRF法では,用いるべきエネルギーはConvergence achievedメッセージの前にあるもの(つまり,SCRF法の最終反復の値)であることに注意してください。
Onsagerエネルギー Onsager SCRF計算で求められたエネルギーは,以下のように出力ファイル中に表示されます:
Total energy (include solvent energy) = -74.95061789532
COSMO/RSの例 以下にサンプルインプットファイルを示します:
# B3LYP/6-311+G(2d,2p) SCF=(Tight) SCRF=COSMORS
Water generating COSMO-RS input
0 1
o
h,1,r
h,1,r,2,a
r .96
a 104.5
water.cosmo
このジョブでは,データファイル water.cosmoを生成します。
PCM SCRF計算では追加インプットキーワードを指定することができます。これらは,以下の例のように,別のインプットセクションとして指定します。
# HF/6-31++G(d,p) SCF=Tight SCRF=(PCM,Read,Solvent=Cyclohexane) Test
PCM SP calculation on hydrogen fluoride
0,1
H
F 1 R
R=0.9161
TABS=300.0
ALPHA=1.21
TSNUM=70
Gaussianジョブは,溶媒にcyclohexaneを用いたHF分子のPCMエネルギー計算です。この計算は,温度300 K,酸性水素を除く全原子のスケール因子を 1.21に,球ごとのテッセラ(tesserae)を70とします。入力の終わりは通常のように空行で示します。
PCM計算をコントロールするために,以下に示すキーワードが利用可能です(関連項目ごとにまとめてあります)。
PCM計算の溶媒は,通常のSCRFキーワードのSolventオプションを用いて指定できます。溶媒名キーワードやID番号はPCM入力セクション内に指定できます。またその代わりとして,EPSやRSOLVキーワードを用いてPCM入力セクションで溶媒を明示することもできます。
溶媒の誘電率
溶媒半径(オングストローム単位)
溶媒の密度
無限振動数での誘電率のオプション値
これらのパラメータのいずれかが指定された場合,その他のパラメータはデフォルトで水の値になります。そのため,通常はこれらのパラメータ全てを適切に指定する必要があるでしょう。
分散溶質‐溶媒相互作用エネルギーの計算をスキップします。
反発溶質‐溶媒相互作用エネルギーの計算をスキップします。
キャビテーション(空洞化)エネルギーの計算をスキップします。
デフォルトでは, 非静電エネルギーの寄与は計算・出力されますが,構造最適化ではそれらの値はエネルギーとその導関数には加えられません。非静電エネルギー項が構造に影響を与えると分かっているような稀なケースでは,キーワードDDis, DRep, DCavを用いるとそれらの値を含めることが可能になります。そのようなケースでは,構造最適化中で注意を払う必要があり,最適化プロセスはよりトリッキーに,またより長くかかるでしょう。
溶液中の計算の前に,気相の計算を行います。これにより,ΔGsolvationの計算や溶液中での双極子モーメントの変化等が検討できますが,HFもしくはDFT法でしか使えません。NOSCFVACがデフォルトです。この計算タイプで推奨される半径は,HF/6-31G(d) レベルの理論で最適化された半径を適用した United Atom Topological Modelです(RADII=UAHFで指定します)。
溶質溶媒相互作用エネルギーの解析を原子または原子グループの付加寄与として計算します。この解析は溶液中の分子静電ポテンシャルへの原子電荷のフィッティングも含みます。
構造的な寄与を無視して(つまり,「キャビティ(空洞)固定 (fixed cavity)」),静電エネルギーグラジェント(勾配)を計算します。MobGrdがデフォルトです。
構造的な寄与を無視して(つまり,「キャビティ(空洞)固定 (fixed cavity)」),静電エネルギー2次導関数を計算します。MobHssがデフォルトです。
Jacobi様スキームを用いた線形スケーリング反復法で分極電荷を計算して,PCM静電問題を解きます。これはデフォルトです。
逆行列アルゴリズムで分極電荷を計算して,PCM静電問題を解きます。これはデフォルトです。
静電問題の反復解法での最大反復数を指定します。200がデフォルトです。
PCM分極電荷の反復計算の収束閾値を10-Nにします。もしくは次のあらかじめ定義されているタイプで指定します:VeryTight (10-12), Tight (10-9) and Sleazy (10-6)。デフォルトの収束値は,PCMエネルギー計算ではQConv=Tight,PCMエネルギーグラジェント計算ではQCONV =VeryTightです。
Jacobiスキームを利用する時に,PCM問題の反復解法のDIISアルゴリズムをスキップします。
DIIS外挿で用いるベクトル数
反復解法で高速多重極展開法(fast multipole method)の利用を無効にします。FMMがデフォルトです。
FMMでの静電ポテンシャル多重極展開の多項式の次数を指定します。6がデフォルトです。
FMMボックスの長さをオングストローム単位で指定します。6.0がデフォルトです。
PCM反復解法での前調整(preconditioner)タイプを指定します。0は前調整をしないことを意味します。 1は単純Jacobi前調整を,2は同一球面にある電荷のみを考慮した補正に基づく前調整になります。2がデフォルトです。
安定化二重共役(stabilized biconjugate)グラジェントの反復アルゴリズムを用います。DIISオプションはこのキーワードとは一緒に指定できません。この方法を用いるときは,アルゴリズムはデフォルトでJacobiになります。
反復アルゴリズムを平方共役(squared conjugate)グラジェントにします。これはCPCM計算ではデフォルトです。
反復アルゴリズムを共役(conjugate)グラジェントにします。
かつて電荷補正モードを指定するのに使っていた,ICOMPキーワードはもはや必要なくなり,使うべきではありません。
IEF-PCM表式にしたがって異方性溶媒でPCM計算を行います。誘電率を表わす3ランク対称テンソルを,6つの追加キーワードに対する値で指定します:EPSX, EPSY, EPSZ, EUPHI, EUTHE,EUPSI(これらは全てパラメータを取ります。例えば,EPSX=valueのように指定します)。
IEF-PCM表式にしたがってイオン溶液でPCM計算を行います。イオン強度(mol/dm3 Å2単位)をキーワードDISMの値として指定します。
デフォルトでは, United Atom (UA) モデルを用いて,つまり溶質の各重原子の周りに球をおくことによりキャビティ(空洞)を作ります。水素原子はそれが結合している原子の球の中に入れられます。3種類のUAモデルが利用可能です(下記参照)。
キャビティ(空洞)はPCM入力セクションで大幅に修正することが可能です。指定した水素の周りに球を置いたり,球パラメータや一般的なキャビティ幾何(トポロジー)を変更したり,デフォルトで構築されるキャビティ(空洞)にさらに球を追加したりすることができます。分子全体のキャビティを入力セクションで指定することも可能です。
幾何的モデルと用いる原子半径のセットを指定します。利用可能なモデルとセットは以下の通りです:
UA0: UFF力場の原子半径に適用したUnited Atom Topological Modelを用います。
UAHF: HF/6-31G(d)レベルの理論で最適化した半径を適用した United Atom Topological Model を用います。これはSCFVAC PCM キーワードでΔGsolvation を計算する際推奨される半径です。
UAKS: PBE0/6-31G(d)レベルの理論で最適化された半径を適用した United Atom Topological Model を用います。
UFF: UFF力場の半径を用います。水素は個々の球を持ちます(水素明示)。
PAULING: Pauling (実際には Merz-Kollman)の原子半径を用います(水素明示)。
BONDI: Bondiの原子半径を用います(水素明示)。
KLAMT: COSMO法の原子半径を持ちます。これは SCRF=CosmoRSを用いている時はデフォルトです。
UA0モデルを用いる際,原子リストのN番目の位置にある水素に球をおきます。
UA0モデルを用いる際,酸性水素(N, O, S, P, Cl, Fに結合している水素)に球をおきます。
球半径に掛ける静電スケール因子を指定します。デフォルトは1.2です。
溶質‐溶媒境界を表す分子面タイプを指定します。指定可能なオプションは以下の通りです:
SES: 面を除いた溶媒(Solvent Excluding Surface)。面は原子またはグループ球から,また自動的に面を滑らかにするために作られた球(「追加球(“added spheres”)」)から生成されます。これは静電寄与ではデフォルトです。
VDW: Van der Waals面。非スケール原子半径を用い,面を滑らかにするための「追加球(“added spheres”)」の生成をスキップします。
SAS: 溶媒接近面(Solvent Accessible Surface)。溶媒の半径が原子または原子グループの非スケール半径に足されます。
キャビティ(空洞)面を滑らかにするための追加球の生成を行わなくなります。ADDSPHがデフォルトです。
面に対する代替パラメータ 。修正する面はPCMインプットで次のような形式で指定します:
ModifySph
atom_number radius [alpha]
キャビティ(空洞)にNのユーザ定義球を追加します。球のパラメータは次のようなフォーマットで指定します:
ExtraSph=N
X Y Z radius [alpha] X,Y,Zは標準配向でのカーティシャン座標
キャビティ(空洞)は次のフォーマット行で指定したN球で構築されます。
atom_number radius [alpha]
X Y Z radius [alpha] X,Y,Zは標準配向でのカーティシャン座標
キャビティ(空洞)に分子の対称性を課しません。 SymmCavがデフォルトです。
2つのインターロッキング球[570]間の重なり行列を指定します。この指数を減らすと,追加球の数が少なくなります。デフォルト値は0.89です。
SES追加球の最小半径をオングストローム単位で指定してます。この値を減らすと,追加球の数が少なくなります。デフォルト値は0.2です。
キャビティ(空洞)面上の各球に生成されるテッセラの平均面積を指定します(Å2単位)。area=0.2がデフォルトです。この値を減らすと面の打ち切りがより細かくなります。精度と数値的安定性との間で最もよい妥協案として提案される値は,0.2〜0.4です。分子力学計算ではさらに大きくします。
小さいテッセラを切り捨てる閾値(デフォルトは 10-4 Å2です)
テッセラの短い端を切り捨てる閾値(デフォルトは5.0*10-7 Åです)。
キャビティ(空洞)を記述するファイルtesserae.off を作成します。このファイルには分子キャビティを可視化することかできるGeomViewプログラム(geomview.org)用のインプットが含まれます。
Gaussianログファイルに全内部PCMパラメータの説明と値を出力します。
平日9:30~17:30 (土曜日、日曜日、祝祭日、年末年始、夏期休暇は、休日とさせていただきます。)