Gaussianについて

Gaussianはユーザーが必要だと考えていることができるよう設計されています。標準的なインプットは全てフリーフォーマットやニーモニック形式です。インプットデータに対しては適切なデフォルトが設定されており,またアウトプットは自明なようになっています。高度なユーザー向けにデフォルトを上書きできたり,Gaussianシステムにユーザー自身で書いたコードを接続できるような仕組みが用意されています。ユーザーが計算を実施することに労力を注ぐのではなく,化学的問題へ方法を適用することや新しい方法の開発に集中できるよう,プログラム開発者らは努力を払っています。
Gaussian 03システムの技術的な機能については,後述のサブセクションに記載されてあります。

基本的なアルゴリズム

  • 任意の縮約ガウス型関数に対する1および2電子積分の計算。基底関数(basis function)はカーティシャンガウス関数,純粋角運動量関数のどちらでも使えます。様々な基底関数系(basis set)が用意されており,名前を指定するだけで使うことができます。積分は,メモリ上に保存・外部に保存・必要に応じて再計算[20,21,22,23,24,25,26,27,28]できます。計算コストは,ある種の計算に対しては高速多重極展開法(fast multipole method; FMM)や疎行列法を使うことで線形になります。
  • 原子軌道(atomic orbital; AO)積分を分子軌道基底に,”in-core”法(AO積分をメモリ上に保存)・”direct”法(積分を保存しない)・”semi-direct”法(部分的に積分をディスクに保存)・”conventional”法(AO積分を全てディスクに)で変換できます
  • 純粋DFT計算のクーロン部分を高速化するために密度フィッティングを利用します[35,36]
  • DFT XCエネルギーとその導関数を計算するために数値的求積法を用います

エネルギー

  • AMBER [37]や DREIDING [38], UFF [39,40]力場を用いた分子力学(molecular mechanics)計算
  • CNDO [41], INDO [42], MINDO/3 [43,44], MNDO [43,45,46,47,48,49,50,51,52], AM1 [43,48,49,53,54], PM3 [55,56]モデルハミルトニアンを用いた半経験的(semi-empirical)計算
  • 閉殻(RHF) [57], 非制限開殻 (UHF) [58], 制限開殻 (ROHF) [59] Hartree-Fock波動関数を用いた自己無撞着場(self-consistent field; SCF)計算
  • Møller-Plesset摂動論[60]を2次または3次[61],4次[62,63], 5次[64]まで扱った相関エネルギー計算。MP2計算ではdirect[21,65],semi-direct[23]法を用いることが可能です。これらは多量の(または少し)メモリとディスクが必要ですが効率的です。
  • 配置間相互作用(configuration interaction; CI)を用いた相関エネルギー計算。これは全2電子励起(CID),または全1および2電子励起(CISD)[66].のどちらかで取り扱います。
  • 2電子置換結合クラスター(coupled cluster)法(CCD)[67],1および2電子置換結合クラスター法(CCSD) [68,69,70,71], 1および2電子置換2次的配置間相互作用(Quadratic Configuration Interaction)法(QCISD)[72], Brueckner Doubles法(BD) [73,74]。非反復3電子寄与も計算可能です(QCISD,BDでは4電子寄与)。
  • 密度汎関数理論(Density functional theory; DFT)[75,76,77,78,79]。これには,一般的な,またはユーザー定義のHartree-FockおよびDFTの混合法も含みます。利用可能な汎関数の全リストについてはこのページを参照してください。
  • 自動化された高精度エネルギー法:G1法[80,81],G2法[82], G2(MP2)法[83],G3法[84],G3(MP2)法[85]やその他バリエーション[86];完全基底法(Complete Basis Set; CBS) [87,88,89,90,91]:CBS-4 [91,92], CBS-q [91], CBS-Q [91], CBS-Q//B3 [92,93], CBS-QCI/APNO [90],また一般化CBS外挿;MartinによるW1法(の微修正版)[94,95,96]
  • 一般的MCSCF法。これには完全活性空間(complete active space) SCF (CASSCF)[97,98,99,100]や,それにMP2補正を考慮したもの[101]を含みます。Gaussian 03.ではアルゴリズムが改良され[102],アクティブ軌道を14個まで取れるようになりました。RASSCFバリエーションもサポートされています[103,104]。
  • 完全対合一般化原子価結合(perfect-pairing General Valence Bond; GVB-PP)SCF法[105]
  • 束縛開放下でのSCF波動関数の安定性のテスト。これはHartree-Fock と DFT 法の両方で可能です [106,107].
  • 励起状態計算。これには,一電子励起配置間相互作用(CI-Singles)法[108],時間依存HFまたはDFT法[109,110,111],ZINDO半経験的手法[112,113,114,115,116,117,118,119,120],中辻とその共同研究者らによる Symmetry Adapted Cluster/Configuration Interaction (SAC-CI) 法があります。

グラジェント(勾配)および構造最適化

  • RHF [136], UHF, ROHF, GVB-PP, CASSCF [137,138], MP2 [22,23,139,140], MP3, MP4(SDQ) [141,142], CID [143], CISD, CCD, CCSD, QCISD, 密度汎関数, 励起状態CISエネルギー[108]に対する各座標のグラジェント(勾配)の解析的計算
  • 内部座標またはカーティシャン座標,もしくはそれらを混ぜた座標を用いた,極小点または鞍点に対する自動化された構造最適化[136,144,145,146,147,148]。
  • quadratic synchronous transit(2次同時トランジット)擬Newton(STQN)法[150]を用いた自動化遷移状態探索
  • 固有反応座標(intrinsic reaction coordinate; IRC)[151,152]を用いた反応経路追跡
  • エネルギー,構造最適に対する2層または3層ONIOM[153,154,155,156,157,158,159,160,161,162,163] 計算
  • 遷移状態と反応経路の同時最適化[164]
  • 状態平均(State-averaged)CASSCFを用いた円錐交差(conical intersection)最適化[165,166,167]
  • 選択した反応経路に沿った遷移構造の最大エネルギー点を探索するIRCMax計算[168,169,170,171,172,173,174,175,176]。
  • 古典的運動方程式を解析的2次導関数を用いて積算した古典トラジェクトリ計算。これには次のどちらかを用います:
    • Born Oppenheimer分子動力学(BOMD) [177,178,179,180,181,182] (総説としては[183]を参照)[184,185,186,187,188]。これは解析的グラジェントが計算できる方法であれば利用可能です。オプションとしてヘシアンの情報を用いることも可能です。
    • Atom Centered Density Matrix Propagation分子動力学モデル[188,189,190]による電子の自由度のプロパゲーション(伝播)。この方法はCar-Parrinelloアプローチ[191]とは類似点と相違点があります。詳細については,ADMPキーワードの説明を参照してください。これはAM1, HF, DFT法で使えます。

振動数および2次導関数

  • 力の定数(各座標の2次微分),分極率,超分極率,解析的双極子微分の解析的計算が,RHF, UHF, DFT, RMP2, UMP2, CASSCF 法 [25,139,192,193,194,195,196,197,198,199]とCIS法を用いた励起状態で可能です。
  • 力の定数,分極率,超分極率,双極子微分の数値的微分が,MP3, MP4(SDQ), CID, CISD, CCD, QCISD法[143,200,201,202]で計算可能です。
  • 任意の同位体,温度,圧力を用いた調和振動解析や熱化学解析
  • 内部座標での基準モード解析
  • 振動励起でのIRおよびラマン強度の決定 [193,194,196,200,203]。pre共鳴ラマン強度も計算可能です。
  • 調和振動‐回転カップリング [204,205,206,207]
  • 非調和振動と振動‐回転カップリング[204,206,207,208,209,210,211,212,213,214]。非調和振動は解析的2次微分が求められる方法で計算可能です。

分子プロパティ

  • SCF, DFT, MP2, CI, CCD, QCISD法を用いた様々な1電子プロパティが評価できます。これには,Mulliken電子密度解析[215],多極子モーメント,自然電子密度解析,静電ポテンシャル,Merz-Kollman-Singh [216,217]や, CHelp [218], CHelpG [219] スキームを用いた静電ポテンシャルによる電荷があります。
  • Hartree-Fock や DFT法に対する静的および振動数依存分極率・超分極率[220,221,222,223,224,225]
  • SCF, DFT, MP2法を用いたNMR遮蔽テンソルと分子磁化率[226,227,228,229,230,231,232,233,234,235]。磁化率はGIAO[236,237]を用いて計算されます。スピン‐スピンカップリング定数もHartree-FockおよびDFTレベルで計算できます[238,239,240,241]。
  • 振動円二色性(vbrational circular dichroism; VCD)強度[242]
  • 電子親和力とイオン化ポテンシャルに対するプロパゲータ法 [243,244,245,246,247,248,249]
  • CASSCF計算で求められた2スピン状態間の近似スピン‐軌道カップリング[250,251,252,253,254]
  • 電子円二色性[255,256,257,258,259](総説については[260]を参照)
  • GIAOによる旋光度(optical rotation)と光回転散乱(optical rotary dispersion)
  • 超微細スペクトル: gテンソル,核電子4重極定数,回転定数,4次遠心力ひずみ項,電子スピン回転項,核スピン回転項,二極性超微細項,Fermi定数項 [272,273,274,275,276,277,278,279]。インプットは,H. M. Pickettのプログラム[280]で広く使われている形式で用意します

溶媒和モデル

これらのモデルは全て溶液内の系をモデリングするために自己無撞着反応場(self-consistent reaction field; SCRF)法を用いています。

  • Onsagerモデル(双極子,球状) [281,282,283,284]。これではHFおよびDFTレベルでの解析的1次および2次導関数,またはMP2, MP3, MP4(SDQ), CI, CCD, QCISDレベルでのシングルポイント(一点)エネルギーが計算可能です。
  • Tomasiとその共同研究者らによる分極連続体モデル(PCM)(重なり合った球)[285,286,287,288,289,290,291,292,293,294,295,296,297,298,299,300,301,302,303]。これは解析的HF, DFT, MP2, MP3, MP4(SDQ), QCISD, CCD, CCSD, CID, CISD エネルギーとHF, DFTグラジェント・振動数計算で利用できます。
    • 溶媒効果は励起状態に対しても計算できます[298,299,300]
    • 溶媒存在下で多くのプロパティが計算できます[304,305,306]。
  • IPCM (静的等密度面;static isodensity surface)モデル[307]でHF,DFTレベルのエネルギーが計算可能です。
  • SCI-PCM(自己無撞着等密度面; self-consistent isodensity surface) モデル[307]でHF,DFTレベルの解析的エネルギー,グラジェント,数値的振動数が計算可能です。
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