非標準ルートについて

Description

オプションやリンクを組み合わせて,標準的なルートを大幅に変える必要がある場合,関連オプションを含めたオーバーレイとリンクの完全なシークエンス(一連の手順)を読み込ませることが可能です。この場合,ジョブタイプインプットセクションは,次の行で始めます:

# NonStd

この後,必要なオーバーレイに関する行を,オーバーレイごとに指定します。実行順に,オーバーレイの番号,スラッシュ,必要なオプション,スラッシュ,実行するリンクのリストを指定し,最後にセミコロンを指定します:

Ov/Opt=val,Opt=val,.../Link,Link,...;

例えば,

7/5=3,7=4/2,3,16;     

のように指定すると,Link 702, 703, 716についてこの順に実行します。またこれらのリンクでは,オプション5は3に,オプション7は4となります。全てのオプションをデフォルト値のままにするには,以下のようにします:

7//2,3,16;

さらにルート指定機能には,ジャンプ番号というものもあります。これは,リンクリストの最後・セミコロンの直前で,括弧で指定します。この機能は,そのオーバーレイを完了した後,実行するオーバーレイ行を指定するものです。省略された場合,デフォルト値は+0となり,これはプログラムにリストの次の行を実行するよう指定したことになります(つまり飛ばさない)。もしジャンプ番号を-4にした場合(例えば,次のように指定します),

7//2,3,16(-4);

ルート行を4行戻したところのオーバレイから続きを実行します(その行を続けません)。

この機能を用いると ルートにループを組み込むことができ,これは最適化実行に有用です。また,一連のルーチンの中でのプログラムの引数でジャンプ番号を上書きすることもできます。これを用いると,構造最適化中に最適化が完了するまでオーバーレイ行のシークエンスをループさせる(ループの最後で次に実行する行を指定)ことができます。

非標準ルートは, 一般的にスクラッチから作成するのではなく,必要となるルートによく似た標準ルートによるシークエンスを出力し,それを修正して構築します。これを行うためは,testrtユーティリティを用いるのが最も簡単です。

Examples

シンプルなルート 標準ルート

# RHF/STO-3G

は,次のような非標準ルートを生成します:

1/29=10000/1;
2/10=1,12=2/2;
3/11=1,25=14,30=1/1,2,3,11,14;
4/7=1/1;
5//2;
6/7=2,8=2,9=2,10=2,19=1,28=1/1;
99/5=1,9=1/99;

結果としてプログラムは下図のようなシークエンスで実行されます:

プログラム実行における基本シークエンスは,Link 1(ルートセクションの読込と解釈)が実際の計算より前もって行われ,Link 9999(アーカイブエントリ生成)が最後に行われること以外は,他のab initioプログラムで見られるものと同じです。AM1一点計算も同様ですが,Link 301(基底関数セットアップ)のみオーバーレイ3に含まれ,Link 402(MOPACプログラム由来のコード)がLink 502に置き換わる点が異なります。同様に,MP4一点計算では,積分変換(Link 801, 802)とMP計算(Link 901, 909, 910, 911, 912, 913)が,電子密度解析の後,Link 9999の前に加わります。Link 9999は完了したジョブステップを自動的に終了させます。

ループを含むルート 標準ルート

# RHF/STO-3G Opt

は以下のような非標準ルートを生成します:

1/10=7,29=10000/1,3;
2/10=1,12=2/2;
3/11=1,25=14,30=1/1,2,3,11,14;
4/7=1/1;
5//2;
6/7=2,8=2,9=2,10=2,28=1/1;
7/25=1,27=1,29=1/1,2,3,16;
1/10=7/3(1);
99//99;
2//2;
3/11=1,25=14,30=1/1,2,3,11,14;
4/5=5,7=1,16=2/1;
5//2;
7/27=1/1,2,3,16;
1//3(-5);
3/11=1,30=1,39=1/1,3;
6/7=2,8=2,9=2,10=2,28=1/1;
99/9=1/99;

このプログラム実行のシークエンスは下図のようになります:

このルートでは, 入り組んだ構造になっています:

  • 最適化の最初のステップは,後のステップとは別に処理されます。これは,一度しか実行する必要がない部分(初期Z-matrixの読込や初期軌道の生成等)があるためです。
  • 構造に関してループします。最適化プログラム(このケースでは,Bernyの最適化法 Link 103)で,他の幾何構造が必要であるか,あるいは構造を最適化するかを判断します。
  • 収束した幾何構造が得られたら,グラジェントを計算し,最適化された構造を評価し,終了します。
  • 電子密度解析と軌道出力は最初と最後でのみ行われます。 比較的興味のない中間幾何構造では行いません。

最初のステップでは,2つの基本シークエンス(積分,推測,SCF,積分導関数)で取り扱われます。最初のシークエンスでは,Link 101(初期構造読込),Link 103(初期設定),およびLink 401に渡すオプション(初期推測生成を行うように)を設定します。次の(2番目の)シークエンスでは,最適化の過程でLink 103で生成される構造を用い,またLink 401に渡すオプション(次の初期推測として前の構造からの波動関数を取り出して用いるように)を設定します。

ルート8行目では前方向へのジャンプが指定されており,これはLink 103が正常に終了したら(他に特別な処理をせず),次の行(Link 9999)をスキップすることになります。通常,この2番目のLink 103では,初期グラジェントを調べ,新しい構造を選びます。次に実行されるリンクはLink 202(新しいZ-matrixの処理)で,その後2番目のエネルギー+グラジェントシークエンスの残りの部分(つまり,メイン最適化ループ)を実行します。2番目のLink 103で構造が収束したことが分かったら,ジャンプを抑制するようなフラグを立ててリンクを終了します。これにより,次に行われるのはLink 9999の行であり,つまりジョブを完了させることになります。

10-15行は,メイン最適化ループです。ここでは,最適化での2番目やその後の点における積分,波動関数,グラジェントを評価します。ループはLink 103で終わります。構造がまだ収束していなかったら, Link 103は新しい構造を選び,正常に終わります。その結果,15行目での後方向へのジャンプが実行され,次に処理される行は10行目,つまり新たなサイクルを始めることになります。Link 103で構造が収束したことが分かったのであれば,ジャンプを抑制するようなフラグを立ててリンクを終了します。その結果,結びの行(16-18)が処理されます。

結びの行では, Link 601で用いるため最終構造での多極子積分を生成します。Link 601では最終多極子モーメントを出力し,また必要に応じて軌道・電子密度解析も出力されます。最後に,Link 9999でアーカイブエントリを生成し,ジョブステップを終了させます。

AM1での最適化のルートも同様ですが, オーバーレイ3での実施部分からLink 301が除外され,Link 402がLink 501に置換され,オーバーレイ7が除外される(Link 402のMOPACコード内でグラジェント情報を求めるため)ことが異なります。MPやCIでの最適化は,積分および相関オーバーレイ(8および9)とpost-SCFグラジェントオーバーレイ(11および10,この順に)がオーバーレイ7の前に加わります。これと同様の2段階ルート構造は,数値微分による振動数または分極率の計算でも用いられます。

Opt=Restartでのルートは,基本的に元の最適化ルートのメインループだけとなり,最初のステップに特有の行が除かれます。2番目のLink 103はそのままで,実際の再スタート処理を行います。

非標準ルート関連キーワード

ExtraLinks

標準ルートの他に外部リンクを含めることができるようになります。オプションとしてリンク名を指定します。外部リンクは,そのオーバーレイに出現する全ての標準リンクが実行された後に実行されます。例えば, ExtraLinks=(L901)と指定すると,Link 901が(オーバーレイ9での他のリンクをとにかく実行した後)全てのオーバーレイ9に含まれるようになります。

ExtraOverlays

ルートのカスタマイズメカニズムを用いることができるようになります。この機能は,ExtraLinksを用いる方法と完全な新非標準ルートを読み込む方法のほぼ中間にあたります。このオプションを指定した場合,ルートセクションの後に空行を入れ,その後にインプット行を用意します。インプット行は上記のようなオーバーレイから構成されます。さらに,タイトルセクションとオーバーレイ最終行の間にも空行を入れます。プログラムにより,標準ルートの構文解析が行われ,最終オーバーレイ(Link 99行:標準ルートで 99//99 とある行)直前のルートに追加オーバーレイを加えます。この機能は,与えられたオーバーレイに対してすでにたまたま存在していたリンクを単に受け入れるのではなく,追加したリンクに新たにオプションを与えることができるため,ExtraLinksキーワードよりも大いに柔軟です。

Skip

このキーワードを用いると,構文解析によって生成された標準ルートのあるオーバーレイ行についてスキップさせることが可能になります。以下のような2つの方法が用いられます:

Skip=Ovn
オーバーレイ nが最初に現れるまで,オーバーレイを全てスキップします。

Skip=M
最初のMオーバーレイをスキップします。

Use

計算のある段階に,代わりのアルゴリズムを用いることができるようになります。このオプションほとんどはデバッグ用です。詳細については,Gaussian 03 Programmer’s Referenceで述べられています。

また, %KJob Link 0 コマンドの説明も参照してください。

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