このキーワードを指定すると,反応経路を追跡します[151,152]。遷移状態の構造を初期構造とし(分子指定セクションで入力),そこから反応経路を一方向あるいは両方向に向かって探索します。デフォルトでは正(forward)方向を,遷移ベクトルが位相(phase)の最大成分が正になるような方向とします。これはPhaseオプションを用いて指定できます。
反応経路に沿って各点で構造を最適化します。その際,隣接する2点間の反応経路が円弧になるように,つまり弧の終点でのグラジェント(勾配)が経路に対する接線になるようにして決められます。反応経路は,質量加重(mass-weighted)内部座標,カーティシャン座標,内部座標のどれかで計算できます。デフォルトでは,質量加重座標で正方向に対し6点,逆方向に対し6点,それぞれ0.1 amu1/2 bohrステップでIRC計算を行います。
IRC計算を実行するためには初期力の定数が必要となります。初期力の定数の生成方法には何通りかあります。通常用いられる方法は,あらかじめ振動数計算を行い(用いる最適化構造が遷移状態であるかもその計算で確認しておきます),その結果をチェックポイントファイルに保存しておき,そして実際のIRC計算でのルートセクションにIRC=RCFCと指定する方法です。その他には,入力ストリームに力の定数を用意する方法 (IRC=FCCards),IRC計算の初回に力の定数を計算する方法 (IRC=CalcFC)があります。必ず,RCFC, CalcFC, CalcAll, FCCards のうちいずれかを指定しなければなりません。
IRC計算では,分子指定にZ-matrixあるいはカーティシャン座標が使えます。その座標を用いて反応経路を探索します。
IRCジョブで同位体を指定するためには,標準的な方法を用います。
IRC計算は今のところアーカイブ出力されません。
遷移ベクトルに対する位相を,遷移ベクトルに沿って「正に(forward)」動いたときに,指定した内部座標(4原子まで指定できます)が増加することに対応するように指定します。2原子指定した場合には,座標を2原子間の結合とします。3原子指定した場合には結合角,4原子指定した場合には2面角を座標とします。
正方向の反応経路だけを探索します。
逆方向の反応経路だけを探索します。
探索するベクトルを読み込みます。フォーマットはZ-matrix (FFF(I), I=1,NVAR)で,(8F10.6)で読み込みます。
検討する反応経路上の(両方向探索するときには各方向に対する)点の個数を指定します。デフォルトは6です。
反応経路上のステップサイズを0.01 amu1/2-Bohr単位で指定します。デフォルトは10です。
各点での構造最適化の最大ステップ数を指定します。デフォルトは20です。
質量加重(mass-weighted)内部(Z-matrix)座標上で反応経路を探索します(質量加重カーティシャン座標上での探索も同じことになります)。MWはMassWeightedと同義です。これはデフォルトです。
質量加重せずに,内部(Z-matrix)座標で反応経路を探索します。
質量加重せずに,カーティシャン座標で反応経路を探索します。
振動数計算で求められたカーティシャン座標での力の定数をチェックポイントファイルから読み込みます。ReadCartesianFCはRCFCと同義です。
最初に力の定数を計算します。
全ての点で力の定数を計算します。
カーティシャンでの力と力の定数を,入力ストリームで分子指定セクションの後に指定して読み込ませます。このオプションは,内部FCListコマンドを使ってQuantum Chemistry Archiveから取り出した力の定数を読み込むために使います。このインプットのフォーマットは次の通りです:
エネルギー (format D24.16)
カーティシャンでの力 (lines of format 6F12.8)
力の定数 (lines of format 6F12.8)
力の定数は下三角形式((F(J,I),J=1,I),I=1,NAt3)であり,ここでNAt3 はカーティシャン座標の数です。FCCardsとReadIsotopesを両方指定する場合には,原子の質量はこれら3つ(エネルギー,カーティシャングラジェント,カーティシャン力の定数)より前で入力します。
反応経路上の各点における最適化で用いる収束判定条件を厳しくします。このオプションは,非常に小さなステップ幅を用いるときには必要なります。
完了しなかったIRC計算を再スタートさせる際に指定します。もしくは,完了はしたがさらに点を指定してIRC計算を再スタートするときに指定します。
HF, 全DFT法, CIS, MP2, MP3, MP4(SDQ), CID, CISD, CCD, CCSD, QCISD, CASSCF, 全半経験的手法
IRC計算の各ステップにおける出力は,構造最適化のものと非常によく似ています。各ステップの出力部分は,つぎのバナー行で始まります(構造最適化計算であれば,”IRC”のところが”Grad”になったものに対応します)。
IRC-IRC-IRC-IRC-IRC-IRC-IRC-IRC-IRC-IRC-IRC-IRC-IRC-IRC-IRC-IRC-IRC
各点での最適化計算が完了すると,その最適化構造が表示されます:
Optimization completed.
-- Optimized point # 1 Found.
----------------------------
! Optimized Parameters !
! (Angstroms and Degrees) !
-------------------- --------------------
! Name Value Derivative information (Atomic Units)
!
--------------------------------------------------------------------
! CH1 1.3448 -DE/DX = 0.0143 !
! HH 0.8632 -DE/DX = -0.0047 !
! CH2 1.0827 -DE/DX = 0.0008 !
! HCH 106.207 -DE/DX = -0.0082 !
--------------------------------------------------------------------
RADIUS OF CURVATURE = 0.39205
NET REACTION COORDINATE UP TO THIS POINT = 0.09946
IRC計算が完了すると,計算結果のまとめを出力します:
--------------------------------------------------------------------
SUMMARY OF REACTION PATH FOLLOWING:
(Int. Coord: Angstroms, and Degrees)
--------------------------------------------------------------------
ENERGY RX.COORD CH1 HH CH2
1 -40.16837 -0.49759 1.54387 0.73360 1.08145
2 -40.16542 -0.39764 1.49968 0.74371 1.08164
3 -40.16235 -0.29820 1.45133 0.76567 1.08193
4 -40.15914 -0.19914 1.39854 0.80711 1.08232
5 -40.15640 -0.09946 1.34481 0.86318 1.08274
6 -40.15552 0.00000 1.30200 0.91500 1.08300
7 -40.15649 0.09990 1.26036 0.96924 1.08330
8 -40.15999 0.19985 1.21116 1.03788 1.08349
9 -40.16486 0.29975 1.16418 1.10833 1.08353
10 -40.16957 0.39938 1.12245 1.18068 1.08328
11 -40.17324 0.49831 1.09260 1.25158 1.08276
--------------------------------------------------------------------
TOTAL NUMBER OF GRADIENT CALCULATIONS: 28
TOTAL NUMBER OF POINTS: 10
AVERAGE NUMBER OF GRADIENT CALCULATIONS: 2.80000
初期構造は表の中央に表示されます(このケースでは,6番目です)。反応座標の値が0.00000になっているところを探せば,すぐに見つけられるでしょう。
平日9:30~17:30 (土曜日、日曜日、祝祭日、年末年始、夏期休暇は、休日とさせていただきます。)