GVB

Description

この方法キーワードを指定すると, 完全対合一般化原子価結合(perfect-pairing General Valence Bond; GVB-PP)計算を行います。GVBにはパラメータが一つ必要であり,分割する完全対合ペアの数を指定します。例えば,GVB(4)のようにします。このパラメータはNPairで指定することもできます。GVBペアに対する自然軌道は初期推測行列式の占有および仮想軌道から取られます(詳細は後述)。

GVB計算用のインプット

通常, GVB-PP計算のインプットにおいて最も困難なことは,初期推測を指定することです(Link 401)。この推測ではよく,軌道を入れ替えて,高スピン,完全対合(perfect-pairing),閉殻軌道を正しく識別できるようにしたり,またSCF対称性をできる限り落として,通常GVB-PPでの最低エネルギー解を表現するような局在化軌道として考慮したりすることが行われます。

GVBプログラムは,各GVBペアで軌道の数を読み込みます(Format 40I2)。読み込まれる行数は決まっており(通常1),そのため最後に空行を入れる必要はありません。スピン多重度 S, N GVBペア,各ペアでn1, …, nN 軌道をもつ分子では,初期推測での軌道にはGVBプログラムによって以下のような方式が用いられます:

  • 初期推測中,S-1最高占有軌道。これはROHF計算では一重占有であり,高スピン軌道となります。
  • 次に低いN占有軌道。 これはROHF計算では二重占有であり,GVBペアでは第一自然軌道となります。
  • 推測中の残りの占有軌道は閉殻のままです。
  • 最低 n1-1仮想軌道は,第一GVBペアの自然軌道2からn1 になり,次のn2-1 軌道はペア2に等になります。GVB-PPスキームではある軌道を1つのGVBペア以上で共有することはできません。
  • 初期推測でのその他残りの(仮想)軌道は,GVB計算では仮想軌道になります。

推測占有軌道(第一自然軌道として用いられます)が正しい推測仮想軌道(対応する高次の自然軌道になります)とよく適合することを確かにするために,一般的にGuess=Alterが必要となります。多くの場合次のような手順が有用となります:Guess=(Local,Only)で始め計算を行い,入れ替えが必要かどうか軌道を調べ,そしてGuess=(Local,Alter)GVB(NPair=N,Freeze)で計算を行い,高次の自然軌道がより適切なものになるようにします。最後にGuess=Readで完全な計算を行い,全軌道をGVBで最適化します。軌道の対称性が崩れるという困惑や懸念がある場合には,Symm=NoSCFで,始めはGuess=Localで計算を行います。実際に,(本当の専門家を除いて)このアプローチは広く推奨されます。

ペアの軌道数が負である場合には,そのペアに用いられるCIの根とペアの初期GVB係数が,フォーマット(I2,5D15.8)で読み込まれます。これは 1Σや1Δ 状態が表式 x2± y2のGVBペアで表現されるような場合に有用です。

Options

NPair

完全対合(perfect-pairing)ペアの数を指定します。GVB(N) はGVB(NPair=N)と同じです。NPair=0 とすることもでき,この場合には閉殻またはスピン制限SCF計算を行います。

InHam=N

Nハミルトニアン(Fock演算子,カップル係数の組)を読み込みます。このオプションは完全対合(perfect-pairing)ペアと組み合わせることもできます。各ハミルトニアンは次のような記法を用いて読み込まれます(括弧内はフォーマット):

     	NO			# of orbitals in current Hamiltonian (I5)  <そのハミルトニアンの軌道の数 (I5)>
     	Fj			Occup. # (1.0=closed-shell) (D15.8)  <占有数(1.0=閉殻)(D15.8)>
     	(AJ(I), I =1,NHam)	J coefficients (5D15.8)  <J 係数 (5D15.8)>
     	(AK(I), I =1,NHam)	K coefficients (5D15.8)  <K 係数 (5D15.8)>

同じAJAK係数をもつ幾つかの軌道を組み合わせて1つの”shell”にすることは,現在ではサポートされていません。したがってNOは常に1です。ham506ユーティリティを用いると,原子の計算で球状平均するという一般ケースのために,平均化ハミルトニアンを生成することができます。このハミルトニアンの係数についてはBobrowiczと Goddardが述べています[105]。GVB波動関数の定性的な説明に関する良いイントロダクションは,GoddardとHarding による総説記事[502]にあります。

OSS

2電子,2直交軌道開殻一重項で計算を行います。このオプションは完全対合(perfect-pairing)ペアと組み合わせることもできます。OpenShellSingletOSSと同義です。

Freeze

閉殻および開殻軌道とGVBペアの第一自然軌道を固定します。これにより2番目やそれより高次の自然軌道のみを変化させることができます。このオプションは困難な計算を始めるときに有用です。

Availability

エネルギー,解析的グラジェント(勾配),数値的振動数

Examples

次の例は,一重項メチレンのGVB(3/6) 計算です:

# GVB(3)/6-31G(d) Guess=(Local,LowSym,Alter) Pop=Full Test

GVB(3) on CH2

molecule specification  <分子指定>

 1 4 0 2 3 9     Guess=LowSym input  <Guess=LowSymインプット>
2,3     		Guess=Alter input  <Guess=Alterインプット>

 2 2 2     	GVB input  <GVBインプット>

各3つの原子価電子ペアをGVBペアに分割します。 ここでは予備的な Guess=Only 計算を行って,局在化軌道と軌道の入れ替えが必要かどうかを決めてあります。

完全対合(perfect-pairing) GVB法では,対の相関は考慮できますが,対の相関は入りません。結果として,GVB電子ペアは局在化する傾向があります。この一重項メチレンのケースでは,炭素の孤立電子対はHartree-Fockレベルですでに局在化しています。C-H結合に対するカノニカルHartree-Fock軌道は(C-H1 + C-H2)と (C-H1 – C-H2) の線形結合(それぞれA1,B2対称性)に非局在化します。個々の結合対を生成するために推測軌道を局在化させるためには,これら2つの既約表現を結合させる必要があります。同様に,GVB計算自身は,軌道に分子の完全対称性を課すようにすることはできず,非局在化してしまいます。A1既約表現と B2既約表現,A2とB1既約表現を結合させると,個々の軌道にはCs対称性を課して計算することになり,各結合にGVBペアを分けることができます。結果として得られる各結合のペアは等価なので,波動関数および電子密度全体としてはC2v対称性を依然保持した結果となります。

Guess=LowSymキーワードを指定すると,分子点群の既約表現をGVB計算で用いる対称性情報とあわせます。結合する既約表現の番号からなるインプット(1行)を用意します。ここで,既約表現の番号は,出力ファイル中の既約表現の順番(標準配向のすぐあとに表示されます)に対応します。

There are    4 symmetry adapted basis functions of A1  symmetry.
There are    0 symmetry adapted basis functions of A2  symmetry.
There are    1 symmetry adapted basis functions of B1  symmetry.
There are    2 symmetry adapted basis functions of B2  symmetry.

したがってC2v対称性では,順番はA1, A2, B1, B2であり,Guess=LowSymインプットには1から4で指定します。組み合わせる既約表現を分けるにはゼロを用い,リストの終わりを示すには9を用います。よって,A1とB2,A2とB1を結合させて,SCF対称性をCsに落とすには,次のようなインプットになります:

1 4 0 2 3 9

このインプットは必ず一行なので,セクションの終わりを示す空行は必要ありません。

最初のジョブステップで初期推測軌道を局在化して生成された軌道の順番は,占有軌道に対しては C-1s C-H1 C-H2 C-2s ,最低仮想軌道に対してはC-2p C-H1* C-H2*となります。このケースで,軌道を入れ替えなかったとすると, C-2s 孤立電子対は正しく非占有p軌道とペアとなりますが,次の占有C-H2軌道は,次に高い仮想C-H1*軌道とペアになってしまいます。よって2つの結合占有軌道または2つの結合仮想軌道を適切な軌道にあわせるために入れ替える必要があるでしょう。

最後に, GVBプログラムに対するインプット(1行)を指定します。ここでは,3つのGVBペアごとに2つの自然軌道があるとしています。

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