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Gaussian入門メールニュース:
Gaussian計算エラー対処・虎の巻

計算がエラーで止まってしまった!でもどうすればいいかわからない。
結果が何かおかしい。どこがいけなかったのだろうか?
といった疑問の解決に少しでもお力添えするべく、よくあるエラーを中心に、直接的な対処法から簡単な理論的背景まで含めて解説いたします。

第9回配信: 分子指定に関するエラー

 今回の配信では、分子指定に関連するエラーについて紹介いたします。もし計算がOverlay 1もしくはOverlay 2ですぐ止まってしまった場合、メモリ不足でなければ、その原因のほとんどはインプットで不適切な分子構造を与えたことによるものです。特にONIOM計算では分子構造の指定方法に制約が多いため、誤った方法で指定してしまいがちですので、注意が必要です。

(9-1) 分子構造の指定方法に関するエラー

 まず、分子構造の指定でありがちなエラーが、下のようなものです。

一見、インプットのどこにも誤った記述はないように見えるのに、どうしたのでしょう? エラーメッセージを読み解くと、「ZSymbの読み込み中にファイルの末尾に到達した」とあり、これは、最後の空行をインプットの末尾に入れ忘れたことが原因であることを意味します。すなわち、原子核座標の読み込みは、空行によって完了されなければならないのに、それより前にファイルの末尾が来てしまったことによるエラーです。第3回配信でも述べましたが、このように最後の空行はとかく忘れがちですので、十分注意して下さい
 他に、分子構造指定でありがちな間違いとしては、

(1) 異なる原子核の座標が近すぎる、あるいは重なっている
(2) 以下のような不適切な結合角が指定されている
・180度以上の値
・負の値
・0に近すぎる値(0.0003以下)
(3) 座標に整数値が指定されている
(4) 未定義の構造パラメータが用いられている

などが挙げられます。
 以下で、幾つかの具体例を見てみましょう。

上記は、原子核座標を整数値で与えてしまったことによるエラーです。エラーメッセージに「WANTED A FLOATING POINT NUMBER AS INPUT.」とありますように、全ての座標は必ず実数値で与えねばなりません
 またGaussianでは、座標を一旦変数で与え、後からその変数に値を代入することで分子構造を指定することができます(この方法は、例えば角度を少しずつ変えて計算する時などに便利)が、この時、座標変数に値を代入することを忘れると、「未定義の構造パラメータ」と見做され、エラーとなります。以下の例では、「分子座標指定の4行目(card 4)の2番目の角度(angle beta)に未定義の記号がある」というエラーメッセージが出力されており、実際、変数「Dhcoh」に値を代入し忘れていることがわかります。

 その他、エラーで停止しないものの、ユーザの意図と異なる分子構造で計算が走っているということもよく起こります。無意味な計算を防ぐためにも、計算開始直後には対称性や分子構造の確認を行うべきです。特に、Gaussianが認識した点群対称性が本当にユーザの意図通りになっているか、対称性から考えて同じ絶対値やゼロであるべき構造パラメータが本当にそうなっているかなどは、必ずチェックしましょう。
 これらのチェック項目は、アウトプットファイルで「Stand」を検索すれば、容易に見つけることができます。下記はホルムアルデヒドの計算アウトプットの例ですが、この計算では分子をきちんとC2v対称で扱っていることがわかります。

(9-2) ONIOM計算における分子構造の指定方法に関するエラー

 ONIOM計算においてZ-matrix形式で分子構造を与える場合、4行目以降の各行に整数値0の指定が必要であり、これを忘れるとエラーとなります

逆に、Z-matrixの1~3行目に0を付けるとエラーとなります。ONIOMのインプットで特に何もLayerを指定しない場合はHigh Layerとして扱われますから、このことは裏を返せば、Z-matrix形式の最初の3原子は常にONIOMのHigh Layerとして扱われ、Low LayerやMiddle Layerに指定することはできないということを意味します。したがって、Z-matrixを用いたONIOM計算を行う場合には、原子の指定の順番に注意して下さい。

 一方、Cartesian座標形式でのONIOM計算では、どの順番でどの原子をLow Layerに指定しても問題ありません。ただしZ-matrix形式の時と違い、Cartesian座標の場合は、各行の座標指定の後に0を指定するとエラーとなりますので、混乱しないように注意して下さい。

(9-3) 系の電荷とスピン多重度の不整合

 第2回配信でも紹介しましたが、系の電荷とスピン多重度の組み合わせに不整合があると、エラーで止まります。

 ここでも注意すべきなのはONIOM計算の場合で、Real系(全体系)・Model系(部分系)の両方において系の電荷とスピン多重度は整合性がとれていなければなりません。ONIOM計算のインプットでは、Real系(精度Low level)、Model系(High level)、Model系(Low level)の順序で電荷とスピン多重度のペアを3組続けて指定する必要がありますが、1組だけ指定すると、全ての系で同じ電荷とスピン多重度が適用されます
 以下の計算例では、系全体の電荷とスピン多重度は整合性がとれていますが(言い換えればONIOM計算でなければ問題ありませんが)、Model系(部分系)で不整合が起こるため、エラーとなります。

したがって以下のように、Real系、Model系それぞれに対して正しく電荷とスピン多重度を指定してやらねばなりません。

 今回の内容は以上です。次回(第10回配信)では、「基底関数指定に関するエラー」を解説いたします。

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