ホーム > HPC・DL・AI > 計算化学 > 量子化学計算学習コンテンツ > 第5章 構造最適化と振動解析サンプルページ

第5章 構造最適化と振動解析
サンプルページ



次に、実際の計算における構造最適化プロセスの原理について簡単にお話しします。
構造最適化は数回~数百回の最適化ステップを経て行われます。まずユーザーが適当な初期構造を与えます。次に、その構造で各原子上に働く力を計算し、その力のベクトルの方向に各原子を少し動かしてやります。すると、エネルギーが少し下がり、各原子上の力も少し小さくなります。そしてまたその力の方向に各原子を動かしてやると、今度は最適化構造を超えて逆向きの力が働くということも起こります。そのような力の方向に各原子を動かすというプロセスを繰り返していくと、少しずつ力の大きさが小さくなっていき、最終的に全ての原子上の力が0となります。この時の構造が最適化構造となります。数学的な表現を用いるならば、エネルギー曲面において勾配が0である点が最適化構造に相当します。
まずは初期構造への依存性についてです。
エネルギー曲面に極小点が2個以上ある場合、最初に置いたボールの位置が違えば、ボールが落ちる先も違ってくることは容易に想像できると思います。同様に、計算対象分子に安定構造が2種類以上存在する場合、初期構造によって最適化構造も変わり得ることになります。
例えば、エタン誘導体の最安定配座を構造最適化によって求める場合を考えてみましょう。一般に、この分子の最安定配座は、RとR’がアンチの位置にある配座となります。ところがもしこの初期構造の回転角を60度以下に設定すると、最安定構造のアンチ配座ではなく、準安定構造であるゴーシュ配座に収束してしまいます。つまり、アンチ配座の構造を得るためには、初期構造の回転角を120度以上に設定する必要があることがわかります。
構造最適化の過程は、View Windowの白い帯の値を変化させることで確認できます。デフォルトでは、最適化構造が表示されていますが、小さい上下の三角印をクリックすると、隣の値が変化していき、構造最適化の各ステップでの構造を確認することができます。
もしくは、見たい最適化ステップの値をキーボードから直接入力することもできます。
計算が終わったら、GaussViewのResultsメニューからVibrationsを選択します。新たなウィンドウが現れたら、一番上の行に表示されている、第1振動モードの振動数を確認して下さい。振動数は昇順にソートされていますので、もしこの第1振動モードの振動数が正の値であれば、求まった最適化構造は安定構造であることが証明されたことになります。
一般に、虚振動を持つ停留点は、虚振動の方向についてエネルギー極大なります。このことは、虚振動を含む構造で、虚振動の方向に各原子を変位させると、エネルギーが下がり、構造再最適化ができることを意味しています。
例えば、アンモニアの平面最適化構造は、二面角が変化する方向に虚振動ベクトルを持ちます。したがって、アンモニアの平面最適化構造から、虚振動の方向である二面角をほんの少しでも変化させてやると、アンモニアは安定構造である三角錐型に向かって再最適化されていきます。

お問い合わせ

Contact

お問い合わせ

お客様に最適な製品をご提案いたします。まずは気軽にお問い合わせ下さい。
075-353-0120

平日9:30~17:30 (土曜日、日曜日、祝祭日、年末年始、夏期休暇は、休日とさせていただきます。)