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HPCシステムズがビルドしたQuantum ESPRESSOの特徴

Quantum ESPRESSO を研究の基礎として安心してご活用いただけるように、豊富な機能を盛り込んでコンパイルし、Quantum ESPRESSO規定の動作テストと速度検証を行って問題ないことを確認した上で、その報告書も同梱して納品しております。

セットアップ可能なQuantum ESPRESSOの概要

2024年2月29日時点で最新の、弊社検証済みでセットアップ可能なQuantum ESPRESSOは、弊社で出荷するRHEL / AlmaLinux 8.7搭載計算機向けにインテルoneAPI Base & HPC Toolkitでビルドを行った、Quantum ESPRESSO 7.2 CPU版です。

組み込み済みのソフトウェア/機能

Quantum ESPRESSOのビルド時に、利用可能な関連機能を可能な限り多く盛り込むようにするべく、次のソフトウェアを組み込み済みです。

ソフトウェア名称 概要 バージョン
Quantum ESPRESSO Quantum ESPRESSO本体 7.2
D3Q anharmonic force constants qe7.2-1.10
EPW calculation of the electron-phonon coefficients, carrier transport, phonon-limited superconductivity and phonon-assisted optical processes 5.7
Wannier90 maximally localized Wannier functions 3.1.0
WanT quantum transport properties with Wannier functions 2.6.1
QE-GIPAW(Gauge-Independent Projector Augmented Waves) NMR chemical shifts and EPR g-tensor 7.2
YAMBO electronic excitations within Many-Body Perturbation Theory, GW and Bethe-Salpeter equation 4.5.2
Environ Quantum ESPRESSO with the self-consistent continuum solvation (SCCS) model 3.0

 

テスト項目とテスト結果

  1. Test-suite
    1. CP、PW、PH、HP、TDDFPT、KCW、all_currentsはシリアル、パラレル共にテストをパスしました。all_currentsは配布されているファイルのままではテストをパス出来ませんが、Quantum ESPRESSOのデベロッパーページにあった修正を適用することで、テストをパスしました。
    2. EPWはシリアルではテストをパスしましたが、パラレルでは102個のテストのうち、1個が数値ずれでエラーとなりました。シリアルでパスしている事から、コンパイラなどの問題ではなく、ソースに起因するものと考えられます。
  2. ENVIRON/tests
    1. Environ版のPWは、Environ 3.0附属のtestsを使用して試験を行ないました。
    2. シリアルは全てパスしました。
    3. パラレルでは、71個のテストのうち、1個が数値ずれでエラーとなりました。シリアルでパスしている事から、コンパイラなどの問題ではなく、ソースに起因するものと考えられます。
  3. Examples
    1. examplesフォルダのインプットを利用して、動作を確認しました。
    2. Exampleにはバグなどが多数存在します。修正出来るものは修正してはありますが、一部、明らかにバグによって動作不良するままのものがあります。配布されているファイルの不備があるため、COUPLEとFFTXlibは試験を行なっていません。LAXlib、UtilXlib、XClibはテストを実行し、動作する事を確認してあります。
  4. ノード間並列
    1. InfiniBand接続されたノードを使用して、ノード間並列で問題なく動作する事をx、pw.x、ph.x、hp.x、gipaw.xで確認しました。
  5. 速度検証
    1. Quantum ESPRESSO公式のベンチマーク用インプットを使用して、速度検証を実行しました。Quantum ESPRESSO 7.0での結果と比較して、cp.x、pw.x共に、計算速度に違いが無いことを確認しました。また、ph.xについてはQuantum ESPRESSO 7.1と比較してパラレルでのスケーラビリティが大きく改善されていることを確認しました(96並列で7.1の半分程度の経過時間で計算が完了しました)。

詳細につきましては、納品物に同梱いたしますバイナリ仕様書(後述)をご参照ください。

ビルド時に発覚した問題とそれに対する試行錯誤・対処

下記1件の影響大の問題を察知し、出荷前に対処を完了しました。

  1. メモリ使用量が肥大化する問題【対処済】
    【問題概要】通常のビルド作業を行ってExamplesの動作確認を行っていたところ、一部のExampleにてメモリ使用量が異常に大きくなっている現象に気づきました。これはTest-suiteのみを試験していたのでは見つからなかったものと考えられます。
    【影響度:大】メモリを数十GB単位で過剰に使用してしまうため、完遂できるはずの規模の計算がメモリ不足で失敗してしまいます。
    【原因究明】条件切り分けのため、過去のバージョンのQuantum ESPRESSOを今回の開発環境でビルドし動作を確認したところ、同様に発現したため、開発環境に原因があると考えられました。そこで、バージョンの近いものから開発環境(oneAPI Base & HPC Toolkit)のバージョンを3通り変えてビルドしなおし、動作確認を行った結果、1バージョンの開発環境でのみ発現し、それ以外の2バージョンでは発現しませんでした。開発環境にはコンパイラ(icc/ifort等)・数値演算ライブラリ(MKL)・通信ライブラリ(Intel MPI)があり、そのどれが原因なのか、さらなる切り分けが必要です。QEHeatの過去の知見と、動作中のスレッドのメモリ増減の様子から、弊社ではIntel MPIに目を付け、Intel MPIのバージョンだけを振った結果、1バージョンのIntel MPIでのみ発現するところまで短時間で突き止めました。
    【対処策】MPIのみ、現象が発生しないバージョンのIntel MPIを使ったビルドに切り替えることで、無事、問題のないバイナリを調製することができました。

バイナリ仕様書をいつでも参照いただけます

上記バイナリには、開発に用いた機材のバージョン、動作検証環境のスペック、テスト内容とテスト結果の詳細、既知の不具合(もしあれば)を記載したバイナリ仕様書(PDF)を /opt/hpcs/app_doc 以下に同梱しています。それは、Quantum ESPRESSOを「研究装置」として見たときの、言わば、「装置の品質検査報告書」です。弊社でビルドしたQuantum ESPRESSOがご研究の基礎として安心してご活用いただけることを裏付ける資料となります。バイナリの検査内容について気になった際には、いつでもご参照ください。

バイナリ仕様書の表紙

バイナリ仕様書の表紙

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