第35回目のインタビューは、小山工業高等専門学校 電気電子創造工学科 准教授 飯島 洋祐先生にお話を伺いました。
飯島先生はデジタル信号処理を主として研究されていますが、同時に電気・電子・情報技術といった「ハイテク技術」の習得を目的に、専門授業や実験実習による幅広い専門知識・技術の教育を行われています。
特に今回は起業家精神の育成を目的としたアントレプレナーシップ教育の一環として、AI活用可能な環境構築のために弊社のGPU搭載サーバーを導入いただきました。
小山工業高等専門学校での現在のお取り組み状況や、今後の展望などをお伺いします。
本日はどうぞよろしくお願いいたします。はじめに、飯島先生の専門分野についてお聞かせいただけますでしょうか。
飯島先生:
よろしくお願いいたします。私は高速信号伝送電気配線の影響で発生する信号歪みの影響をデジタル信号処理で補正する技術の研究開発をメインとして、Deep LearningなどAI技術の社会実装などの研究も進めています。
また、小山工業高等専門学校内では起業家精神の育成を目的としたアントレプレナーシップ教育を推進しており、アントレプレナーシップ教育推進室の室長を勤めています。
ありがとうございます。今回はどのような目的でHPCシステムズのGPU搭載サーバーを導入いただいたのでしょうか。
校内で学生が自由にAIに触れる環境が欲しく、その構築のためにサーバーを導入しました。
昨年度は校外のクラウド環境でAI教育を行いましたが、やはり回線にアクセスが集中すると支障が出ますし、学生のパソコン容量にも左右されてしまう部分があります。
当校が取り組んでいるアントレプレナーシップ教育の一環として、AI技術の活用スキルは必須と考えており、学生が使いやすいAI環境が欲しかったんです。そのため、文部科学省のスタートアップに関する補正予算などをあてながら導入を進めました。
今このお話をお聞きしている工房も、そういった教育のためのものでしょうか。
学生が自発的にものづくりに挑戦出来る環境が欲しくて、最近になってこの工房を整備しました。
GPU搭載サーバーだけでなく、3Dスキャナーや3Dプリンター、一般的な工具などもこの工房に準備しています。画面上だけでない、ものづくりの本質に近づいて欲しいという気持ちがあります。
まさに文科省がアントレプレナーシップ教育の骨子として出しているような、「起業家工房(試作スペース)」となっているわけですね。
そうですね、その一環です。授業ではどうしても課題解決のディスカッションまでで終わってしまうことがありますが、机上の空論ではなく、実際に形にするとどうなのか、という検討まで出来るようにしたいと考えています。放課後などに、学生がものづくりを出来るスペースという位置づけですね。場所も正面玄関からすぐという立地にして、地域・企業にも開いている場所を構想しています。
※アントレプレナーシップ教育…文部科学省が推進する、失敗を恐れず、新たな価値やビジョンを創造できる人材の育成。
これからの時代に必要とされる、起業家(アントレプレナー)が持つような性質や態度を育成するもの。
文部科学省「高等専門学校スタートアップ教育環境整備事業」より
アントレプレナーシップ教育は、起業がゴールというわけではありません。
高専生はもともとゼロからイチを作り出そうというモチベーションが高いので、それを後押しできるよう環境を整えています。学生が殻を破れるように、まずはこちらから殻を破ってあげないと、学生が乗ってこられないので。
AI教育についてはいかがでしょうか。
AIリテラシーは、今後必ず必要になるスキルだと思います。ただ、なかなか最初は取っつきづらい。AIと聞くとどうしても非常に高度な情報処理を行うイメージが先行してしまうようです。
今、当校には4つの学部(機械工学科、電気電子創造工学科、物質工学科、建築学科)があります。AIはこのすべての分野で活用できるということを実感して欲しい。なので、まずは全学生に、一度だけでもAIを触ってみて欲しいと考えています。
非常に先進的な取り組みですね。
前のめりな姿勢を心掛けています。工業高等専門学校は5年制で、次の1年生にアプローチしても社会に出るまでには5年というスパンがあります。
社会・産業界が大きく変化する中で、5年後の未来を見据えて人材を育てられるよう取り組んでいます。
ありがとうございます。ちなみに、実際の授業ではどのようにAIを学んでいるのでしょうか?
授業では単純な2クラスの画像分類などを行っています。喧伝されているようなAI技術は高度な計算・シミュレーションをするような使い方が多いですが、実際社会を変える際には身近な作業の効率化、単純化から始まるのではないかと思います。それに、AIにデータを食べさせるという工程を実際にやることで、普段の実験でもデータを取る重要性を感じてもらえるのではないかと。
また、技術者倫理的な側面からAIについて学ぶこともあります。例えばカッターであれば触れば危ないということはすぐにわかりますが、情報はなかなかそうはいきません。学校という限られた場で自由にチャレンジし、時には失敗する経験を積むことでそうした感覚を養えるのではないかと思います。
非常に自由なチャレンジの場があるのですね。
先ほども述べましたが、学生の自由な挑戦を妨げない環境づくりを心掛けています。今回導入したサーバーでは100アカウントを用意していますが、授業中に一人一人が触れるようにしたかったし、放課後にこの教室でものづくりをする際にも不自由はないようにしたかったんです。
そうした要件をHPCシステムズでも汲み取って対応させていただきました。
実は以前も研究でHPCシステムズのワークステーションやサーバーを利用することがあったのですが、構築やサポート対応については信頼しています。導入目的から逆算して、運用時のことを踏まえた設計をしていただきました。
導入いただいたラックマウントサーバー(HPC5000-EML232R2S、HPC5000-EMLGPU8R4S)。GPUを搭載し、生成AIなどの用途にも耐えうる。
そう言っていただけると大変ありがたいです。最後に、今後の展望をお聞きできますでしょうか。
今の環境は必ず劣化していきますし、いずれ更新も必要になります。どんどん使い倒して欲しいし、こちらもアップデートを続けていきたいと思います。
また、これは目標のひとつとして、学内だけでなく学外との連携を進めていきたいです。地域や起業と一緒に課題解決を行うハブ的なポジションになることを構想しています。地域社会全体で人材を育てることは非常に重要だと思っていて、この場所がそのひとつになるよう取り組んでいきたいです。
非常に興味深いです!微力ながら弊社もご支援させていただければと思います。
本日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。
学校説明会などで画像解析の実演も行われている。超小型エッジサーバーAIP-IE1とともに。
平日9:30~17:30 (土曜日、日曜日、祝祭日、年末年始、夏期休暇は、休日とさせていただきます。)