目標の設定方法、また、その目標達成へ向けた検討を下記リンクのPDF資料にまとめています。
ここに定めた目標に向けた当社の二酸化炭素排出量実績を毎年公開しています。
当社は、2021年4月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に賛同し、TCFD提言の要求項目に則り、情報開示を進めてまいりましたが、TCFDは2023年10月に任務を終えて解散しました。( TCFD公式HP:https://www.fsb-tcfd.org/)
当社が目指す環境目標は変わらず、上に記載したとおりです。
TCFD提言に則った開示情報を以下に記載します。
要求項目 | ガバナンス | 戦略 | リスク管理 | 指標と目標 |
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項目の詳細 | 気候関連のリスク及び機会に係る組織のガバナンスを開示する | 気候関連のリスク及び機会が組織のビジネス・戦略・財務計画への実際の及び潜在的な影響を、重要な場合は開示する | 気候関連のリスクについて組織がどのように選別・管理・評価しているかについて開示する | 気候関連のリスク及び機会を評価・管理する際に使用する指標と目標を、重要な場合は開示する |
推奨される開示内容 | a)気候関連のリスク及び機会についての取締役会による監視体制の説明をする | a)組織が選別した、短期・中期・長期の気候変動のリスク及び機会を説明する | a)組織が気候関連のリスクを選別・評価するプロセスを説明する | a)組織が、自らの戦略とリスク管理プロセスに即し、気候関連のリスク及び機会を評価する際に用いる指標を開示する |
b)気候関連のリスク及び機会を評価・管理する上での経営者の役割を説明する | b)気候関連のリスク及び機会が組織のビジネス・戦略・財務計画に及ぼす影響を説明する | b)組織が気候関連のリスクを管理するプロセスを説明する | b)Scope1,Scope2及び該当するScope3のGHGについて開示する | |
c)2℃以下シナリオを含む様々な気候関連シナリオに基づく検討を踏まえ、組織の戦略のレジリエンスについて説明する | c)組織が気候関連リスクを識別・評価・管理するプロセスが組織の総合的リスク管理においてどのように統合されるかについて説明する | c)組織が気候関連リスク及び機会を管理するために用いる目標、及び目標に対する実績について説明する |
手順番号 | 項目 | 内容 | 検討結果リンク | 対応するTCFD項目 |
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1 | ガバナンス整備 | 会社の意思決定体制に『ESG委員会』を組み込む | サステナビリティ推進体制 | ガバナンスa, b |
2 | リスク重要度の評価 | ①分析体制の決定 | ESG推進室で進め必要に応じて各部に協力依頼 | |
②分析範囲と時間軸決定 | HPC事業部、CTO事業部、管理部で2030年時点を対象とする | |||
③気候変動リスク・機会の列挙と事業インパクト定性評価 | 気候変動リスク・機会とインパクト | 戦略a, リスク管理a | ||
④重要度(マテリアリティ)決定 | マテリアリティ分析・決定 | 戦略b, リスク管理b | ||
3 | シナリオ群の定義 | 2℃以下を含む複数のシナリオを選択し世界観を共有する | シナリオ群の定義 | |
4 | 事業インパクト評価 | 定義したシナリオを参考に自社の複数の将来像を設定する | 事業インパクト評価と対応策の決定 | リスク管理c |
5 | 対応策の定義 | 長期ビジョン・経営計画へ展開する | 戦略c | |
6 | 環境目標と実績追跡 | Scope1~3のCO2排出量と削減目標および実績を明らかにする | 環境目標 | 指標と目標a, b, c |
大項目 | 中項目 | リスク・機会項目 | リスク | 事業への インパクト | 環境へのインパクト/貢献度 | 機会 | 事業への インパクト | 環境へのインパクト/貢献度 |
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移行 リスク | 政策・ 規制 | 炭素税導入 | ・高消費電力製品の価格上昇 | 大 | 中 | ・スーパーコンピュータ富岳、サイエンスクラウドへのシフト加速 | 大 | 中 |
各国の環境目標・政策 | ・マシンルーム・データセンター・工場の消費電力への関心(非難)増加 | 小 | 小 | ・環境技術研究への国家予算増加 | 中 | 中 | ||
・公的補助金増加 | 小 | 中 | ||||||
・再生可能エネルギー導入加速(社会制度・インフラが完備) | 小 | 大 | ||||||
・再エネ電力取引によるAI需要拡大 | 大 | 大 | ||||||
技術開発 | 量子コンピュータ・クラウド・スーパーコンピュータ等の新型計算機、MI等の革新的ソフトウェアの実現、AI/DL、高速通信等によるアプリケーションの飛躍的進歩 | ・HWの高消費電力化 | 大 | 中 | ・市場拡大 | 大 | 大 | |
・チップの高速化・最適化による1ジョブ当りの消費電力削減(1W当りの演算性能向上) | 大 | 中 | ||||||
・技術キャッチアップの遅れ | 大 | 大 | ・新規ソフトウェアのHPCへの実装による、素材・材料開発の躍進 | 大 | 大 | |||
・人財不足 | 中 | 大 | ・IT業界全体の進歩によるビジネスチャンスの増加(AI/DL、5G等) | 大 | 中 | |||
・人件費・人財育成費増加 | 中 | 小 | ・科学技術計算普及による社会全体の研究開発生産製造(エンジニアリングチェーン)効率化 | 中 | 大 | |||
市場動向・評価 | 顧客および投資家の企業評価点の変化 | ・環境対応の遅れによる信用低下 | 中 | 小 | ・積極的な再エネ導入による評価向上 | 大 | 大 | |
・調達先への調査(管理)必要性増加 | 中 | 中 | ・調達先への働きかけに正当理由/社会的後押し | 小 | 中 | |||
・製品廃棄への対応遅れによる信用低下 | 中 | 中 | ・クラウド化によりサービス事業の比重増加 | 大 | 大 | |||
物理 リスク | 異常気象 | 自然災害・疾病/感染症多発 | ・災害時の停電による業務停止・マシン破損・データ破損 | 大 | 中 | ・蓄電池・燃料電池使用メリットの増加(停電時の電力バックアップ、地域貢献として近隣への電力供給が可能) | 小 | 大 |
・調達先被災/供給不足によるサプライチェーンの崩壊 | 大 | 大 | ・調達先多様化等によるサプライチェーンロバスト化 | 大 | 中 | |||
・感染症による事業所閉鎖・業務停止命令等の可能性 | 小 | 大 | ・リモート勤務や企業のDX推進によるコンピュータシミュレーションの需要増加 | 中 | 中 |
列挙したリスクと機会から、マテリアリティを決定しました。TCFD要求項目の「戦略b」「リスク管理b」に対応しています。右上が重要度の高い項目ですが、それ以外にも当社の特性から重要度が高いと思われる項目を青枠で囲みました。
国際エネルギー機関( IEA:International Energy Agency)が提示する以下のシナリオを選択し、世界観を共有しました。
参照シナリオ | シナリオの概要 | |
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2℃以下シナリオ | IEA World Energy Outlook 2020_ Sustainable Development Scenario (SDS):持続可能開発シナリオ | 今後10年間でクリーンエネルギー技術への投資が短期的に急増し、世界的なCO2削減のアクションは順調に進められる。新型コロナ(CVD-19)パンデミックの影響は限定的。 2030年のエネルギーミックスは、2019年比で再生可能エネルギーが増加し、石炭使用量は大幅減。石油の使用量も減少するが天然ガスは変化なし。 |
対照シナリオ(4℃) | IEA World Energy Outlook 2020_Stated Policies Scenario (STEPS):公表政策シナリオ | これまでに公表された各国の政策を前提とする。CVD-19パンデミックは2021年中に制御下に置かれ、世界のGDPもコロナ危機以前の水準に戻る。 2030年のエネルギーミックスは、2019年比で再生可能エネルギーが増えるが、石炭使用量の減少はわずかで、石油、天然ガスの使用量は微増する。 |
決定したマテリアリティ項目に対し、定義したシナリオを参考に2030年の将来像を予測し、対応策を決定しました。「2030年将来像にてらした予測」はTCFD要求項目の「リスク管理c」、「対応方針」は「戦略c」に対応しています。
「対応方針」を更新しました。「対応方針」は『中期経営計画Vision2027』に詳細が記載されています。
マテリアリティ項目 | 基準年である2018年の状況 | 2030年社会像にてらした予測リスク管理c | 対応方針戦略c | ||
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2℃以下(SDS) | 4℃(STEPS) | ||||
リスク | ・H/Wの高消費電力化 ・高消費電力製品の価格上昇 | 炭素税:日本289円/tCO2(温対税)(スウェーデン15k円/tCO2) | 炭素税大幅増加 先進国7k円/tCO2以上(2025) | カナダ、フランス、アイルランド~14k円/tCO2、EU4k/tCO2 | ・先端冷却技術、省エネ技術の追求 ・受託計算等、コンサルティングサービスのより一層の拡大 ・製造業DXのアシストによる社会の効率化 |
・技術キャッチアップ ・(新技術)人財不足 | 8人/年増加(2015~2020年平均) 人件費52M円/年増加 | 新エネルギー技術、電化技術、新規材料技術の大幅進歩。人件費4℃シナリオ比1.2倍 | 現行トレンドでの人員増として200名前後(ほぼ2倍) | ・大学/研究機関とのコネクション維持・拡張による専門人財の確保 ・海外研究機関連携による研修、研究機会など活躍の場提供 | |
災害による ・サプライチェーン崩壊 ・操業停止命令 | コロナ禍ほか、需給乱れによる半導体ひっ迫により2019年は減収インパクト。2020年は、営業・調達・生産部門の連携によりインパクトを最小化し増収増益 | 環境要因インパクトは最小化。強化したサプライチェーンによる事業拡大 | CVD-19は制御下に置かれるが、災害増加による需給乱れは深刻化。2019年時のインパクトが拡大。 | ・調達先の集中する台湾拠点、ベトナム拠点の機能強化により、現地での調達管理実施 ・現地での実績構築と認知度向上による現地工場の底上げ | |
機会 | ・市場拡大 ・再エネ取引AI需要拡大 ・MI・ソフトウェア進歩による素材開発躍進 | 2018年の売上げ53.95、営業利益3.69(億円) | 炭素税による利益の目減りを補う成長。中期経営計画売上げ目標達成 | 売上げ目標大幅達成。ただし、災害対策・調達費用増加 | ・HPC-AIシステムインテグレーション増強 ・グローバル事業展開強化 ・海外安全規格の適合拡大 |
・チップの高速化・最適化による1ジョブ当りの消費電力削減(1W当りの演算性能向上) ・計算機高速化による開発効率向上 | Scope3⑪当社製品使用によるCO2排出量 HPC事業部:10.16千tCO2 CTO事業部:18.95千tCO2 | 製品省エネ化に加え社会への再エネ普及が促進され、CO2排出量は2018年より20%減少 業務プロセス効率化によりCO2排出量大幅減 | スーパーコンピュータ富岳・クラウドの使用・チップの省エネ化による消費電力削減で現行トレンドよりは鈍化 | ![]() |