ホーム > 計算化学 > ソフトウェア > Gaussian > Gaussian Tips > Gaussian計算エラー対処・虎の巻/第8回配信: キーワード指定に関するエラー

Gaussian入門メールニュース:
Gaussian計算エラー対処・虎の巻

計算がエラーで止まってしまった!でもどうすればいいかわからない。
結果が何かおかしい。どこがいけなかったのだろうか?
といった疑問の解決に少しでもお力添えするべく、よくあるエラーを中心に、直接的な対処法から簡単な理論的背景まで含めて解説いたします。

第8回配信: キーワード指定に関するエラー

 前回の配信より、「第3部 Gaussianエラー対処各論」と題して、さまざまなエラーの具体的事例とその対処法の解説を行っています。今回の配信では、Gaussianキーワード指定に関連するエラーについて紹介いたします。
 キーワード指定のエラーの原因は、大きく3つに分類できます。1つめはキーワード欄のフォーマットミス、2つめは追加入力欄に関するミス、もうひとつはGaussian未実装機能のキーワード指定です。2つめのエラー原因については、本来はキーワード指定のエラーではないかもしれませんが、キーワード指定に付随するエラーということで、ここでまとめて解説します。

(8-1) キーワード欄のフォーマットミス

 恐らく、Gaussianのエラーの中で最もポピュラーなものの1つでしょう。多くのGaussian入門用の教科書や本メールニュースの第2回配信でも解説されていますが、ミススペル等の原因によって存在しないキーワードやオプションを指定すると、誤っている箇所にアポストロフィ( ‘ )を付したエラーメッセージと共に、Link 1(Overlay 0)で直ちに計算が停止します。(下記の例では、Pop=HullではなくPop=Fullが正しい指定となります。)

 似たエラーで、キーワードやオプションのスペル自体は正しいが、それらを指定する方法が正しくないというものがあります。
 下記は、DFTエネルギー計算におけるSCF手続きの収束閾値を10−7に設定することを意図して、Conver=7という指定を加えたインプットです。この計算のアウトプットを見ると、先ほどの事例と同様、Conver=7の箇所にアポストロフィが付せられて計算が停止しており、これは一見、「Conver=7というキーワードやオプションは存在しない」というエラーに見えます。

しかし実際には、Conver=7というキーワード自体は認められていないものの、SCFキーワードのオプションとして存在が認められています。(言い換えれば、独立したキーワード名ではなく、キーワードより1階層下にあたるオプション名として認められていることになります。)
 すなわち、上記の例において計算が停止した原因はConver=7のスペルミスではなく、指定方法のミスによるものであり、以下のように指定すれば、正しく計算が走ります。

 このような、キーワード・オプションの指定方法のミスでよくありがちなのが、電子相関計算(例えばMP2、CCSD等)や励起状態計算(例えばCIS、TD-DFT、SAC-CI等)における軌道凍結オプション(例えばFCFullWindowReadWindow等)の指定ミスです。Gaussian社公式ユーザマニュアルでは、これらの軌道凍結オプションは「Frozen Core Options」というカテゴリにまとめられ、一見すると、独立したキーワードにも見えます。
 しかし実際には、これらはMP2TD等の電子相関計算関連キーワードや励起状態計算関連キーワードに対するオプションであり、FC、Full、Window、ReadWindow等はユーザマニュアルのMP2TD等のキーワード解説ページには顕に記載されていないにもかかわらず、MP2=( )、TD=( )のキーワード指定の括弧の中に与えねばなりませんFCFull等の軌道凍結オプションを独立したキーワードとして与えると、エラーとなりますので、ご注意下さい。

(8-2) 追加入力欄に関するミス

 キーワードによっては、計算に必要な情報がキーワード欄だけで完結せず、インプット内の分子指定セクションの後に追加入力を必要とする場合があります。この時に、追加入力が正しく指定されていないと、エラーとなります。また、追加入力が必要なキーワードが複数指定された場合、追加入力の正しい順序は決められており、その順序通りに指定しないとエラーとなります(これについては第3回配信で解説済です)。
 この類のエラーでは、キーワード欄には誤りがないので、Link 1(Overlay 0)では停止せず、追加入力情報がいよいよ必要となった時点でのOverlayで、追加入力を読み込もうとしてエラーとなります。したがって、エラーメッセージはキーワードや追加入力の種類によってまちまちであり、エラーメッセージからの原因特定の難易度も上がりやすくなりますので、追加入力が必要なキーワードの指定には十分注意して下さい。
 実例として、前期共鳴ラマン計算でのエラーを挙げます。共鳴ラマンスペクトル強度はFreq=ROAを指定することで計算できますが、同時に照射レーザー波長(または波数)を追加入力で与える必要があります。この指定を忘れるとエラーとなります。

エラーメッセージには「CPHF=RdFreqなのに、インプットに振動数(の指定)がない」とあり、これを解釈すれば、照射レーザーの振動数を記した追加入力が必要であることが推測されます。(なお、Freq=ROAを指定すると、CPHF=RdFreqが自動的に指定されます。振動数の追加入力は、本来はFreq=ROAのためではなく、CPHF=RdFreqの指定のために必要な情報です。)

 関連トピックとして、軌道凍結オプションのWindowとReadWindowは機能としては同じなのですが、指定の仕方が異なることに注意して下さい(混同すると、エラーになります)。

(8-3) Gaussian未実装機能のキーワード指定

 キーワード指定方法は文法的に正しいが、そのキーワードの実行機能が現行のGaussianでは実装されていないというエラーです。これは、キーワードAを指定した計算とキーワードBを指定した計算自体は共に実装済だが、ABのキーワードを同時に指定した計算は未実装という場合に起こります。この類のエラーでは基本的にはLink 1(Overlay 0)で計算が停止しますが、キーワードの組み合わせによっては、もっと後のOverlayでエラーになることもありますので、ご注意下さい。
 実際のエラーの例を示しましょう。下記はTD-DFTで励起状態のラマンスペクトルを計算することを意図したものですが、残念ながら、現行のGaussianではこの計算に対応していません。

 また、下記はEPT(電子伝播関数理論)という手法で構造最適化を試みたものですが、これも現行のGaussianでは未対応です。(デフォルトではEPT=OVGFであり、この場合、EPTとOVGFは同義です。)

 今回の内容は以上です。次回(第9回配信)では、「分子指定に関するエラー」を解説いたします。

メールニュース会員募集中!

Gaussian入門者の皆様に、Gaussianを使いこなして高度な計算化学者に飛躍していただけるよう、Gaussianに関する様々な情報を発信しております。メールニュースの配信をご希望の方は、以下のフォームよりお願いいたします(お問い合わせ内容の項に「Gaussian入門メールニュース配信希望」とご記入ください)。

メールにてお申し込みされる方は、以下の必要事項をご記入の上、送信してください。

  • ◆電子メール件名 : Gaussian入門メールニュース配信希望
  • ◆記入項目:
    1. 氏名 :
    2. E-mail:
    3. 法人名/部署名:
    4. 住所:
    5. 電話番号:
  • キャンペーン情報
    現在開催されているお得なキャンペーン情報はこちらから。
    詳細
  • ご購入前のお問合せ
    フォームにご入力いただければ後ほど営業よりご連絡させていただきます。
    詳細
  • 見積り依頼
    フォームにご入力いただければ後ほど営業よりご連絡させていただきます。
    詳細
CONTACT

お問い合わせ

お客様に最適な製品をご提案いたします。まずは気軽にお問い合わせ下さい。
075-353-0120

平日9:30~17:30 (土曜日、日曜日、祝祭日、年末年始、夏期休暇は、休日とさせていただきます。)