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Gaussian入門メールニュース:
Gaussian計算エラー対処・虎の巻

計算がエラーで止まってしまった!でもどうすればいいかわからない。
結果が何かおかしい。どこがいけなかったのだろうか?
といった疑問の解決に少しでもお力添えするべく、よくあるエラーを中心に、直接的な対処法から簡単な理論的背景まで含めて解説いたします。

第3回配信: インプットファイル作成時の注意

 前回の配信では「エラーの現象ごとの対処法」を学びましたが、その対処法には、比較的簡単なものから、エラーの理屈を理解した上での本格的な検証が必要なものまであることを学びました。
 とはいえ、Gaussianに慣れないうちは、「本格的な対処」が必要な難しいエラーより、インプットファイル(以下、インプット)のフォーマットミスなどによる単純なエラーの方が圧倒的に多く、インプット作成に気を配れば8割方のエラーが防げると言えます。そこで今回は、そのインプット作成における注意点について見ていきましょう。

(3-1) インプットの最後には必ず空行を!

 大抵の場合、インプットの最後に空行を入れないとエラーで止まります。計算条件によっては空行を入れなくても走る場合もありますが、基本的には空行を入れたためにエラーが起こるということはないので、インプットの最後は空行を常に入れておく方が無難です。特に、GaussViewを使わずにテキストファイルを直接編集してインプットを作成する場合には、空行をよく忘れがちなので注意しましょう。

(3-2) インプットの基本フォーマット

 次に、正しいインプットを作成するために、インプットの基本フォーマットを示します。Gaussianのインプットは、以下に挙げる幾つかのインプットセクションから構成されます。

・Link 0コマンド: 並列数、使用メモリ量、チェックポイントファイルなどの指定
・ルートセクション(#行): キーワード、基底関数などの指定
・タイトルセクション: タイトル(計算の簡単な説明文)
・分子指定セクション: 系の電荷、スピン多重度、座標情報
・追加入力セクション: 特定の計算条件で必要となる追加インプット

 具体例を見てみましょう。以下はホルムアルデヒドの構造最適化計算の例です。

 色を付けた部分がそれぞれのインプットセクションに対応しています。ここでLink 0コマンドの後以外は全て空行で区切る必要があることと、(3-1)節でも述べたように、通常、最後のセクションの後にも空行が必要であることに注意してください。また、これらのセクションの正しい順序は決められており、その順序通りに指定せねばエラーとなってしまいます。次節ではそのことについて解説します。

(3-3) インプットセクションの順序

 インプットセクションの正しい順序はGaussian社のWebPageに掲載されていますが、これを日本語訳したものを下表にまとめました。各背景色は(3-2)節での各インプットセクションに対応しています。異なる背景色のセクション順序が違うとエラーになるのはもちろん、同じ背景色同士のセクション順番を間違えてもエラーになりますので、特に複数の追加入力セクションが必要な計算では、この表を見て十分注意しながらインプットを作成して下さい。

 以上を踏まえて、具体例を見てみましょう。下の例では、基底関数、軌道凍結、外部電荷の情報をGen、TD=ReadWindowChargeキーワードを用いて追加入力セクションから読み込もうとしています。

これらのキーワードとインプットセクション順序の表を照らし合わせてみると、追加入力で与えるべき正しい順序は、外部電荷の情報→基底関数の情報→軌道凍結の情報であることがわかります。この説の冒頭でも述べましたように、これ以外の順序では、エラーが起こりますので、ご注意ください。
 なお、各追加入力セクション内で与えるべきフォーマット(例えば外部電荷の情報の与え方や基底関数の情報の与え方)は、各追加入力を必要とするキーワード(この例では、ChargeやGen)の解説ページをご覧ください。

注意: Gaussian 09版でのインプットセクションの正しい順序は、Gaussian 03から一部変更されています。
したがって、弊社WebPageのGaussian 03 日本語解説ページにある順序でGaussian 09 インプットを作成いたしますと、エラーになる可能性がありますので、ご注意下さい。

(3-4) インプット作成時のよくあるミス

 最後に、インプット作成においてありがちな人為的ミス(およびそれに起因するエラー)を列挙します。もし計算が止まったり何かおかしな結果が出たりした時には、まずはインプットに以下のようなミスが見当たらないかチェックしてみて下さい。

◆全角文字が含まれている

特に全角スペースは、インプット中にあっても気づかない場合がありますので、注意しましょう。

◆改行コードなどが不適切

特に、Windowsのメモ帳でインプットファイルを作成し、それをLinuxのGaussianで走らせようとした時にエラーが起きることがあります。その場合は、Linuxの端末画面で

dos2unix aaa.gjf (aaa.gjfはインプットファイル名)

とコマンドすると良いでしょう。インプットファイルaaa.gjfがWindows用のテキストファイルからUNIX用のファイルに変換されます(元のファイルに上書きされます)。
ちなみに逆の操作をするコマンド「unix2dos」もあります。

◆NProc(NProcShared)の設定し忘れ

エラーではありませんが、これを設定し忘れると、たとえマルチコアCPUを使っていても、そのうちの1コアだけが使用されて計算が走るので、とても悲しいです。

◆メモリ指定が不適切

%Memの指定値がその計算に必要なメモリ容量に満たないと、エラーとなります。また %Memの値を必要以上に大きくし過ぎると、エラーとはなりませんが、著しく計算のパフォーマンスが落ちることがありますので、注意が必要です。
(計算に必要なメモリ量の見積については、弊社のGaussian日本語マニュアルをご参照ください。)

◆キーワード指定のミス

第2回配信の通り、この場合はGaussianがミスの箇所を教えてくれますので、それを参考にルートセクション(キーワード欄)の修正を行ってください。

◆タイトルセクションの書式が不適切

タイトルセクションは5行を超えてはいけません。
また、一部の特殊文字
@  #  !  -  _  \(バックスラッシュ)
の使用は、エラーとなることがあるので、控えるべきでしょう。

◆電荷とスピン多重度が不整合

これらの数値を矛盾のないように設定してください。(第2回配信参照)

◆分子構造指定が不適切

原子の座標が重なっていたり、結合角が180° に設定されていると、エラーとなります(二面角の指定の許容範囲は−180° ≤ φ ≤ 180° ですが、結合角指定の許容範囲は0° < θ < 180° です)。 また、構造パラメータは実数値指定でなければならないので、整数値で結合距離や角度を与えないよう注意して下さい。

◆追加入力情報を与える順序が不適切

(3-3)節のインプットセクション順序の表をよく確認しながら、追加入力情報を与えて下さい。

◆追加入力情報の書式が不適切

各追加入力を必要とするキーワードの解説ページをよく確認して下さい。

◆各セクションの区切りの空行ミス

基本的には各セクションの終わりに空行が必要です。ただし(3-3)節のインプットセクション順序の表において、終端空行の必要性が「no」であるセクションもあるので、ご注意下さい。

◆最後の空行がない

冒頭に申し上げた通りです。
この最後の空行は、忘れても見かけ上インプット内に不適切な箇所がないように見えるため、とかく忘れがちになってしまいますが、このチェックを忘れないよう、特に心掛けて下さい。

 今回の内容は以上です。また「第1部 基礎編:GaussianエラーのFirst Aid」もこれにて終了し、次回からは「第2部 Gaussianでエラーが起こる仕組みを知る」に入ります。次回(第4回配信)では、「量子化学計算の流れ」を解説いたします。

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