ホーム > HPC・DL・AI > 計算化学 > 技術情報 > 計算機の選び方

計算機の選び方

扱う分子の種類や大きさ、シミュレーション技法の種類などにより、計算中に利用する主なリソース(CPUやメモリ、HDD、ネットワークなど)は大きく異なります。基本的に大は小を兼ねますが、予算に応じて最大のパフォーマンスが発揮されるよう計算機構成を選定するのが賢い方法です。ここでは基本的な選定方法を紹介します。

(弊社ではお客様の要望に合わせてベンチマークテストを実施するなど、より精査して構成内容を吟味、選定するサービスも行っております。ご所望の際はお問い合わせください。)

量子化学シミュレーション

量子化学シミュレーションの計算条件は論文等で「B3LYP/6-311+G(d,p)」のように記述され、B3LYPの部分が計算手法(Schrödinger方程式の近似法)、6-311+G(d,p)の部分が基底関数(波動関数の展開方法)を意味します。計算機構成の選択という観点からは、基底関数の種類は大抵さほど重要ではありません。したがって最適な計算機構成は、想定する計算手法に合わせて選択するとよいでしょう。以下、Gaussianの場合を例に説明いたします。

ほとんどの計算

分子の最適化構造、HOMO/LUMOなどの電子状態、IRスペクトルやRamanスペクトルなど、分子の基底状態に関するプロパティ計算には多くの場合、B3LYPなどの密度汎関数法(DFT)が利用されます。DFTの計算コストは基底関数の数を N としたとき、 N3 のオーダーと言われており、数ある量子化学計算手法の中でも計算コストパフォーマンスの高い方法です。並列計算効率も比較的高いため、CPU性能を重視した計算機構成がよいでしょう。

より精度の高い計算

DFTは万能ではなく、場合によってはより高精度な計算手法が求められることがあります。例えば、2次のMøller-Plesset摂動(MP2)法、1電子および2電子励起クラスター展開(CCSD)法などはDFTを超える精度の計算手法としてよく用いられます。しかしこれらの方法は計算コストが大きく(MP2法は N5程度、CCSD法は N6 程度)、計算データも膨大となりやすいことに注意して下さい。これらの手法の場合、メモリとHDDを重視した計算構成がよいでしょう。

励起状態計算

吸光や発光など光に関与したシミュレーションには励起状態計算が必要となります。励起状態計算の理論は基底状態計算の理論を元に設計されているため、基底状態計算の場合と同様の計算機構成を考えればよいでしょう。

例えばTD-DFTではDFTと同じくCPU性能を重視、SAC-CIではCCSD法と同じくメモリとHDDを重視した計算構成が適切な構成となります。

 CPUメモリHDDネットワーク
HFやDFT--
MP2やMP4-
TD-DFT--
SAC-CI--

◎ 強化必須 ○ 強化推奨 △ できれば強化 - 標準構成で十分

分子動力学シミュレーション

分子動力学

古典分子動力学シミュレーションでは、計算コストは原子数の数 N に依存します。相互作用計算で利用されるParticle Mesh Ewald(PME)法が N log N のオーダー、一部のソフトウェアで採用されている高速多重極展開法(FMM)で N のオーダーの計算コストになると言われています。分子動力学ではそれほど多くのメモリを使用しないため、CPUを重視した計算機構成がおすすめです。また大きなトラジェクトリデータが出力されるため、大容量HDDが必要です。

近年ではGPUに対応したソフトウェアも登場しています。計算内容がCPUとGPUそれぞれの得意な処理に合わせてチューニングされており、GPUについてはCPUとバランスの取れた選択をするのがおすすめです。

QM/MM法やCar-Parrinello法などの量子化学計算を取り入れた分子動力学

電子状態を扱う量子化学の計算処理は、原子を動かす分子動力学のそれと比較して圧倒的に計算コストが高いため、量子化学計算に使う計算手法に合わせて計算機構成を選択します。またトラジェクトリデータや各スナップショットに対する量子化学計算のアウトプットを保存するために、大容量HDDが必要になります。

 CPUメモリHDDネットワーク
古典
分子動力学
-
量子
分子動力学
(量子化学の構成と同様)-
Contact

お問い合わせ

お客様に最適な製品をご提案いたします。まずは気軽にお問い合わせ下さい。
075-353-0120

平日9:30~17:30 (土曜日、日曜日、祝祭日、年末年始、夏期休暇は、休日とさせていただきます。)