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東京工科大学 石畑様インタビュー
東京工科大学東京工科大学

- 本日はどうぞよろしくお願いします。早速ですが、御社の事業の概要をご紹介いただけますか?

 一言でいえば“ゲノム科学技術を応用した「ものづくり」”を行う会社です。遺伝情報というと遺伝子検査が世間的には一番わかりやすい内容かと思いますが、我々は遺伝子検査をする会社というよりは、新たな遺伝情報に基づく検査や、その結果に応じたソリューションを作る会社です。


- 遺伝子検査装置でしょうか?

 装置そのものというよりは「膨大な遺伝情報のうちこの部分を調べることで、こういう症状・状態がわかります」といった、計算科学的な手法やアルゴリズム、それに基づく検査を開発しています。また検査を作るだけではなく、その先まで踏み込んだソリューションを提供しています。ただ遺伝的な傾向・リスクがわかるだけでは、有用な情報とはいえません。「そこからどういうソリューションに結びつくのか」というのがあってこそ、情報が意味をなしてくると考えています。
 例えば犬や猫などのペットの遺伝子検査を開発し、体調に合わせたペットフードを作るとか。土壌の微生物検査を実施して、土壌改良に繋げたりもしています。 「ゲノム x ものづくり」で世界をリードするというのが我々の事業コンセプトであり、検査だけではなくソリューションを提供することが我々の考えるものづくりであり、事業価値だと思っています。


- それは仲木さんが元々工学系の出身だったことが影響されていますか?

 おっしゃる通りです。自分たちでものを作って世に出していきたいという思いがありますし、あとはやはり遺伝情報解析の会社として 「遺伝情報は単なる目安」というイメージを払拭したいという思いがありました。遺伝情報を明らかにしても、対処や判断はサービスのユーザー任せ、というスタンスを皆がとってしまうと、「単なる目安」ととられても仕方ないと思うのです。
我々はそういうスタンスをとらずに自分たちの結果に対して責任を持ち、ソリューションを提供することで遺伝情報解析の有効性を示していきたいと思っています。


- 御社の事業の特徴を教えていただけますか?

 事業領域を“ヒトのヘルスケア”に限定していない点です。多くの会社が「ヘルスケアで人の生活の向上を図る」といったコンセプトを掲げていますが、ゲノムについていえば、ヒトだけが持っているものではありません。生物すべてが持っています。
“ヒトのヘルスケア”は、我々の事業の一つではありますが、自分たちの技術をヒトに限定するということは考えていません。


- 具体的にはどのようなことをされているのでしょうか?

 “ヒトのヘルスケア”においては、「致命性はないけれども、精神・身体的に負担となる症状」である薄毛や不妊、不眠、肥満の予防・対処に向けた、検査や専用商品の開発を行っています。 “動物のヘルスケア”においては、遺伝情報に合わせたペットフードやその他商品の開発ですね。環境や農業、食品の分野においては、育種や品質管理、状態の最適化・改善に向け、検査とそれと合わせたソリューションの開発を行っています。我々の専門性は最新のゲノム科学技術にあり、正直なところ、すべての分野において常に精通しているわけではありません。だからこそ、我々の事業においては、それぞれの分野において適切なパートナーと一緒に事業を展開するというアプローチをとっています。
 最終的には「生命情報を読み解き、生き物の新たな可能性を創造する」という我々の企業理念に結びついてゆくのですが、あくまでも“生き物全体”に対して事業を展開しています。


- 一般的には“ヒトのヘルスケア”を中心に事業をされている会社が多いのでしょうか?

 多いですね。わかりやすいニーズがあり、一見、商品化・対処に結びつけやすいイメージがあります。学術業界でトレーニングを積まれた方は、私も含めてヒトやマウスのサンプルを用いた基礎・臨床研究に携わった人が多いというのが現状です。これら対象は医療に結びつけやすく、実際に研究予算もつきやすいところなので。
 そこから事業へ発展された方は、やはりヒトのヘルスケアを中心に考えられる方が多いですね。ただ、実際に事業にしてみると、実は大変に複雑で困難な分野であることがわかります。
 やはり、ヒトのヘルスケアは様々な要素が介在するため、遺伝情報の一部を見るだけで解決する問題は多くありません。 我々の会社では、一人ひとりが「稼げる研究者」になることを目指しています。そのスタンスに立ったとき、本当の意味で、今やっていることが社会に求められているか、それをやった上で問題を解決することが出来るかを考えないといけません。そして、その条件が満たせる対象であれば、分野を限る必要はないと考えています。


- それは重要なことですね。それでは会社設立のきっかけを教えてください。

 会社を立ち上げたのは博士課程の学生として大学院に在学していた頃です。私は元々、医学の臨床研究系の先生のラボにいました。実サンプルを扱い、癌や糖尿病におけるリスクマーカーの予測や、作用機序のメカニズムの解明に向けた研究を行っていました。
 その頃、医学への貢献に向け、遺伝情報と病気を結びつける知見を蓄積していくことに大きな意義を感じていましたが、そこから社会への貢献については少し距離や時間を感じていました。そこから、「実際に自分たちの技術をより直接的に社会に還元したい」と思ったのが起業のきっかけとなりました。


- 現在のコアメンバーはどのように集まったのでしょうか?

 基本的には、在学中に周りにいたメンバーが自然に集まった形です。このあたりは、いわゆる他の学生ベンチャーとそこまで変わらないところかと思います。
 ただ、他の会社と違うのは、我々は最初から技術を持っていることに一番のプライオリティをおいていないことですね。一番重要なことは、Rhelixaマインドを持っていること。それについては、長くなるのでここではお話ししませんが。Rhelixaマインドを持っていること、最低限の能力を持っていれば十分です。その意味で、社員やバイトを含め、学部生を積極的に採用しています。そこからゼロからトレーニングをして、最新のゲノム科学技術を叩き込みます。
 我々が専門とする生化学の分野は、十分な積み重ねを経てその先が見えてくるような物理や数学の分野とは異なり、少し目線や方法を変えれば、誰でも最先端に触れることが出来ます。そういう意味において、頭のやわらかな学部生の方々を重宝しています。


- どのタイミングで会社一本に絞られたのでしょうか?

 我々の会社の設立日は2015年の2月16日で、私が大学院博士課程3年生の時でした。その後、1年間ポスドクをしていたのですが、その間に、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「スタートアップイノベーター事業」に採択され、助成金をいただきました。そちらに後押しをしていただき、完全に独立することを決めました。


- 「なんとかするしかない」という勢いが、起業を後押しした部分もありましたか?

 そうですね。サイエンス分野における大学生・大学院の認識では、「一度社会に出てしまうとなかなか基礎研究に戻れない」という感覚があるのですが、実はそんなことはありません。技術を磨き、方向性さえ合っていれば、いつでも戻ろうと思えば戻れます。しかし起業は、「このタイミングでないと」という思いがありました。
 会社を作ることはいつでも出来ることではありますが、実際に事業としてうまくいくかは完全にやってみないとわからず、そのためにすべて投げ打てると判断し得たのはあのタイミングしかなかったと思います。


- どのようにしてゲノム解析をされるのでしょうか?

 それでは、実際に見ていただきましょうか。こちらは、イルミナ社の出されている次世代シーケンサーと呼ばれる、ゲノムDNAを同時に大量に読み取る機械です
 本来はいろいろと前処理があるのですが、最終的には調べたいDNAサンプルを、この“Load Library here”と書かれている部分に流し込むことでシーケンシングが可能です。どういうDNAサンプルを用いるかで、その後にどのような解析が必要か変わってきます。
 シーケンシングの試薬は安いもので10万円、高いものですと30万円程します。こちら次世代シーケンサーは、イメージとしては、全体の枚数しか指定を出来ないプリンターのようなもので、一度スタートを押すと途中で止めることは出来ません。どんどんDNAの情報を読み取り、出力してくれます。ただ、特殊な処理で異なるサンプルを同時にシーケンシングすることは可能で、そこを如何にマネージメントしていくかも重要なところです。


- 独自の計算アルゴリズム・手法を用いたゲノム・エピゲノム解析を行っているそうですが、御社でプログラムを開発されたのでしょうか?

 はい。多くは社内で作っているものです。研究機関と共同で開発しているものもあります。


- 競合他社様と比較して、御社の強みはどこだとお考えですか?

 次世代シーケンサーより得られる大規模な遺伝情報解析においては、独自の計算アルゴリズムやソフトウェアを持っています。ただ、より大きな枠組みでいうと、ゲノムものづくりのデザインからはじまり、実験から解析、最終的な成果に落とし込むところまでをワンストップで提供できるのが強みであると考えています。
 弊社のお客様は、常にゲノム科学に精通している方とは限りません。そのため、ゲノム科学を応用することで、どのような製品や成果につながっていくか、ゼロから考えていかないといけないケースが多々あります。そのような方々に対して、その対象に合わせて研究開発からその先のビジネスや成果までをデザインし、そこまでのプロセスをすべて社内で完結できる会社は他にありません。


- コンサルティングから入るのですね。

 その通りです。「こんなことをしたいのだけれど、ゲノム科学で何かできますか?」といったお客様に対して、最終的なアウトプットを共有させていただいた上で進めています。問題や課題の本質が、生命情報の多様性や制御機構にさえあれば、基本的にどういう対象についても対応が可能です。


- エピゲノム解析の進展は人の生活にどのような変化をもたらすのでしょうか?

 ゲノム解析は、主に両親から受け継いた遺伝的体質や傾向を明らかにすることを目的とします。ただ、必ずしも現在の状況を反映しているわけではないため、身近に感じられない場合が多いといえます。
 実際に、人は生まれたあとで環境/時間依存的に様々な影響を受けて、体質や傾向以外の要素を蓄えてきます。エピゲノム解析は、そのような後天的な影響に結びつく現在の遺伝子の活性状態を明らかにしていくため、より生活や医療に直結しやすいものに感じていただけるのではないかと思います。


- エピゲノム解析に興味を持たれたきっかけは、どのようなことだったのでしょうか?

 私は元々ものづくりが好きでした。子供の頃からレゴにも慣れ親しんできましたし、工学部出身で、時間があると趣味でメカニックに時間を使っています(笑)。ただ、工学系のものづくりというものは様々なものや人が介在する必要があり、先行者も多かったため、大学生の自分にとってはそこから主導して分野を切り開いていけるか疑問でした。
 一方、計算生物学やゲノム解析は最近立ち上がってきたばかりの分野ですので、自分たちでゼロから検査をしたり、製品を作ったりまだまだやれることが沢山あります。そういった背景から、誰もやっていない「ミクロのものづくり」に興味を持ちました。
 生物は人の世界で実現できていないような優れた性質をもったものも多く存在し、その機構を読み解いて実社会に応用するというのはすごく面白いと考えています。


- 神の領域に迫る研究と言えますよね?

 そうですね。場合によってはデリケートな領域に踏み込むことになります。


- 工学から生物学にシフトされたとのことですが、そういった方は多いのでしょうか?

 最近は、情報科学系からシフトする人が増えているかと思います。ただ、工学と違って、生物はもう少し不確実で動的な機構で動いているため、実際に入ってみると苦戦する方は多いです。私は、もともとは配列解析のアルゴリズムを作っているアルゴリズム屋さんで、それを応用するという目的でこの分野に入ってきました。ただ、実際にこの分野に入ってみると、生物の多様性や柔軟性に基づく、例外の多さに驚かされました。


- 今後、新たに挑戦をしていきたいと考えられていることは何ですか?

 そうですね。現在最も力を入れて取り組んでいるのが、ポータブルDNAシーケンサーを活用したソリューションです。ゲノム情報解析分野では、データビジネスに取り組まれる企業や研究室が多い傾向にありますが、我々が興味のあるのはそこではなく、それを得るためのプラットフォームの確立です。我々は、ポータブルDNAシーケンサーのデファクトスタンダードを作ることを目的とし、専門の企業や大学の研究室と共同研究を行い、独自のアルゴリズムやソフトウェア、製品の開発・提供を行っています。


- 現在、ハードウェアの提供とシステム構築で協業させていただいておりますが、今後弊社に期待することを教えてください。

 御社と一緒に積極的に海外で販売していきたいと考えています。海外においては、ポータブルDNAシーケンサーの異なるニーズがあります。まずは日本でシェアを取ることが目標としてありますが、海外にバッグ一つで出向いて、「この場でゲノム解析をやってみましょう」ということになれば面白いと思うんですよね。
 御社は高性能コンピュータだけではなく、組み込みコンピュータの開発もされていますよね?サーバは大きいイメージがありますが、どんどん小さくしていって、厳しい条件下で動くポータブルサーバが出来れば、色々な可能性が拓けてくると思います。そういったものを一緒に作っていけたらいいなと考えています。


- 大変ありがたいお話です。ぜひ一緒にやりましょう。本日は大変興味深いお話をありがとうございました。


■ 仲木 竜 様のプロフィール

 ご所属:
仲木様  株式会社Rhelixa(レリクサ)
 代表取締役社長
 東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。 計算生物学者。
 次世代シーケンサーより得られた大規模ゲノム・
 エピゲノムデータの専用解析アルゴリズムの開発・応用を専門とする。
 2015年2月に株式会社Rhelixaを設立。  

事業内容:
 1. 次世代シーケンサーを用いた全ゲノム・エピゲノム解析に基づく
   研究開発のサポート
 2. ゲノム・エピゲノムデータ解析の専用プラットフォームの提供
 3. 「ゲノム x ものづくり」構想に基づく新たな研究・製品開発