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東京理科大学
山本 誠

第11回目のインタビューは、東京理科大学 機械工学科 山本研究室の教授である山本 誠先生にお話をお伺いしました。
山本研究室では、流体工学を基礎として、さまざまな機械の流れをコンピュータ・シミュレーションによって解明し、環境に優しく人間生活をより豊かにする機械の開発に指針を与えることを目標として研究を進めています。最近は、様々な物理現象が複雑に相互干渉するマルチフィジックス現象に対するコンピュータ・シミュレーション手法(マルチフィジックスCFD)の研究開発に精力的に取り組み、開発した手法の産業応用を図っています。

本日はよろしくお願いします。- 早速ですが、先生の研究テーマの一つである航空・宇宙分野の研究において、「着氷現象の数値シミュレーション」について、お話いただけますでしょうか?

 雲の中には20ミクロン位の直径の液滴が浮遊しています。飛行機が雲の中を通過する際、その液滴を吸い込むのですが、温度が低いとジェットエンジンの表面(内面)にどんどん凍り付いていきます。当然、ジェットエンジンの空気力学的な性能が落ちるため、飛行が維持できない危ない状況になります。
 そういった状況がどのように起きてくるのか、どういう状況になると危険なのかというのを再現するシミュレーションを行っています。

それは具体的には何か汎用のアプリケーションを使用しているのですか?

 いえ、自作のプログラムを使っています。ジェットエンジンの着氷をシミュレーションできるソフトはありませんので。

企業さんと共同研究されたりするのでしょうか?

 そうですね、IHIさんやJAXAさんと一緒に研究を行ってきました。
 現在進行形のものもあります。

先生の研究室は着氷に関わるような実験も行っているのでしょうか?

 基本的には実験は行っておらず、全て自作のコードを書いて、計算機を使ってのシミュレーションだけを行っています。実験をするには大規模な実験装置が必要ですので、お金がなくて手が出ません(笑)。

こちらの研究はいつごろから行っているのですか?

 2000年あたりから行っていますので、もう10年以上になります。

研究を始められたころの計算機の環境と今ではだいぶ違いますか?

 そうですね、計算を始めた当初は2次元の計算しかできませんでした。2次元のジェットエンジンの羽根を使ってどのように凍り付いていくのかをシミュレーションしていましたが、現在はジェットエンジンの3次元モデルを作って3次元的に氷がどのように着いて行くのかということを計算しています。
 計算機の進歩に助けられて、3次元的に氷が成長して、流れが変わる様子が観察できるようになりました。一番酷い凍り付き方としては、ジェットエンジンが空気を吸い込めないような状況になってしまうことです。
 空気が吸い込めなくなると、推力が出ないため、飛行機が墜落してしまうこともあります。そういうシミュレーションが可能になっています。

着氷している状態を実際ご覧になったたこともあるのでしょうか?

 いえ、ありません。実物は、安全に関わるものなので、企業さんがデータを出すことはないですね。このため、NASA等の実験データを使ってシミュレーションしています。最近は、JAXAさんで開発したエンジンを対象としてのシミュレーションも行っています。JAXAさんは航空部門を持っていまして、調布に航空専門部隊があります。そちらと共同研究しています。

着氷現象の研究をされようと思ったきっかけはどのようなことからでしょうか?

 それは、「日本では誰もやっていなかったから」です(笑)。現在でも、3次元でジェットエンジンの着氷シミュレーションができるのは私の研究室だけです。JAXAさんへも、私の研究室で開発したプログラムを移植中です。
 もともとは1990年代からNASAやONERA等で研究が始まったのですが、飛行機の機体、主翼や胴体に着く氷の研究が主で、ジェットエンジンはやっていませんでした。そこで、ジェットエンジンへ着氷シミュレーションを応用していこうということになりました。
 安全に関わることなので、きちんとシミュレーションして事前に何が起きるか分かっていることはとても重要です。これまでは、最終的に実験で確認作業をするという手段が取られていました。出来上がった製品(ジェットエンジン)をカナダやイギリスに持っていき、寒いところで強制的に凍らせるような状態にし、危険なことが起きないかという検査を行い、安全が確認できれば実際に飛ばす……という規定があります。
 しかし、最終製品が出来上がった段階で実験してみたら危ないジェットエンジンであった場合、設計し直しが必要で、企業としては大損害になってしまいます。そのようなことが起きないように、もっと前の設計段階で評価していこうという流れになっています。

 図1はジェットエンジンの断面図です。ジェットエンジンは、ファン、圧縮機、燃焼器、タービンという機械要素で構成されています。ジェットエンジンが液滴を吸い込んだときに凍り付く部分は、主にジェットエンジンの前の方にあるファンと圧縮機です。その部分だけを取り出してシミュレーションをしています。

着氷すると流れが乱れてしまい、エンジンの性能が出なくなってしまいます。
 図2は羽根の周りの流れの様子ですが、氷が着くことによって剥離が起きていることが分かります。こういった流れの乱れが性能低下につながっていきます。

実際にシミュレーションされてみて分かったことなどはございましたか?

 最初、風力発電用の風車でシミュレーションしてみたところ、羽根の全面にベッタリと着氷しました。しかし、ジェットエンジンの場合は、羽根の根元の部分にたくさん氷が着き、羽根の先端の方には氷が着かないという結果が得られました。
 この違いとその原因(表面の温度が原因なのですが)は、シミュレーションをしてみて初めて分かったことです。

着氷は風の方向に向かって多く付着する傾向にあるのですか?

 そうですね、やはり風に向かって多く付く傾向にあります。企業はなかなかデータを出しませんので、基本的にはNASA等が提供しているデータをもとに研究していますが、天候に合わせたり、空中に浮かんでいる液滴の大きさであったり、湿度であったり(湿度によって液滴の数も変わるため)、さまざまな影響によってどのように着氷の様子が変わってくるのかを調べています。

これまでに着氷が原因で大きな事故が起きた例などはあるのでしょうか?

 はい、あります。過去には、着氷が原因となり、ワシントンDCで大きな墜落事故(死者78名)が起きたことがあります。これは1982年のことです。最近でも、2009年に死者50名の墜落事故が起きています。

着氷が原因で墜落に至るということが分かったのはいつ頃からなのでしょうか?

 それは戦前からです。ゼロ戦でも問題になりまして、北海道の山の上に飛行機を持って行き、吹雪の中でどのように凍り付くのかを実験したりしています。このように、着氷に関しては、だいぶ昔から問題になっています。
 着氷が起きやすい場所としては、0度からマイナス40度までの高度です。熱帯地方でさえ、上空に行くと寒くなりますので、着氷が起きる可能性があります。また、天候にも左右され、湿度の高い時に起きやすい傾向があります。

日本では着氷シミュレーションについて唯一研究されている研究室だとお伺いしましたが、海外にはこのような研究しているところは数多くあるのですか?

 もちろんあります。アメリカのNASAやフランスのONERAなど世界中で研究が行われています。ただし、数はそれほど多くありません。現在でも、年間5件ほどは墜落することがありますので、着氷に関する研究や対策は飛行機やジェットエンジンの開発に不可欠な技術課題となっています。

着氷したものを実際溶かすところまで研究されているのですか?

 飛行機の場合、機体の前方や主翼にはヒーターが入っていて、着氷しても氷を溶かすようになっています。ジェットエンジンの場合は、静止している壁面などにはヒーターを入れることができるのですが、回転翼の部分はヒーターを入れられないので溶かせません。ヒーターが入れられない箇所に関しては、技術が進めば入れられるようになると思いますが、これからの技術課題ですね……。
 また、着氷しても、低空まで下りてくると温度が上がって氷が溶けますので、完全に溶けてしまう分には全然問題ありません。どのくらいの高度でどのくらい分厚い氷が張りついてしまうかが予測できれば、安全か否かの判断ができます。

シルバーの金属のようなものに水を垂らすと氷になるようなものがあるかと思うのですが、着氷というのはそのようなイメージですか?

 そうですね。あれは過冷却状態になっている液体に衝撃を与えると、過冷却が解除されて氷になる現象です。アルコール飲料にもありますね。雲の中に浮かんでいるときの液滴は、マイナス20度位の過冷却状態です。ジェットエンジンの着氷は、この過冷却液滴が羽根や壁などにぶつかることによって凍り始める現象です。いずれも静かにしている状態では凍りません。

ジェットエンジンに関しては着氷だけでなくその他のこともされていらっしゃいますか?

 圧縮機翼におけるサンドエロージョンのシミュレーションも行っています。こちらも現在、JAXAさんと共同研究しています。例えば、春の風物詩である黄砂は10ミクロンくらいの砂の粒子なのですが、ジェットエンジンが黄砂を吸い込み羽根に衝突すると、羽根が300~400メートル毎秒くらいの高速回転をしていますので、羽根の表面が削れてしまう現象が起きます。このような現象のシミュレーションです。
 また、その他には、粒子付着の研究も行っています。火山が噴火すると火山灰の雲ができます。飛行機が火山灰の雲を通過するとき、吸い込んだ灰が燃焼器の高温で溶けてしまうのですが、溶けた灰が燃焼器の後ろにあるタービンの表面にくっついてしまうという現象が起きます。
 これまでは、どの程度の灰が付着すると危なくなるのかという基準がまったくなく、シミュレーションもやっていませんでした。2010年にアイスランドで噴火が起こった時は、ヨーロッパ中で2週間にわたり飛行機の運行が止められましたが、ルフトハンザが試験飛行して、安全の確認ができてから運航再開となりました。このような粒子付着という現象をシミュレーションという形で再現しようと試みています。
 今のところ、着氷により凍り付く現象、砂がぶつかって壁が削れる現象、砂が溶けて付着する現象と……それら3つのテーマに関するシミュレーションを中心に行っています。

先生はこちらの研究をされる前は違う研究テーマをお持ちでしたか?

 もともとは乱流のモデル化の研究をしていました。1990年代です。その後、着氷の研究を始めました。乱流の研究をされている方は、今でも日本には数多くいらっしゃいますね。

商用アプリケーションでは、ANSYSの他には何かお使いになっていますか?

 フリーソフトですがOpenFOAMを最近使い始めました。非常に複雑な形状を計算しなければならないとき、自作のコードでは開発効率が悪いので、こういった汎用ソフトを利用することが多くなっています。

1回の計算にはどのくらいの時間を要しますか?

 3次元計算では2週間ほどかけてシミュレーションするのが普通です。以前の計算機ではそもそも3次元計算はできませんでした。この数年で飛躍的に進化しましたね。これまでできなかったことができるようになったのはとても嬉しいことです。この調子でどんどん計算速度が速くなってくれると助かります(笑)。

計算していて何か困ったことや解決できない問題が起きたことなどはございますか?

 着氷に関しては、実験データがないことですね。最終的に出てきたデータの妥当性を実験で判断できないということです。日本では、きちんとした実験データを取得しているところがないので、ぜひ欲しいデータです。 以前、北海道工業大学と北見工業大学にお願いして実験してもらったことがあります。図3は、実験データの一例とシミュレーション結果を比較したものです。これは20m/sec以下の低速流で羽根に着氷させた結果ですので、ジェットエンジンとは少し異なりますが、3、4分でこのような状態になります。このような状態になると空気を吸い込みにくくなりますので、危険な状態です。こういう実験を様々な条件でたくさん行って、シミュレーション結果の妥当性を検証したいと思っています。

今の計算機を使ってもっと追究してみたい研究はございますか?

 図2のシミュレーション結果では、氷の表面は滑らかな形状になっています。これは、格子を使った計算では、表面が滑らかでないと計算できないからです。しかし、実物は図5のように表面がザラザラしていて決して滑らかではありません。ザラザラの程度によって流れが変わってきてしまうので、これはぜひ再現できたらいいなと思っています。そのために、別の計算方法を考えています。基本的に、格子を使うとザラザラな表面を再現することは無理なので、粒子法という新しい方法を使ってトライしているところです。

もう一つの柱となっているご研究についてご紹介いただけますか?

 脳動脈瘤に関する研究を行っています。この研究では、何を目的にしているかと言いますと、脳動脈瘤の患者さんの手術をするかしないかの判断基準を作ろうとしています。脳動脈瘤の流れの研究ではなく、どのような状態の脳動脈瘤が手術の緊急性を要するものなのか、逆に、経過観察で大丈夫なのかということの診断基準を作ろうという研究です。
 脳動脈瘤は成長して破裂することがあるのですが、破裂すると3割程度の方が脳内出血により死に至ります。ところが、破裂する人は患者さんのうちの3パーセント程度です。ほとんどの患者さんは経過観察でいいというわけです。

 ですが、放っておくと破裂するかもしれない状況というのは、患者さんにとっては不安だと思います。一方で、それとは反対に、手術を受けた患者さんの3パーセントに後遺症が残るといわれています。放っておいても3パーセントが破裂し、手術しても3パーセントに後遺症が残るような状況に対してどうしたらよいのかというのは、お医者さんも悩む、患者さんも困る……ということから、その基準を科学的に明らかにできれば……ということで、血の流れのシミュレーションを行い、この形状の脳動脈瘤であればこの患者さんはしばらく経過観察でも大丈夫、この患者さんは緊急手術が必要という判断をお医者さんができるようなシミュレーションベースの診断ツールを作ろうということで始めた研究です。

脳動脈瘤はいつ頃からご研究されているのですか?

 4~5年前からです。脳動脈瘤のシミュレーション研究自体は昔から行われていて、20年以上前からやられていたと思います。ですので、脳動脈瘤の中で血がどのように流れるのか、どういう力が働いているのか、というのはすでに大体分かっています。
 お医者さんと仕事で関わると、私のような流体を専門にした人間の考え方とは全く違う考え方をしていることに驚きます。基本的に、お医者さんは血の流れがどうなっているのかにはほとんど興味がありません。それよりは、脳動脈瘤が破裂するのかしないのか……ということが一番重要という考え方をしています。
 図4は脳動脈瘤のシミュレーション結果の一例です。上段が流線、下段が圧力、左側が動脈瘤が成長する前、右側が成長後の様子です。このようなシミュレーションをたくさん行って、いろいろなパラメータをチェックすれば、その脳動脈瘤が比較的安全か否かの判断が科学的にできるようになると期待しています。個人差もありますのでなかなか難しいのですが……。
 この研究はまだこの先も続きますが、最近、頸動脈がつまる病気に関する研究も始めました。その研究でも、お医者さんが必要とする何らかの診断基準が提案できれば良いかなと思っています。

工学系の先生でも医療に携わるのですね

  流れているものなら大抵のものはシミュレーションできますからね(笑)。
 図5は、脳動脈瘤をシミュレーションするときの作業の流れを表しています。
 患者さんのデータをMRIやCTなどから得られる断層写真から三次元の形状を抽出してきて、格子を張り、血管の中の流れをANSYS CFX(商用の汎用ソフト)を使って計算し、可視化するという流れになっています。この流れは、工業分野のものとまったく同じです。

共同研究は同時にいくつかされたりするのでしょうか?

 はい、同時にいくつも行っています。IHIさんとJAXAさんが多いのですが、毎年5件程度の共同研究を行っています。27、8名の学生がいる大きな研究室ですので、研究テーマごとにグループ分けして分担して研究を行っています。

具体的に実用化(製品化)されたものはございますか?

 シミュレーションなので基本的にはプログラムの開発が目的です。製品を作るということはありませんが、シミュレーションした結果をもとに製品になるということはあります。以前、横浜ゴムさんと共同研究したことがありまして、エコタイヤという空気抵抗の少ないタイヤを開発するために、タイヤのシミュレーションをしました。その結果、ブルーアースという製品の発売につながりました。タイヤの側面にゴルフボールのようなでこぼこのディンプルを付けたタイヤで、そうすると抵抗が減るんです。シミュレーションして減るという ことが確認できたので、製品化に至ったようです。製品カタログにシミュレーションの結果が記載されています。
 共同研究のきっかけは、知り合い繋がりであったり、学会で知り合ったりして話が始まります。それ以外には、大学の窓口(URA)を通じて話が持ち込まれてきますので、それを引き受けたりします。

 

共同研究はどのくらいの時間を要するのでしょうか?

 1つのテーマで長いもので5年位かかるものもあります。短いものは1年位ですね。一番多い期間は2~3年位だと思います。
 学生が一つの研究テーマに携わった場合、卒業までに最低1つのテーマで結果を出すという感じです。企業と共同研究した方が学生にとっては良いことがあります。企業さんは進捗管理が非常にしっかりしていますので、成果がきちんと積み上がっていきますからね。
 また、共同研究をきっかけにその企業に就職する学生もいます。実際、学生と企業の双方にとって入社前に人物や仕事を判断できるというのは良いことだと思います。

先生がシミュレーションする上で必要な知識や経験はどのようなことでしょうか?

 流れのシミュレーションはソフトウェアに依存するわけではなく、いろいろな要素があります。良い答えにたどり着くまでにはそれなりのノウハウが必要です。ソフトウェアがあるからといって、正しい答えが出るようなものではないのです。材料力学や機械力学系のシミュレーションは割と誰がやっても良い答えを出すことが可能なレベルに達していますが、流体のシミュレーションはそういったレベルには未だ達していません。良い答えを出すためのノウハウを蓄積することが重要ですね。

シミュレーションにおいて、うまくいかない時もあるかと思いますが、どのように対処するのでしょうか?

 まずは文献をきちんと調査し直し、他の研究者がどのような方法を使って解決しているかを再検討します。また、学生にプログラムを自作させていますので、バグ取りや改良などの直しを入れてもらうことを繰り返します。同じ現象が起きていて形状が単純なケースで検証を行うこともあります。試行錯誤の連続ですね。そういう意味では、製品開発の工程と同じだと思います。

計算が100%ということですが、計算機を頻繁にお使いになるかと思いますが、計算機ベンダーに対してご要望などはございますか?

 最近の計算機は非常に優れていて、めったに故障しませんし使いやすくなっていますので、特にこれといった要望はないです(笑)。計算速度も年々速くなっていますよね。
 大規模な計算は、東大の計算機センターを利用するように大学から言われていますが、私の研究室では基本的にデスクトップのワークステーションで3次元計算が問題なくできています。大規模な計算はやり始めるときりがないということもありますので、本質はあまり変わりませんから、あえて大きい計算はしなくてもいいかな、とも思っています。
 昔はワークステーションで3次元計算しようと思ったら3ヶ月も4ヶ月かかってしまうこともありましたが、今は本当に速くなりましたからね。

サポートをご利用になったことはございますか?

 3年位するとコンピューターも壊れ始めますが、その頃には性能が良いものが出ていることが多いので、サポートを利用せずに買い替えてしまうことが多いですね(笑)。

HPを拝見しますと、合宿など積極的にイベントを行っていらっしゃいますね。学生さんの教育面などで心がけていらっしゃることはございますか?

 そうですね(笑)。毎年恒例で、新入生歓迎会や夏合宿、卒論や修論後のスキー合宿などの大型イベントをやっています。学生の協調性を涵養するには、そういったイベントが必要だと思っています。
 また、教育に関しては、「無理はさせないこと」をモットーにしています。学生の資質を判断して、プログラミングが好きな学生もいれば、コードを使って結果を吟味することが好きな学生もいます。趣向や得意分野がそれぞれ違いますので、出来る限りそれらを見極め、テーマを与えるようにしています。
 計算方法が違ったり、計算時間が違ったり、テーマによってやることも変わりますのでいくつかのグループに分かれて研究させていますが、学生個々人の「向いているものを見極める」ということは結構難しいですね(笑)。

計算機(ワークステーション)の環境はいかがでしょうか?(皆さんで数台を共有していますか?)

 1人1台はあります。小さな計算であれば手元のデスクトップPCも使用するような環境にしています。今は計算機が安価になり助かっていますが、それによって電力が足りなくなってきたり、空調を気にしないといけないという問題はありますね(笑)。
 それでも、昔と比べると消費電力も下がっていますし、とにかく静かになりました。昔は研究室とは別室にコンピューターの部屋がないと音がうるさくて仕事にならなかったのですが、今は同室に置いても全く問題ない状況です。

HPで工学系女子を応援する活動を拝見しました。それはどのようなものでしょうか?

 工学系女子は機械系と電気系が特に少なく、全国的にも女子学生の比率は5%程度になっています。そこで、「.cpeg (ドットシーペグ)」という、女子学生だけのプロジェクトチームを作って広報活動を行っています。
 オープンキャンパスの際にイベントを行ったり、地域の小中学校のイベントに参加して工学系の女子学生がこのようなことをやっていますということを宣伝しています。高校の先生で工学系出身の先生はほとんどいませんので、工学部のことはあまり知らないと思います。
 工学部はこのようなことをしているという話をすると、女子高校生がとても興味を持ってくれます。この活動を始めてから4~5年経ちますが、女子学生の入学希望者がどんどん増加しています。今年が今までで最高で、機械工学科には16人が入学しました(100人中)。世間の5%から比べるとはるかに多く受け入れることができています。ただし、目標はさらに高く持っていまして、30%程度まで伸びるといいなと思っているのですが、なかなか難しそうです(笑)。
 理系女子というとどうしても白衣の化学系や薬学系のイメージがありますが、就職においてはメーカーさんの設計開発や研究などで工学系出身の女子学生を多く募集しており、とても有利ですので、女子学生には工学にもぜひ興味を持っていただき、どんどん進出していただきたいと思います。

最後に山本先生より

 HPCシステムズさんからご提案頂く共同研究があっても良いかと思いますがいかがでしょう?このようなソフトを試してほしいですとか、並列の効率化を調べてほしいですとか、何かこちらでできることがあればぜひご一緒にやれたらと思います。

山本先生、大変面白いお話、ありがとうございました。

山本 誠先生のプロフィール

  • 研究室HP:東京理科大学 工学部 機械工学科 山本数値流体研究室
  • 研究テーマ:
    ✓ジェットエンジンにおける着氷現象の数値シミュレーション
    ✓ジェットエンジンにおけるサンドエロージョン現象の数値予測
    ✓ジェットエンジンにおける粒子付着現象の数値シミュレーション
    ✓脳動脈瘤の成長・破裂に関する数値シミュレーション
    ✓粒子法による3相流の数値計算方法に関する研究
  • 山本研究室では、流体工学を基礎として、さまざまな機械の流れをコンピュータ・シミュレーションによって解明し、環境に優しく人間生活をより豊かにする機械の開発に指針を与えることを目標として研究を進めています。最近は、様々な物理現象が複雑に相互干渉するマルチフィジックス現象に対するコンピュータ・シミュレーション手法(マルチフィジックスCFD)の研究開発に精力的に取り組み、開発した手法の産業応用を図っています。
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