ほとんどの方法では,基底関数系の指定が必須です。ルートセクションに基底関数系キーワードを指定しなかった場合には, STO-3G 基底が用いられます。ただし,このルールから除外される方法もいくつかあり,それらでは基底系は方法の積分パートとして定義されます。これらの方法には:
以下に示す基底関数系が Gaussian 03 プログラム内で用意されており(完全な説明については引用文献を参照してください),対応するGaussian 03キーワード(2つ例外あり)として列記します。
6-311G: このキーワードを指定すると,第一,二周期の原子には 6-311G基底を,第三周期の原子にはMcLean-Chandler (12s,9p) (621111,52111)基底系(ただし, P, S, Cl に対する基底系は,彼らが言うところの「陰イオン(negative ion)」基底となっています。これらは中性原子でも十分によい結果を与えると思われています),CaとKに対してはBlaudeauらの基底系を,第一遷移元素にはWachters-Hay[330,331]のall electron basis setをRaghavachariとTrucksのスケール因子[332]を用い,第四周期の他の元素に対してはMcGrath, Curtissらの6-311G基底[324,333,334]を用います。
D95V: Dunning/Huzinaga 原子価 double-zeta [335].
D95: Dunning/Huzinaga 完全 double zeta [335]
SHC: 第一,二周期にはD95Vを, 第三周期にはGoddard/Smedley ECP [335,336]を用います。SECとしても知られています。
CEP-121G: Stevens/Basch/Krauss ECP 3分割(triple-split) 基底 [337,338,339].
第三周期より上のCEP基底系は一種類しかなく,つまりこれらの原子では三つのキーワードは全て等価であることに注意してください。
LanL2MB: STO-3G [309,310]を, Na-BiにはLos Alamos ECP plus MBS [340,341,342]を用います。
LanL2DZ: 第一,二周期にはD95V[335]を,Na-BiにはLos Alamos ECP plus DZ[340,341,342]を用います。
SDD: ArまではD95V[335]を,周期表の残りの元素にはStuttgart/Dresden ECP[343,344,345,346,347,348,349,350,351,352,353,354,355,356,357,358,359,360,361,362,363,364,365,366,367]を用います。SDD, SHF, SDF, MHF, MDF, MWB 形式を用いると,Gen基底インプット内でこれらの基底系・ポテンシャルを指定できます。この形式の後に内殻電子の数を指定しなければなりません(たとえば,MDF28とすると28内殻電子を置き換えたMDFポテンシャルとなります)。
SDDAll: Z > 2に対してStuttgartのポテンシャルを用います。
cc-pVDZ, cc-pVTZ, cc-pVQZ, cc-pV5Z, cc-pV6Z: Dunningのcorrelation consistent basis set[368,369,370,371,372] (それぞれdouble, triple, quadruple, quintuple, sextuple-zeta)を用います。これらの基底系では,計算効率を上げるために冗長な関数を取り除き,回転[373] してあります。
これらの基底関数系には定義上分極関数が含まれています。以下の表にこれらの基底系での各原子に対する原子価分極関数を示します
| Atoms | cc-pVDZ | cc-pVTZ | cc-pVQZ | cc-pV5Z | cc-pV6Z |
| H | 2s,1p | 3s,2p,1d | 4s,3p,2d,1f | 5s,4p,3d,2f,1g | 6s,5p,4d,3f,2g,1h |
| He | 2s,1p | 3s,2p,1d | 4s,3p,2d,1f | 5s,4p,3d,2f,1g | 利用不可 |
| B-Ne | 3s,2p,1d | 4s,3p,2d,1f | 5s,4p,3d,2f,1g | 6s,5p,4d,3f,2g,1h | 7s,6p,5d,4f,3g,2h,1i |
| Al-Ar | 4s,3p,1d | 5s,4p,2d,1f | 6s,5p,3d,2f,1g | 7s,6p,4d,3f,2g,1h | 利用不可 |
| Ga-Kr | 5s,4p,1d | 6s,5p,3d,1f | 利用不可 | 利用不可 | 利用不可 |
1つの第一分極関数を指定するには,通常*または**表記を用います。 (d,p)と**は同義であること—たとえば,6-31G**は6-31G(d,p)と同じ— や3-21G*は第3周期の原子にしか分極関数がないことに注意してください。+および++分散(diffuse)関数[389]もいくつかの基底系で利用可能であり,また複数の分極関数も利用可能です[390]。このキーワード文法を例を用いて説明すると,6-31+G(3df,2p)では, 6-31G基底系に分散(diffuse)関数を追加し,重原子に対してはd関数を3つ,f関数を1つ追加し,水素に対してはp関数を2つ追加することになります。
cc-pV*Z基底系に分散(diffuse)関数を追加するためにAUG-接頭語が用いられた場合,与えられた原子に対して関数タイプごとに1つの分散(diffuse)関数を追加します[368,369]。たとえば,AUG-cc-pVTZ基底には,水素原子には1s,1p,1d分散(diffuse)関数を,BからNeおよびAlからArでは1s,1p,1d,1f分散(diffuse)関数があります。
6-311Gに1つの分極関数を追加(つまり, 6-311G(d))すると,第一,二,三周期の元素には1つのd関数が追加され,第一遷移元素には1つのf関数が追加されます(これらにはすでに原子価電子としてd関数が存在するため)。同様に,6-311G基底系に分散関数を追加すると,第四周期の元素には1s, 1p, 1d分散関数が追加されます。
内殻固定(frozen-core)計算をD95基底を用いて行う場合,占有内殻軌道とそれに対応する仮想軌道が両方とも固定されます。したがって,水分子のD95**計算では26個の基底関数が,同じ系の6-31G** 計算では25個の基底関数が用いられますが,それらの内殻固定post-SCF計算で用いられる軌道はどちらの基底系でも24個となります。
以下の表にGaussian 03に組み込みの基底関数系ごとに,利用できる分極および分散(diffuse)関数と適用範囲を示します。
| 基底関数系 | 適用範囲 | 分極関数 | 分散(diffuse)関数 |
| STO-3G | H-Xe | * | |
| 3-21G | H-Xe | * または ** | + |
| 6-21G | H-Cl | (d) | |
| 4-31G | H-Ne | (d) または (d,p) | |
| 6-31G | H-Kr | (3df,3pd) | ++ |
| 6-311G | H-Kr | (3df,3pd) | ++ |
| D95 | H-Cl (NaとMgを除く) | (3df,3pd) | ++ |
| D95V | H-Ne | (d) or (d,p) | ++ |
| SHC | H-Cl | * | |
| CEP-4G | H-Rn | * (Li-Ar only) * (Li-Ar のみ) |
|
| CEP-31G | H-Rn | * (Li-Ar only) * (Li-Ar のみ) |
|
| CEP-121G | H-Rn | * (Li-Ar only) * (Li-Ar のみ) |
|
| LanL2MB | H-Ba, La-Bi | ||
| LanL2DZ | H, Li-Ba, La-Bi | ||
| SDD, SDDAll | FrとRaを除く全原子 | ||
| cc-pV(DTQ5)Z | H-He, B-Ne, Al-Ar, Ga-Kr | 定義に含まれる | AUG-接頭語を付ける |
| cc-pV6Z | H, B-Ne | 定義に含まれる | AUG-接頭語を付ける |
| SV | H-Kr | ||
| SVP | H-Kr | 定義に含まれる | |
| TZV および TZVP | H-Kr | 定義に含まれる | |
| MidiX | H, C-F, S-Cl, I, Br | 定義に含まれる | |
| EPR-II, EPR-III | H, B, C, N, O, F | 定義に含まれる | |
| UGBS | H-Lr | UGBS(1,2,3)P | |
| MTSmall | H-Ar | ||
| DGDZVP | H-Xe | ||
| DGDZVP2 | H-F, Al-Ar, Sc-Zn | ||
| DGTZVP | H, C-F, Al-Ar |
以下のオプションキーワードは 基底関数系キーワードと併せて用います。
その他の基底関数もExtraBasisやGenキーワードを用いて入力することができます。ChkBasisキーワードを指定すると,(%Chkコマンドで指定した)チェックポイントファイルから基底関数系を読み込みます。これらキーワードの個々の詳細については,この章の後ほどを参照してください。
Gaussianを用いる際には,純粋およびカーティシャン基底関数に関する以下のポイントに注意しなければなりません。
Gaussian 03では純粋DFT計算に対して密度フィッティング近似を用いることができます[35,36,392]。この手法はクーロン相互作用を計算する際,2電子積分を全て計算するのではなく,原子中心(atom-centered)関数のセットで密度を展開するものです。この手法を用いれば,線形スケーリングアルゴリズムで有利になるほど大きくはないような中規模系の純粋DFT計算で,予測構造や相対エネルギー,分子プロパティなどの精度を落とさずにパフォーマンスの向上を図ることができます。Gaussian 03では自動的にAO基底から適切なフィッティング基底を生成できますが,組み込みフィッティング基底を自分で選択することもできます。
フィッティング基底系を指定するには,次の例のようにモデル化学の3番目の要素として指定します:
# BLYP/6-31G(d)/Auto
密度フィッティング基底系を指定する際にはスラッシュで区切ります。
GaussianではDGA1とDGA2フィッティング基底系[387,388]が利用可能です。DGA1はHからXeまで,DGA2はH, HeとBからNeまで対応しています。
さらに,密度フィッティング基底はAO原始基底から自動的に,AutoやAuto=All, Auto=N を用いて生成することができます。ここでNはフィッティング関数で維持する最大角運動量です。デフォルトはMax(MaxTyp+1,2*MaxVal)で,ここでMaxTypはAO基底の最高角運動量,MaxValは最高価電子角運動量です。PAutoにすると,AO原始関数の2乗の代わりに1中心AO関数の積を生成しますが,これは一般に必要より関数が多くなります。
デフォルトでは,フィッティング基底は用いません。密度フィッティング基底系はExtraDensityBasisキーワードで増やすことや,Genキーワードで全て定義すること,チェックポイントファイルから取り出す(ChkBasisを用います)ことも可能です。
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